2020年2月25日,運用会社の野村アセットマネジメントから,画期的なインデックスファンドが新規設定されるとのお知らせがありました。2030年12月31日まで,信託報酬率0%期間を設けた新商品です。
その名も,「野村スリーゼロ先進国株式投信」。信託報酬の低廉化が進んできたなかでも,信託報酬が無料とは驚きです!
本記事では,ファンドの概要と,投資家にとっての有用性をかんたんに考察しました。
「野村スリーゼロ先進国株式投信」の概要
このファンドの売りはなんといっても,2030年12月31日まで信託報酬がゼロであることです。
プレスリリースによれば,「スリーゼロ」とは,通常の投資信託でかかる3つの信託報酬(委託会社<運用会社>への信託報酬,販売会社への信託報酬,受託会社への信託報酬)のすべてが0%であることを表しています。
購入手数料・信託財産留保額もゼロですね。
信託報酬は2030年末まで0%→その後0.10%(税抜)以内
前述したように,信託報酬は2030年12月31日まで0%で,2031年1月1日以降は税抜0.10%以内とする見込みです。当然ながら,発表時点で業界最低の信託報酬率です。2031年以降の信託報酬は,その時点での他社類似ファンドの信託報酬率を見て決定するとされています。
これにより,2030年末までの運用にかかるコストは,売買委託手数料,保管費用,監査費用,ファンドに関する課税などごくわずかとなり,野村アセットマネジメントなどの取り分はありません。
ベンチマークはMSCI kokusai index
米国MSCI社が提供する株式インデックス「MSCI Kokusai Index(MSCIコクサイインデックス)(円換算ベース)」に連動する投資成果をめざします。MSCIコクサイインデックスは先進国24か国を対象とし,各国における株式市場の時価総額の90~95%をカバーする指数です。
運用にあたっては,Funds-iなどと共通のマザーファンドを使うことになるでしょう。野村アセットマネジメントの先進国株式マザーファンドは業界最大規模です。この点は安心できる材料ですね。
◆インデックスファンドの比較記事ではマザーファンドの資産規模も比較しています。
運用開始日
2020年3月16日
取扱販売会社は野村證券のみ
取り扱い販売会社は野村證券オンラインサービスのみとの発表です。プレスリリースでは,つみたてNISA専用のインデックスファンドとされていますので,その他の口座では購入できないものと思われます。
「信託報酬率0%」がつみたてNISAでの運用に与える影響
さて,この「スリーゼロ」ファンドですが,気になる点は信託報酬が0%の期間が2030年末までというところです。
運用コストは低いほうがよいので,「信託報酬率0%」はとても魅力的に映ります。インパクトの大きさから条件反射的にツイートしてしまいましたが,実際のところどのくらいありがたみがあるのでしょうか?
なんと!? これはすごい先進国株式ファンドが設定されることになりそうです。10年間信託報酬ゼロ→2031年から税抜0.10%以内にって,,,びっくり。 https://t.co/QJRqbsNe3R pic.twitter.com/HeKu9RbYZO
— なまずん🐠20代インデックス投資🐠編集者4年目 (@gameoftheweak) February 25, 2020
そこで,当ファンドをつみたてNISA口座で長期保有した場合で,定量的にざっと考えてみました。
20年拠出して20年運用する場合,「0%」による恩恵は16.5%
検討の条件は以下の通りです。
- 2020年から,20年後の2039年まで毎年新規買い付け
- 買い付けた投資信託は非課税運用期間いっぱいの20年間運用する
図に表すと次のようになります。黄色部分が「信託報酬率0%」の期間,緑色部分が「信託報酬あり」の部分です(クリックで拡大できます)。
図を見ると黄色は66マス,緑色は334マスあります。信託報酬率0%の恩恵を受けるのは全体の16.5%となります。
この場合では,「全期間の信託報酬を16.5%分,引き下げました!」と言うのとほぼ同じです。
したがって,資産価格の変動や内部再投資を考えずに,2031年以降の信託報酬率が0.10%(税抜)であるならば,全期間の信託報酬は0.0835%と言えます。
これでも,現時点で信託報酬率が最低であることは間違いありません。ただし,「無料!」と聞いて受けた衝撃よりは少し見え方が変わります。野村アセットマネジメントはうまい見せ方をしたように感じます。
もちろん,運用期間が短い予定の人にはさらに魅力的ですね。運用期間が黄色マス部分だけの人であれば,信託報酬は完全にゼロです。
また,信託報酬そのものが小さくなっているので,投資判断には,それ以外のサービスなどを総合的に考える必要性もありそうです。たとえば販売会社のしばりについて,このような見解もあります。
野村の信託報酬ゼロファンド、年0.1%の信託報酬が10年間ゼロだそうです。
そして、販売会社は野村證券縛りの模様。
さて、個人投資家の視点で乗換損得を考えたとき。
楽天証券でクレカ決済の積立投資した時に得られる1%ポイント還元は得られなくなるので、実は機会損失の方が大きいかもしれません。 https://t.co/dSyqJEqpbo— 青井ノボル (@sindanindex) February 25, 2020
◆「信託報酬ゼロの期間って思ったより長くない」とご紹介いただきました。
新しい魅力を持った投信の登場が楽しみ
インデックスファンドの低コスト化が進む中で,運用会社は,単純に信託報酬を引き下げるだけでなく,付随するメリットを売りにするようになってきました。
最たる成功例では,「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」との方針をうたったeMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信)があります。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」ではトップ3を独占しました。
最近では,インデックスファンドではありませんが,このような新しい信託報酬の形も報道されました。
農林中金さんのこのチャレンジは応援したいですね😃
投資家にとっても悪い話ではないですし。
> 農林中央金庫系の運用会社は4月、投資信託の時価を示す基準価格が最高値を更新した時だけ運用報酬を取る商品を発売する。運用成功時にしか報酬を取らないのは国内の一般個人向け株式投信で初めてだ。 https://t.co/R2aw196Zlx
— FPとさか (@FPtosaka) February 23, 2020
それらとは異なり,「野村スリーゼロ」は期間限定の無料期間を設けるという別の道に活路を求めました。「野村スリーゼロ」が投資家に浸透するのか,また,この投資信託が他社の販売戦略にどのような影響を及ぼしていくのかが楽しみです。
◆2020年3月の設定開始とともにつみたてNISA対象商品となりました。
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