なまずんです。
薬学部を卒業したので,私の知人には資格を武器に働く人が多いです。この人たちは私でも驚くほど軽々と前職を辞め,転職していきます。つい一昨日も薬学部時代の仲の良い友人と話をしていて,「私,来月から転職!」という話題が出てきました。
国家資格を始めとする専門職は誰でもできる仕事ではなく,需要さえあれば働き口に困ることは少ないです。特に医療系国家資格は人手不足のため,職種を問わず就職難とは程遠い環境です。
医療系国家資格は転職で無敵
医療系国家資格の魅力は現場の最前線で患者さん一人ひとりの健康を支えられることです。お金の面からみた特徴は景気の変動を受けにくいことで,需要も当面は減る可能性が低いです。資格の取得には専門課程を経て国家試験に合格する必要があるため,供給過剰になることも考えにくい仕事です。
ある程度の人数が住んでいる地であれば需要があり,労働場所も全国津々浦々に存在します。保険診療は公定価格なので勤め先によって給与水準が違いすぎることもありません。
臨床のスキルは一度身につければポータビリティに優れ,他の現場でも柔軟に働くことができる面もあります。
私の周りでは新卒3年で2~3割が転職
『就職四季報』を出版する東洋経済新報社によれば,大卒で就職した人が3年以内に離職する割合はおよそ3割だそうです(出典)。
この数字は私の周りの医療職,特に薬剤師が多いのですが,だいたい同じようなものです。3年経てば2~3割はやめています。
資格を使う病院・薬局を辞めて別の病院・薬局に務める人だけでなく,資格を持ったまま一般企業に入り,その後薬剤師に転職する人もいました。
理由はスキルアップやキャリアアップ,待遇の改善,臨床への転向という前向きなものから,人間関係の悪化や仕事のイメージ違い,事業の失敗など多様です。
資格を「保険」のように使う人たち
医療系国家資格そのものを使って仕事をする人たちの転職はさておき,資格を持ったまま違う道へ進んだ人に聞いても,資格への信頼感は大きなものです(私もその一人)。
就職先選びも,「合わなかったときは資格を使って働けるから,知らない分野に挑戦してみよう」という発想の人が多いです。中には起業したり,ミュージシャンとして夢をめざしている人も。
こういった人たちにとって,医療系国家資格は給与水準が職種によってある程度明確で,いざ転職しようと思ったときに苦労が少ない点は大きな利点です。
成果を残した医学研究者からも,「好きな研究に打ち込めたのは医師免許を持っていたから。全く成果が出ないような事態になっても臨床で働けばよいため,他の研究者より自由に研究できた」という話を聞きました。
国家資格を使わずに就職した人は「資格をむだにした」と自己表現することもありますが,一方では仕事が自分に合わなかったり,業績が思わしくなくて失職したりした場合の「保険」の役割としては使っています。
ご飯を食べるために望まない仕事を続けたり,頑張っても仕事に就けなくなったりといった最悪の事態を回避できるためです。
野球に例えれば,資格を持つことは「先発もできる中継ぎエース」を控えているようなものです。中継ぎエースがいることで先発投手は安心して初回から全力投球でき,調子が悪ければ交代して,試合を立て直すロングリリーフに登板させることができます。
医療系国家資格は特にこの点に強みがありますが,他の資格(国家資格,民間資格とも)や大学・大学院進学なども同様です。その分野に興味・関心があれば,資格や学位を取ってみると人生のオプションを持つことができます。
ただし,使わなければ資格や学位の価値は漸減する
医療系国家資格は更新制ではないので,一度合格すれば,原則は存命中にわたって資格を使った業務が可能です。
しかし,臨床のための資格である医療系国家資格を「保険」のように使うことは年々難しくなってしまいます。資格に裏付けされる知識・技術がだんだん古くなり,徐々に忘れていくためです。採用場面で,20~30年前の試験に合格した中高年は,最新の知識と将来の可能性を持つ新卒者に勝てるわけがありません。これは大学・大学院で得た学位でも同じですね。
『金持ち父さん貧乏父さん』を執筆したロバート・キヨサキの定義(「お金を自分にもたらすもの」=資産,「お金を自分から奪っていくもの」=負債)で考えれば,医療系国家資格は徐々に価値を失う資産です。継続的に実力を磨いていなければ,いざ,現在の職を失ったときに資格や学位は何の役にも立たない確率は上がっていくのです。
紹介での転職が多いため人脈を保ったり,少しでも知識をキープできるように業界情報誌には目を通したりといった努力はするものの,経験を積んでいる臨床家に比べたら全く及びません。おそらく,私も40歳ごろには薬剤師免許だけで転職するのはほぼ不可能でしょう。
就業中に実績を作り,お金を生む資産を買う
企業の寿命が短縮する一方で,長寿化で労働期間は長期化する傾向にあります。望む・望まないにかかわらず転職の可能性は誰にでもある時代となりました。
一度取得した資格や学位をメンテナンスせずに数十年寝かせておくことは不可能です。そこで私が提案したいことは,今の仕事を続ける中で,転職時に説明しやすい実績を作ることです。組織を動かした実績,計画を成功に導いた経験,自分が開発した製品,達成した売上実績など,ヘッドハンティングを狙うわけでなければ,小さなことの積み重ねで構いません。
個人的には並行して余剰資金でお金を生む資産を買うことも心掛けています。お金を生む資産とは,株,債券,不動産などです。資格は寝かせておくと価値を失っていきますが,これらの資産は基本的にはお金を生んでくれます。投資信託を通じて保有しています。
資産を持っていても転職に直接役立つわけではありませんが,自分の労働以外でお金を生む仕組みを持つことは心の安定につながります。
全体として,今は資格や学位が担っている失職リスクへの「保険」の役割を,実績やお金を生む資産に移していくようなイメージです。
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私も将来的にはどうなるかわからない業界にいるので,転職無双できるうちに転職するのも良いのかな,なんて思いながら……。
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