2027年からの開始が予定されている「こどもNISA」(未成年者特定累積投資勘定)について先日、Xで次のようなポストをしたところ、思った以上に多くの反応がありました。
こどもNISA、制度があることがデメリットになることはほとんど考えられないのだが、(嫌なら使わなければいいだけなので)「自分が使えない制度で誰かが得をする」ってことが受け入れがたいのかもね。 https://t.co/ofYzMMyjHW
— なまずん🐟20代からインデックス投資をスタート🐟 (@gameoftheweak) September 27, 2026
きっかけは投資インフルエンサーのナザールさんが紹介していた番組の視聴者投票です。「こどもNISA」に賛成か反対かを問うもので、賛成51%・反対49%と真っ二つに分かれていました。私のポストへのリプライや引用ポストを見ても、やはり賛否は割れています。
反対派の意見で目立ったのは、「お金に余裕のある家庭の子どもだけが得をして、次の世代の格差が広がる」というものでした。

そこで、「こどもNISA」は本当に格差拡大装置なのか。そして家計全体で見るとどうなのかを、簡単なシミュレーションをしながら確かめてみることにしました。
◆「こどもNISA」の仕組みと使い方は以前にも検討しましたので、こちらもご参考に。



◆10/3追記:FIREブロガーの元スパコンSEさんに記事をご紹介いただきました。子が散財してしまった際の考え方まで楽しく読めますのでおすすめ。


「こどもNISA」で子どもの間の差は広がるのか?
結論を書くと、「18歳時点で子どもが持つ資産に差がつくか」という意味では、答えはYESです。
資金を出せる家庭の子どもは18歳の時点でまとまった資産を持ち、そうでない家庭の子どもはゼロからのスタートになります。これは制度の性質上、避けられません。
ただし、「こどもNISAに由来する差」はそれほど大きくありません。まずは制度の中身を確認しておきます。
「こどもNISA」は子ども自身のNISAを先取りする制度
「こどもNISA」は、2027年1月から始まる0〜17歳向けのNISA制度です。現行NISAのつみたて投資枠の対象年齢を0歳まで広げる形で作られました。多くの金融機関では、2026年10月から口座開設の受付が始まる予定です。
| 特徴 | 「こどもNISA」(0〜17歳) | 18歳以上のNISA |
| 使える枠 | つみたて投資枠のみ | つみたて投資枠・成長投資枠 |
| 年間投資枠 | 60万円 | 360万円(つみたて120万円+成長240万円) |
| 非課税保有限度額 | 600万円 | 1800万円(うち成長投資枠1200万円) |
| 投資対象 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | つみたて投資枠は左に同じ。成長投資枠は上場株式・投資信託等 |
| 払出し | 12歳以降、子どもの教育費・生活費に限り可 | 制限なし |
口座は子ども名義ですので、「こどもNISA」の資産は子ども本人の財産です。ただし運用や手続きは、親権者などの口座管理者が行います。
18歳までは子どもの教育費・生活費を目的とする場合などを除いて払出しが制限されており、18歳になるとそのまま成人のNISAへと移行します。教育費の準備と、子どもへの資産の受け渡しのための口座としての性格があります。
なお、「こどもNISA」で購入した分は、成人のNISAの1800万円の非課税保有限度額に含まれます。





つまり「こどもNISA」は、親のNISAとは別に新たな非課税枠が生まれる制度ではなく、子ども自身が将来使うNISAを0歳から先取りできる制度です。
「こどもNISA」の有無で、18歳時点でいくら差がつく?
では、「こどもNISA」を使うかどうかで、18歳時点でどれくらいの差がつくのかを計算してみます。前提は次のとおりです。
- 子どもが0歳から9歳まで、毎年60万円(合計600万円)を投資
- 年率4%で運用し、18歳時点で評価(計算を簡単にするため、毎年初めに60万円ずつ投資したと仮定)
- 運用益への税率は20.315%とし、信託報酬などのコストは考慮しない
- 親から子への贈与は年60万円のみで、ほかからの贈与はない(贈与税の基礎控除110万円の範囲内なので贈与税はかからない)
比較するのは、次の4つのケースです。
①「こどもNISA」:毎年60万円を子どもに贈与し、「こどもNISA」で運用
②子どもの特定口座:毎年60万円を子どもに贈与し、子ども名義の特定口座で運用
③親のNISAで運用→一括贈与:親のNISAで運用し、子が18歳の時点で売却して現金で子どもに贈与
④親の特定口座→一括贈与:親の特定口座で運用し、子が18歳の時点で売却して現金で子どもに贈与
| ケース | 運用益への税金 | 贈与税 | 18歳時点の手取り | ①との差 |
| ①「こどもNISA」 | 0円 | 0円 | 1025.3万円 | ― |
| ②子どもの特定口座 | 86.4万円 | 0円 | 938.9万円 | -86.4万円 |
| ③親のNISAで運用→一括贈与 | 0円 | 184.6万円 | 840.7万円 | -184.6万円 |
| ④親の特定口座で運用→一括贈与 | 86.4万円 | 158.7万円 | 780.2万円 | -245.1万円 |
※いずれも18歳時点ですべて売却した場合で計算。③・④の贈与税は、18歳以上の子が親から贈与を受ける場合の特例税率で計算。
元本600万円を年率4%で運用できるとすると、18歳時点で1025.3万円になります。「こどもNISA」なら、運用益425.3万円に税金がかかりません。
②~④のパターンについても見ていきましょう。
まず、①と②の差86.4万円は、運用益が非課税になるという「こどもNISA」ならではの効果です。
一方、①と③はどちらもNISAでの運用であるため、運用益は非課税です。ところが、増やしてからまとめて贈与すると贈与税がかかります。③と比べてみると、運用益に課税されるものの贈与税を回避できる②のほうがこの例では有利な結果になりました。
②は「こどもNISA」がなくても、子ども名義の特定口座を使えば今でも実践できます。





