なまずんです。
業界最低水準をめざすことで定評のあるファンドが信託報酬を引き下げました。
2019年5月22日,投資信託シリーズ「eMAXIS Slim」を運営する三菱UFJ国際投信が,「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の信託報酬を引き下げると発表しました。
すでに何人もの投信ブロガーのみなさんが題材にしていますが,楽天VTIの運用コストの低下に対抗した信託報酬の改定です。
6月14日から信託報酬を引き下げ
ニュースの概要をまとめます。
信託報酬率は0.01%(税抜)低下
現在,税抜で年率0.160%の信託報酬率を0.150%に引き下げます。0.01%の引き下げられました。ファンドの純資産総額に応じた信託報酬率の変化は次の表のとおりです(プレスリリースより)。
執筆時点での純資産総額は約180億円ですので,信託報酬率は最上段の0.150%が適用されます。
2019年6月14日から新しい信託報酬率となります。
引き金となった「バンガード・エフェクト」
「eMAXIS Slim」は低コストな投資信託を提供することを理念とするファンドシリーズです。
これまで他社の類似ファンドが信託報酬を引き下げるたびに,その数字にピッタリと追い付く信託報酬率改定を行ってきました。
先述のように,今回の信託報酬改定のきっかけとなったファンドは「楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)」です。原資産のVTIは米国バンガードのETFで,4月末にVTIが経費率を改定し,投資家が実質的に負担する運用コストが0.01%軽くなったところでした。
◆詳しくはこちらの記事
楽天VTIのベンチマークはCRSP US Total Market Indexであり,eMAXIS Slim米国株式(S&P500)と全く同じ投資対象ではありません。それでも,同じ米国株式クラスということで今回の改定に至ったのでしょう。
一連の流れをたどれば,▼バンガードがVTIの経費率を0.01%引き下げ,▼VTIを組み入れる楽天VTIの運用コストが0.01%下がり(税抜0.160%→0.150%),▼eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の運用コストも下がった(税抜0.160%→0.150%)ということになります。
この流れについて,投信ブロガーの水瀬ケンイチさんは「まさかの日本で,本家米国バンガードの『バンガード・エフェクト』が発現」と言及しています(以下の記事より,太字は筆者)。
水瀬さんによれば,「バンガードの低コストファンドにより,競合他社がコストを引き下げ,業界の平均手数料が下がり始める効果のこと」(同記事)。
私も前掲の楽天VTIの記事で,「日本の投信情勢と利害のほとんどない米国の巨大運用会社が今回のコスト引き下げに影響を及ぼしました」と書きましたが,日本の運用会社よりも顧客目線の徹底した米国バンガードの動きにより,結果的に日本の投資信託の競争を促した形になりました。
業界を先導する運用コストの引き下げに期待
今回の引き下げで,「eMAXIS Slim」シリーズが低コストを売りにするブランドであり,他社ファンドの動向に徹底対抗していくことをあらためて示すこととなりました。
毎回,他社ファンドに徹底して対抗する三菱UFJ国際投信の姿勢には好感を持っています。投資信託の低コスト化は投資家にとって,間違いなくよいニュースだからです。
その中にあって,業界でも人気の高いeMAXIS Slimシリーズにあと一歩欲を言えば,他社に追随するスタイルだけでなく,業界を先導する形で運用コストの引き下げをはかっていただきたいなと思います。
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