2019年8月に米国へ旅行してきました。経由地の一つ,ロサンゼルスには2泊3日間滞在しました。その交通事情には日本と似ているところもありましたが,日本とかなり異なる新しい仕組みが根付いていることに驚いたので記事にしました。
新しいサービスに寛容で,新しいビジネスの浸透を感じさせる場面が多かったです。
ロサンゼルスは北米第二の大都市
本記事が取り上げるロサンゼルス市は,米国西部のカリフォルニア州における最大の都市です。周辺都市を含めたロサンゼルス広域都市圏は面積1万2500平方km,人口1300万人。ニューヨークに続く北米第二の規模を持ちます。面積・人口は日本の京阪神大都市圏とほぼ同程度と言えます。
空の玄関口であるロサンゼルス国際空港は中心部から約20km離れた場所にあり,直行バスで1時間ほどかかります。今回はダウンタウンからみて西側に位置するコリアタウン,ハリウッド,グリフィス天文台,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を訪ねてきました。
空港からの移動はUber・Lyftばかり
空港から各方面への移動手段は,概ね日本の空港と似ています。公共交通機関には,空港と主要地を定期運行する「Flyaway」というバスと,地下鉄があります(地下鉄は治安が悪い上にバスより遠回りになるため,あまりオススメできません)。
他に,ホテル等まで乗り合いで送迎してくれる「SuperShuttle」というサービスもあります。これは日本では少ないと思いますが,海外の主要都市では普通に存在します。
大きく異なる点としては,タクシーよりもUberやLyftといった一般人による配車サービスがかなり浸透していたところです。空港にもホテルにもUberとLyftの送迎スペースが確保されており,車がひっきりなしに入構していました。
2009年に米国でサービスを開始したUberはロサンゼルスではもはや不可欠な交通手段でした。
バス移動はGoogleマップが超優秀
地下鉄が物騒かつ貧弱な反面,ロサンゼルスはどの通りにもバスがきめ細かく走っているのが特徴です。特に,市内に広く路線を持つメトロバスはとても便利です。運賃は定額(一回1.75ドル,一日券7ドル等あり)でICカードか現金の前払式。安価でありながら,車内外はかなりきれいです。
バスそのものについては,降車の際はボタンではなくひもを引いて合図するなど若干の違いがありましたが,日本のバスとほぼ同じ感覚で乗れます。運行系統はかなり複雑ですが,日本の都市部のバスと同じか,それ以上に便利に使えます。Googleマップを使えばよいのです。
日本より進んでいると感じたのは,メトロバスにはGPSが搭載され,Googleマップでバスの居場所がわかることです。市内は交通量が多く,バスの遅延・早着も多いので,バスの現在地や遅れの状況がリアルタイムにわかる仕組みには感動しました。
乗車時は「20」「720」など系統番号を見ればよく,バス停やバスに系統番号が表示されているので乗り間違えることもありません。どのように調べているかわかりませんが,乗車率などもわかります。
とても遅れています。
なお,市内は広いため,停留所が少ない急行バスでの移動が便利です。これもGoogleマップが適切に案内してくれます。もはや,バスというよりGoogleが便利。私たちが知りたかったのはバスの乗り換え経路だけでなく,バスの運行状況であることをよくわかっています。
急行バスは普通のバスより巨大です。なお,バスの前面に取り付けられている器具は自転車を積むためのもの。
なお,Googleマップはメトロバス以外のバスにも対応していますが,リアルタイムに現在地が表示されません。私も旅行中に,バスが遅延し,20分ほど待っても現れないという事態に巻き込まれました。バスの現在地がわかる仕組みの有無でかなり使い勝手は異なります。
電動キックボードが爆走
これは日本と圧倒的に異なる点でした。ロサンゼルスの各所に,電動キックボードや電動自転車が大量に放置されていました。
これらは2017年の後半ごろから始まったシェアサービスだそうです。BIRDやLime,Lyft Scooters,Jump,Spinといった企業が参入し,街中は電動キックボードだらけになっていました。
あらかじめ決済方法と個人情報を登録すれば,近くのキックボードをスマホで検索し,1ドルから乗ることができるそうです。電動キックボードや自転車にはGPSが搭載され,利用者は近くのキックボードに乗り,好きなところで乗り捨てます。交通渋滞とも無縁な点が受け入れられているようで,近距離なら車やバスより早いです。
Googleマップではキックボードも検索できました。
結果として街から姿を消したのはタクシー。3日間の滞在中,バスの中や道端から見る限りでは,タクシーを見かけたことは数回です。一度,ホテルからタクシーに乗ろうと呼んでもらいましたが,20分以上待っても現れないという有様でした。
近距離に移動するならBIRDやLimeなどの電動キックボード,荷物があればUberやLyftの配車サービスを使えばよいので,タクシーの需要は激減したのだと思います。
世界の大都市は交通渋滞に悩む場所ばかりです。通信インフラが十分にあり,キックボードを壊されない程度に治安が良ければ,地下鉄建設などに比べて初期投資が圧倒的に少ないため他の街でも普及するかもしれません。
新しい仕組みに寛容な米国
配車サービスと電動キックボードは利用してみたかったのですが,事前登録が必要であり,今回は短期間の滞在のため利用しませんでした。もちろん,放置キックボードが景観に及ぼす影響やキックボードによる事故といった危険など,弊害も少なくはないようですが,新しいサービスは便利そうで,利用者の満足度は総じて高そうです。
交通に大きな変革が及んでいるように,米国では多くの企業が新しいサービスを開発し,政府・市民も日本に比べて新しい仕組みを取り入れることに寛容です。生活を変え得るサービスを開発する企業を支援する体制がある米国の状況を目の当たりにし,新しいビジネスが誕生する可能性が高く,これからも世界を引っ張る国であり続けるのではないかと肌で感じました。
今の日本の法制度では難しいサービスもありますが,Uberなどはすでに米国外でもかなり普及しています。投資対象としてはもちろん,もしかしたら日本の未来の風景が変わるのではないかと関心を持っています。
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