大きな差を生んでいるのは「こどもNISA」ではなく、贈与のタイミングなんですね。
④の運用益への税金と贈与税の両方がかかる例では、差は245.1万円まで広がります。
そして、子どもの特定口座への課税を減らしたり、親が運用した後の一括贈与を避けたりするなどによって、②~④でも実際の課税額はさらに減らすことができることを考えると、「こどもNISA」による非課税のメリットはさらに小さくなるのです。





「こどもNISA」は確かに有利ではあるものの、非課税のメリットによって人生が劇的に変わるものではないことはよく分かるのではないでしょうか。
なお、計算を簡便にするために60万円の年初一括投資でシミュレーションしていますが、毎月5万円ずつの積み立てでも結果の傾向は変わりません。その場合の18歳時点の評価額は約1007万円です。また、運用成果によってメリットの大きさが変わることにも留意する必要があります。
家計全体で見れば制度の有無で大差はない
子どもに渡した分だけ、親の資産は減っている
そして「こどもNISAで格差が広がる」という意見に欠けていると私が感じるのは、家計全体で見る視点です。
子どもに600万円を贈与した家庭は、そのぶん親の資産が減っています。そもそも「こどもNISA」をフル活用できるような家庭は、制度がなくても、親が自分で運用しておくか、子どもに贈与して子どもの口座で運用していたはずです。





制度の有無で変わるのは、シミュレーションで見た数十万~100万円程度の差に過ぎません。
もちろん、親のNISAの非課税投資枠を使い切ったうえで、さらに子どもにも資金を回せる家庭ほど「こどもNISA」の恩恵を受けやすいのは確かです。そのため、上限が600万円までに抑えられたのでしょう。
18歳時点で子どもが持つ資産の差は、「こどもNISA」が生み出したものではありません。その差の大部分は「もともと親の世代にあった資産の差が、子どもの名義に移っただけ」という身も蓋もない話であり、「こどもNISA」だけにフォーカスするのは少々言い過ぎであろう、というのが私の見方です。





「こどもNISA」は格差拡大装置というより、家計の中でお金をどこに置くかの選択肢が1つ増えた、くらいに捉えるのがちょうどいいと思います。
「18歳で大金」が心配なら、使わないのも一考





ちなみに、反対意見の中には、「18歳の子どもが1000万円も持っているのは教育上よくない」という声もありました。
先に書いたとおり、「こどもNISA」の資産は子ども本人の財産です。払出しには子どもの同意が必要ですし、高校を卒業する年からは本人が自由に使えるお金になります。この点が心配なのであれば、無理に「こどもNISA」を使わずに、親が自分の資産として運用しておけばよいでしょう。
前述のシミュレーションの③(親のNISAで運用→一括贈与)や④(親の特定口座で運用→一括贈与)は、①(「こどもNISA」)と結構な差があるようにも思えますが、一括贈与しないのであれば贈与税はかかりません。徐々に資産を移していけばよいでしょう。





