なまずんです。
2019年4月20日,赤坂インターシティ(東京都港区)にて金融庁が主催した「つみたてNISAフェスティバル2019(つみフェス2019)」に参加しました。
2017年に第1回が開催されたつみフェスは今年で3回目。平成最後となる今回が私にとっての初参加でした。
会場の印象
各省庁や国会議事堂などが集まる永田町にほど近い立地の立派なビルにて,14~17時過ぎの約3時間にわたり開催されました。
定員の250人はほぼ全席が埋まる盛況で,来場者は男性が7~8割,30~50代が大半といった印象でした。
プログラムと内容
当日のプログラムに沿って,内容の概要と私の感想をまとめます。
- 挨拶:田中良生氏(内閣府副大臣)
- 基調講話:岡本和久氏(I-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社代表取締役社長)
- 対談「長官に聞いてみよ~!」:遠藤俊英氏(金融庁長官),カン・チュンド氏(しんようFPオフィス代表)
- Q&A「つみたて投資クリニック」:虫取り小僧氏,たぱぞう氏,吊ら男氏,NightWalker氏
- パネルディスカッション「金融業界に迫りくるITの波」:山崎元氏(経済評論家),島田知保氏(『投資信託事情』編集長),吉永氏(LINE Financial株式会社),藤田氏(KDDIアセットマネジメント株式会社代表取締役),佐伯氏(ソフトバンク株式会社部長),司会=今井氏(金融庁)
田中内閣府副大臣の挨拶
オープニングとして約10分間の挨拶でした。話の概要は以下のようなものでした。
- 2018年末につみたてNISA口座の開設数は100万を突破
- 7割は40代以下の若手層による開設
- 田中内閣府副大臣自身もつみたてNISAを始めた
感想
総じてつみたてNISA制度の広まりを感じているとのお話で,「海外転勤の際,NISA口座を利用できなくなってしまう」といった課題に対する要望なども耳に入っているとのことでした。
岡本和久氏の基調講話
岡本氏は「人生100年時代」を念頭に,①幼少期における金融教育の重要性,②現役世代における資産形成の重要性,③退職後の資産活用と次世代のための投資について講演しました。
一番大切なこと
空間軸と時間軸のある考え方を持ちましょう。人生100年時代を考える上で,「自分」「いま」のことを考えるだけにとどまらず,世の中や未来のことをしっかり見据えることが大切です。
人生の目的は「しあわせ持ち」になること
人生の目的はお金を増やすことではなく,幸せを増やすこと。経済的に満たされることはことは重要ですが,幸せを形作る6要素(しあわせの六角形:金融資産,健康,家族,友達・交友関係,楽しみ・趣味,社会貢献)のうち一つに過ぎません。
人生の3つのステージ
人生は3つのステージに分けられます。「人的資産」を構築する学びの時代,人的資産を活用し,「金融資産」を築く働きの時代,金融資産を活用し,「生きざま」を形成する遊びの時代です。
学びの時代
子ども向けに開催するお金の教室(ピギーちゃんのハッピー・マネー教室)で話している内容です。「お金は感謝のしるし」です。感謝と一緒に,お金は世の中を巡ります。米国では3歳から,お金を「ためる,つかう,ゆずる,ふやす」の4つに分けることを教えます。投資の本質は,今すぐ必要でないお金を,今すぐお金を必要つする人に使わせてあげる活動です。投資家は株価に目を奪われるのではなく,このような背景をしっかり認識しましょう。
働きの時代
毎年の収入は,今年の生活費と将来の生活費の両方であることを知るべきです(行動経済学者,ダン・アリエリーの言葉の引用)。将来の生活の質を守るには,収入から退職後のための資金を準備し,インフレに伴う購買力減少を防ぎながらプラスアルファを得る必要があります。これは社会に出た直後から始めたほうがよいです。
その際,全世界になるべく分散された株式インデックスファンドを,できるだけ若いうちから積立投資し,絶対にやめない方法が有効です。
遊びの時代
退職後は構築した資産を余命年数を考慮しながら取り崩します。
投資は世代を超えて世の中のためになるものです。将来にわたって社会に優れた貢献をしていく企業に「投志」することも考えていきましょう(「冒頭の大切なこと」に関連)。
感想
一度聞いてみたかった岡本氏の話。「人生は『しあわせ持ち』になること」というような話はよくあるものの,自分を見直すきっかけになる内容でした。
中盤の「働きの時代」は私と考えが一致していて自信をもらいました。インデックス投資を選択する理由はインフレ対策と,プラスアルファのリターンの2点に集約されると思います。
金融庁長官・遠藤氏が登場
インデックス投資アドバイザーのカン・チュンド氏が,金融庁長官の遠藤氏へのインタビューする企画です。5つの質問に長官が答えました(写真左がカン氏,右が遠藤氏)。
「つみたてNISA」のメリットは?
