私たちの将来の年金の原資の一部を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2022年度第2四半期(2022年9月末まで)の運用状況の速報が公表されました。
3四半期連続のマイナスとなりましたが、運用資産額は192兆0968億円で、累積収益額は99兆9567億円と長期的には順調です(図はGPIFの公表資料より)。
2001年以来の収益率は+3.47%
今回の四半期では-0.88%と、3四半期連続のマイナスとなってしまいましたが、年金資産は50年、100年と長期に運用するものです。短期的な収益率に一喜一憂するのは賢い見方ではなく、重要なことは長期的な収益率です。
これは上表の通り、年率+3.47%と言う事なしの状態です。
なにを基準にそう言っているかというと、GPIFの運用の目標利回りを現状では超えているからです。
GPIFの使命は、「長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保すること」です(GPIF「年金積立金の運用目標」のページより)。
そして運用実績はどうかというと、下表のように21年間で目標の2倍以上の運用利回りを確保できています(図は同ページより)。
名目賃金上昇率がマイナスというのがなんとも絶望的で日本の低迷を表していますが……。それはともかく、GPIFは運用目標を達しています。
こういった運用目標をしっかりクリアしながら、マイナスの年も大きく資産を減らさない。年金運用としては攻めと守りをバランスよく進められているのではないかと思います。
◆以下の記事に書いたように、私自身が企業年金の中の人になったので、こういった舵取りをしっかりできていることに感銘を受けます。
キャピタルゲインは減少するも、インカムゲインは当然増加
さて、この四半期のGPIFの運用に話を戻すと、今回は株価・債券価格の下落によってキャピタルゲインは減少しました。その一方で、累積のインカムゲインは当然増えています。
この図はとてもわかりやすくて好きなんですよね。キャピタルゲイン(含み益)はその時々で上下しますが、累積のインカムゲイン(利子・配当収入)は減ることはなく、運用を続けていれば増えていきます。
このインカムゲイン部分があるから、株や債券は「プラスサム」になっているんですよね。理論的には、キャピタルゲイン部分は将来にわたるインカムゲインの伸びへの期待などによって上下する要素があります。したがってインカムゲインが可視化されているこのグラフは個人的には気に入っています。
短期的には厳しい場面ですが、これまでの累積収益額は本当に大きくなっています。私たちの貴重な年金資産ですから、今後もGPIFには長期的目線での運用収益を重視して取り組んでいただきたいですね!
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