過去に書いたように、2022年から職場の確定給付企業年金(DB)にかかわることになりました。


上記の記事のように、これまでは制度変更や法令遵守に対応することが主な役割だったのですが、ここにきて役割が入れ替わりました。
今後は運用の基本方針や資産構成割合の策定・見直しや、具体的な購入商品などの検討を行う年金資産の管理・運用の委員の仕事を年に数回行うことになります。

数百億円のDBの運用にかかわるわけですので、より機関投資家っぽいことをすることになりますね。なお、当然ながら私が運用の決定権を持つわけではなく、あくまで委員の1人としてかかわるという立場です。
DBは企業年金制度の柱の1つ





このテーマを書くのは久しぶりなので、「DBって何?」という人のために簡潔な説明をしておきます。
DBとは企業年金制度の1つです。「確定給付」という名称が示しているように、給付額があらかじめ規約で決まっているという特徴があります。
DBは、企業が毎月、将来の給付のための資金を拠出し、企業の責任において運用していきます。運用成果に関わらず、給付額は現役時代の給与や勤続年数などによってあらかじめ決まっており、一般的には退職金もしくは退職後の年金として支給されます。
次に説明する企業型確定拠出年金(DC)とは異なり、加入者が運営にかかわることはほとんどありません。





なお、DBの加入者は約900万人いますので、自覚のないうちに加入している人も少なくないでしょう。
DBと並んで企業年金制度のもう1つの柱となっている制度に、企業型DCがあります。「確定拠出」という名称が示しているように、こちらは拠出額があらかじめ決まっていて、給付額が運用成果に左右される制度です。
企業型DCは、運用商品を加入者自身が選び、加入者自身がその運用リスクを負うことになります。企業の責任は、制度を準備して従業員を加入させ、企業が掛金を拠出ところまでです。個人型確定拠出年金(iDeCo)と基本的に同じであり、iDeCoについて知っている人は理解しやすいでしょう。iDeCoが企業型DCと異なる点はiDeCoは国が制度を準備し、加入は任意であり、掛金は加入者が拠出するという点です。
企業型DCの加入者は約830万人ですが、近年はDBから企業型DCに移行する企業が増えてきています。DBは運用がうまくいかなかった場合にその穴埋めをする責任があることや、制度の運用にあたって担当者の負荷が大きいことが代表的な理由です。





なお、DBと企業型DCは企業年金ですので、国が運営する国民年金・厚生年金などとは別に支給されることになります。また、複数のDBに加入していたり、DBと企業型DCの両方に加入していたりする人もいます。
DBと企業型DCのどちらが有利?





以上が、制度に関する一般的な説明です。以降は個人的な見解として読んでください。
DBと企業型DCのどちらが良いとは言い切れません。しかし一般に、自分で運用できる人は企業型DCのほうが給付額の期待値は高くなるでしょう。
まず、企業型DCは加入者自身が運用商品を決定できます。また、受給するまでに、途中で大きく下落しても、その時点で何らかの対応を行う必要はありません(そもそも退職するまでは引き出せません)。





したがって運用期間が長い場合や、リスク許容度が高い場合には、株式比率を高めるといった攻めた運用が可能です。
一方、DBは加入者個人の視点でみれば、拠出から給付までの期間が長い人もいます。しかし、制度側からみると、加入者から拠出される金額よりも、退職者へ給付する金額が多くなっていることが一般的です。つまり、DB全体としては、常に「取り崩し期」にあります。
また、「確定給付企業年金法」などに基づいて、将来の給付に備えた一定以上の運用資金があるかどうかを5年ごとに確認し、不足していれば新たに拠出する必要が生じるといった制約もあります。そのため、リスク管理が最重要であり、運用方針はどうしても保守的になります。





実際、私の加入するDBも運用資産の3分の1は元本保証の保険商品で、株式が占める割合は20%程度にとどまっています。
さらに、中の人をやってみて驚いたことでもありますが、DBの維持や運用管理には、人員の配置や外部へのコンサルティング費用、上記の決算報告などを含めたかなりのコストがかかります。これらの費用は掛金と分離されているものもありますが、出どころはどちらも同じ企業からですので、企業にとっては大きな負担があります。
DBは公的年金と同様に、老後の資金計画を立てやすいメリットがあるほか、DBを退職金に充当する企業では従業員に退職金の支払いの保証ができるなどの利点があるものの、運用の期待値という視点では、企業型DCに軍配が上がります。
そしてDBの運用にかかわることに!
さて、そんなDBの中の人としてのお仕事ですが、これまでも運用内容などに関する質問を出せる程度の立場ではありました。しかし、今後は運用にダイレクトにかかわることになるので、個人的には新たな役割のほうがより面白そうだなと思っています。





正直なところ、前回担当した制度・法令への対応については、説明を受けて理解するので精一杯であり、DBのために何か役立てたような感じはしませんでした。
そんなポンコツ状態だったので違う役割に回されたのでしょう。
さっそく、年金資産の管理・運用について、1回めの会議がありましたが、理解できる概念や理解が多いことに衝撃を受けました。今後は、必要な利回りを確保するためにどのような資産構成にするかという基本方針を決める年金ALM(Asset Liability Management)などの議論もあるようです。自分の資産運用にも活かせる部分があるので、いろいろと勉強したいと思います。





同じ市場に立ち向かうのにもかかわらず、取り崩しまでの期間を十分に稼げてリスク許容度の高い個人の資産運用と、短期的なリスクについても意識した運用が必要なDBでは、全然考え方が違いますからね。
もちろん以前の役割も、DBと企業型DC、iDeCoは同じ仕組みを基盤に展開されているので、自分の知識にはなりました。iDeCoのリスクとしてよく挙げられる「特別法人税の復活」を声高に叫ぶようなポストを、単なる不安あおりでしかないとスルーできるのもその1つかもしれません。
今回もたまたま役回りを得たわけですが、長期を見据えた個人投資家としてのインデックス投資の実践とは別に、さまざまな制約と責任をかかえた機関投資家の内部事情を知るのはなかなか興味深いものです。


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