- 長期投資により,リターンが得やすいことが最大の利点
- 利益を得る他にも,簡単に世界に投資をできる点や,資産形成をより手軽なものにできる
- そのため,税制優遇があると認識してもらいたい
金融機関は,顧客本位の業務運営を怠っていたのか
- 「顧客が流行ものの新商品を求めるから(高手数料のものを)売っているだけだ」という金融機関の主張は一概に正しいとは言えない。回転売買は問題だ
- 金融機関の収益確保は重要と認識しているが,収益意識が強すぎ,顧客の利益とバランスが取れていない
- 外貨建て保険など,投資商品以外の商品にも改革が必要だ
投資が当たり前になるような土壌を作れば投資家が増える?
- 定期預金金利が低い今,就職の際に銀行口座を作るように,証券口座を作るような文化を後押しする必要はあるかもしれない
- 規制は必要だが,銀行,証券会社といったこれまでの法律の枠組みを変えることも,長期的には考えていかなければならない
幼少期に必要な金融教育とはどんなもの?
- 親子を対象にした金融教育は,親だけを対象にしたものよりも効果的
- お金と道徳の両立を果たす必要があるだろう
つみたてNISAの今後の方向性を教えてください
- 現制度を基に発展させる方向を考えたい
- スイッチング可能にすることや,制度の恒久化もめざしたい
- 要望を出すには国民に利用されることが重要。開設口座数のさらなる伸びに期待している
感想
一番に,NISA制度の恒久化が今回も話題になってよかったです。金融庁長官のような立場の方が言ってくださると,実現に向けた一歩になります。
NISA制度が参考にした英国のISA(非課税投資制度)はすでに恒久化され,遠藤氏によれば一生で1億4000万円超の非課税投資枠があるとのこと。英国ISAの恒久化には低所得者層・若年層へのISAの普及が英国財務省の判断に影響を及ぼしたとされるため,日本でもNISAの恒久化には投資のさらなる広まりが欠かせません。
有名ブロガーはこう考える
事前に集められた質問に対し,人気ブロガーの虫取り小僧さん,たぱぞうさん,吊ら男さん,NightWalkerさんが答えました。
- 投資信託での資産形成は何年続ければよいか
NightWalkerさん(以下,ナ):20~30年は必要。
たぱぞうさん(以下,た):15~20年は考えるべき。 - 投資話は玉石混交。何をしたらよいのか。
吊られた男さん(以下,吊):つみたてNISAを利用して,ある程度規制に守られた伝統的資産(株式,債券)を購入してはどうか。
虫取り小僧さん(以下,虫):登壇者のブログも参考にしてください(笑)。 - 現時点での推薦図書を教えてほしい
虫:『人生100年時代の年金戦略』(田村正之,日本経済新聞出版社)
た:『インデックス投資は勝者のゲーム』(ジョン・C・ボーグル,パンローリング)
ナ:『お金で損しないシンプルな真実』(山崎元,朝日新聞出版) - 仕事で時間が足りません。
た:時間がない人こそインデックス投資は適する。財務や業界を調査する必要がある個別株は時間がかかる。 - 職場の人に投資していると話すと,仕事に身が入らない人と思われそうで話せない。
た:あと10~20年すれば,変わってくるのでは。
ナ:iDeCoやつみたてNISAで変わっていくのでは。
虫:投資家同士が集まって情報交換する場も増えているので,そういったものに参加してはどうか。 - 長期投資では,どういったタイミングで引き出すべきなのか。
吊:つみたてNISAの場合,解約時期は気にする必要がない。20年に分散されているので。 - 老後の資産の取り崩し方,出口戦略について知りたい。
ナ:定率で取り崩すのが原則だが,キャッシュフローの設計が重要と考える。 - 米国株だけか,世界株か。
た:米国株。全世界に投資するほうが心は落ち着く。しかし,日欧の経済発展は疑わしい。
ナ:世界株。世界中のアクティブ投資家の総和に投資するほうが中立的。米国の未来も約束されたものではない。 - 税金が不安です。
ナ:社会に必要なものとして払いましょう。非課税投資口座の利用も。 - リスク資産が少しプラスになりました。元本割れする前に,売って利益を確定させたい。
ナ:論外! ここが長期投資の成否の分かれ目。リバランスや計画的な取り崩しはOK。
虫:期待リターンがプラスと見込んで投資しているのであれば,長く続けよ。 - ファンドの目論見書に前年の実質コストを明記して,実質コストでファンド比較できるようになったらいいのに。
吊:そのとおりです。金融庁に期待しています。 - 同じ指数に連動するファンドで,より信託報酬が低いものが出た場合は切り替えるべきか。
吊:よほどの差でなければそのままでよい。新規買付け分から変えてはどうか。