当たり前ですが、贈与しなかった分だけ親の資産は増えているのですから、家計全体で見ると大した差にはなりません。気になるなら使わなければいいだけなんですよね。
「こどもNISA」よりも格差が広がりそうな制度もある
暦年贈与や住宅取得資金の贈与の非課税の影響は大きい
次の世代への資産の移転という点では、「こどもNISA」よりも影響が大きいと考えられる仕組みがすでにあります。
代表的なのが、贈与税の基礎控除を使った暦年贈与です。受け取る人1人あたり年110万円までは贈与税がかからず、子どもや孫の人数分、何年でも繰り返せます。
また、住宅を取得するための資金を父母や祖父母から受け取る場合は、一定の要件を満たせば、暦年贈与とは別枠で最大1000万円まで贈与税が非課税になる特例があります。現行制度の適用期限は2026年12月31日ですが、これまでも延長が繰り返されてきた制度で、しばらくは続くことになるでしょう。
参考までに、父母や祖父母から教育資金を一括で贈与する場合に最大1500万円まで非課税になる特例もありましたが、こちらは2026年3月31日で終了しました。延長しない理由として「これまでの利用の実態や格差固定化の懸念、教育費の無償化や負担軽減の進展、NISAの拡充等」が挙げられています(2025年の与党税制改正大綱)。
理由の1つに「NISAの拡充」が挙げられている点が興味深いところで、むしろ上限を抑えた「こどもNISA」に置き換えたと見ることもできそうです。





以上のような贈与の仕組みへの批判は「こどもNISA」ほど目立ってはいないので「こどもNISA」は必要以上にクローズアップされている印象があります。
もう1つの狙いは「世代間」の資産移転ではないか
ここからは私の推測も含まれますが、「こどもNISA」の狙いの1つには「高齢者世代に滞留する資産を、子どもや現役世代に移したい」という、世代間の問題への対応もあるのではないかと考えています。
こどもNISAは子の世代内格差に注目されがちだけど、真の狙いの1つは「高齢者世代に滞留する資産を子世代に移転させたい」(世代間格差の解消)というのがあって、そこを頭に入れておいても良いと思ってる。… https://t.co/fRDsaGzHjF
— なまずん🐟20代からインデックス投資をスタート🐟 (@gameoftheweak) September 28, 2026
公式に掲げられている目的は「次世代の資産形成の支援」で、世代間の資産移転は明記されていません。ただ、かつてのジュニアNISAは、創設時に「高齢者層による若年層への資産移転」を後押しする枠組みと説明されていました(NISA及びジュニアNISAの口座開設及び勧誘並びに販売時等における留意事項について(ガイドライン))。
その背景には、日本の家計金融資産は、60代以上が6割超を保有しているというデータがあります(政府税制調査会)。また、2024年度の経済財政白書によると、相続税の申告における被相続人(亡くなった人)のうち80歳以上の割合は、1989年の4割弱から2019年には7割超に高まりました。そして、相続人の8割は50歳以上です(令和6年度 年次経済財政報告)。





親の遺産を受け取るのは50代以降というのが当たり前になっているわけですね。
相続による移転だけに任せていると、超高齢者から高齢者へと資産がぐるぐる回るばかりで、お金が必要な現役世代や子どもの世代の資産は薄いままです。贈与の仕組みは以前からありますが、積極的に活用しているのは一部の家庭にとどまっています。
それを税制優遇をきっかけに動かし、若い世代の手元資金を増やして、ついでに経済の活性化にもつなげる――「こどもNISA」の背景には、そんなストーリーもあると私は見ています。
マクロな視点では、「こどもNISA」によってさらに税収が減るという考え方もあり、これは国全体で見れば軽視できない論点です。
それでも制度が作られたのは、減収を上回る利点があると考えられているからでしょう。一時的に税収が減っても、若い世代の手元資金が増えて消費や投資が増えれば、間接的に経済に返ってくる面もあります。政府税制調査会の答申でも、各種の贈与税の非課税措置は「資産の早期移転による消費拡大を通じた経済の活性化」を図るための措置と説明されています。
「祖父母→孫」の移転を考えてみるのもよいかも
税制上、祖父母から孫への資金移転とは相性がよくなっています。相続税の計算では、亡くなる前の一定期間(段階的に3年から7年へ延長中)に受けた贈与が相続財産に加算されますが、通常であれば孫が相続で財産を直接受け取ることはなく、この加算の対象とすることなく資産を移転することができます。





わが家でも、このように祖父母の協力を得られるかどうかを相談してみたいと思います。
祖父母の資産は祖父母が自由に使えるものというのが大前提です。
しかし、いくらかを遺すつもりでいるのであれば、私たちが受け取る遺産が減っても、より若い次世代が使えるお金が増えるほうが、お金の持つ価値は大きいと言えるでしょう。
※本記事の制度に関する記述は2026年9月時点の情報に基づいています。制度は今後改正される可能性があることにはご留意ください。
◆親のNISAと「こどもNISA」、どちらを優先すべきか考えました。



◆特定口座の資金をNISAに移すべきかのシミュレーションはこちら。





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