感想
質問内容も回答もある程度予想の範囲内でした。始めたての頃の疑問は皆同じで,需要があるのでしょう。
おすすめ書籍の『人生100年時代の年金戦略』は私も読みました。「年金は老後のもの」と考えている人にとっては大きな発見があるでしょう。自分ごととしてとらえるための一冊としておすすめです。
積立投資のすそ野を広げていくには,例えばブロガーでなく一般著名人による「わたしのつみたて体験」
パネルディスカッション
「つみたてNISA」関連の話題はほぼなかったので,印象に残った点のみピックアップします。
- 各社とも,金融サービスをより気軽に使えるように,顧客基盤へのアプローチとして決済などの金融事業に参入している
- 新規事業者は,既存の金融機関が対象していない層,すなわち自らマネーリテラシーに課題意識を持たない人を対象にサービスを展開したい
- ポイント還元の仕組みは自社の他のサービスとの連携を高め,経済圏の構築につながる
- 新規参入者が入ることで,業界のサービスの質が向上することは大切
- 新規参入者が「自社顧客の囲い込み」に終わってしまっては,新規参入者の存在はユーザーにとって真の利益にならない
議論を踏まえて,経済評論家の山崎氏は,「手数料を1%も取るような“ボロ”アドバイザーのような,レベルの低い商売にならないようには気をつけてほしい。そうではなく,顧客に対してリスク資産への投資による成功体験を提供すべき」,島田氏は「今までの金融機関ができなかった,投資を始めた人に長く続けてもらうような方法づくりに期待する」とまとめました。
感想
IT企業による新しい仕組みづくりについては興味深かったのですが,つみたてNISA関連の話題がほとんどありませんでした。そういった意味では少し期待はずれでした。
私はかなり割愛してしまったのですが,哲学系博士号をお持ちの教員投資家sayasayanさんの記事がよくまとまっています。余談ですが,当日はsayasayanさんと会場の前で偶然会い,会場では隣席で聴講しました(ちなみに,その隣は米国株日本株投資家のずずずさんでした。ずずずさんには新名刺をもらいました)。
終了後
たぱぞうさんにごあいさつ
ずずずさんの案内で,一度お目にかかりたかった有名ブロガーたぱぞうさんにご挨拶しました。人柄の良さそうな雰囲気を感じました。報告記事をすぐにまとめるたぱぞうさん,すごい!
打ち上げ
会場で最後に一緒に話していたともさん,takachanさん,sayasayanさん,安房さん,パーサモウニアスさんと食事に行きました。
とも@静岡さん、takachanさん、安房さん、sayasayanさん、なまずんさんと今日の振り返り会という名目で飲んできました。
つみフェスのイベントはインプットメインだったので、お互いにアウトプットできる場ができて楽しかったです。 pic.twitter.com/hnbSEL8eRu— パーサモウニアス (@parsimonious_16) 2019年4月20日
takachanさんの深い分析を中心に2時間程度情報交換できました。近年の日本における実質賃金の低迷は株主優待と雇用者保護にある,というお話は興味深かったです。労働分配率が下がる中で,可処分所得を高める手段の一つが投資であることは意見が一致したように思います。
保有資産におけるリスク資産の割合が5割以上の方が多かったのが印象的でした。比較的気軽に投資できるところが利点のつみたてNISAの集会でも,会場まで来る人は相当な本気度であることがうかがえます。
つみフェス2019に参加して
全体的にはつみたてNISAのさらなる推進に向けた発信が多く,特に制度改善やさらなる利用者拡大に向けた議論があったのは好感を持ちました。Twitterではハッシュタグ「#つみフェス2019」を付けたツイートが発信され,参加できなかった人にも情報を伝える仕組みを作ったことは良かったです(写真●会場内でもTLがスクリーン上に流れました)。無料の会議で,なるべく多くの人に知ってほしい内容ですから,今後はネット中継などに挑戦しても面白いかもしれません。
一方で,内容はすでにつみたてNISA口座を開設済みの人向けでした。まだ普及を図る段階ですから,つみフェスにおいても「つみたてNISAとは何か」というセッションを簡潔に組み込んだほうがよいと私は考えます。
また,前述のようにパネルディスカッションは内容がつみたてNISAとは関連が薄いものでした。各企業のプレゼンテーションは面白かったですが。せめて,「つみたてNISAにおける各企業の役割と取り組み」といったお話を聞けたら良かったと思います。
つみたてNISAをはじめ,さらなる投資の普及に向けて,継続的な開催と発展を願いたいです!
コメント