「こどもNISA」と親のNISA、どちらを優先して利用すべき?

261011 「こどもNISA」と親のNISA、どちらを優先して利用すべき? NISA
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2027年1月から、0〜17歳の子ども向けのNISA(未成年者特定累積投資勘定)、いわゆる「こどもNISA」が始まります。

これは子どもの名義でつみたて投資枠の対象となる投資信託に年60万円まで非課税で投資できる制度です。

すでに自分のNISAで積立投資をしている親にとって、限られた投資資金を自分のNISAとこどもNISAのどちらに先に入れるべきかは悩ましい問題ではないでしょうか。

そこでこの記事では、こどもNISAを優先する場合の主な注意点を説明し、次に仮定を置いて税金の損得をシミュレーションした結果を紹介します。

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長文を読む時間がない人のために

この「こどもNISAを優先すべきかどうか」を決めるには多くの条件がかかわり、分量が膨大なものとなりました。そこで非常に大ざっぱではありますが、長文を読む時間がない人や、私の見解だけを知りたい人はこの項目だけを読んでいただければと思います。

詳細な議論をせずに、友人・知人から雑談のなかで尋ねられたら私はこのように答えるというイメージのものです。結局は総合的に考えて、「親が自分のNISAの非課税枠を全額利用できる見込みがあるかどうか」という話になります。

税制上の損得について結論から言えば、相続を経て子どもが運用を続ける遠い将来までを考えると、こどもNISAの利用を優先したほうが有利になる可能性が高いです。

とくに、親の死亡時に相続税がかかるかどうかが損得を左右するかなり大きな要素になります。

したがって、相続税がかかる可能性が高い家庭では、こどもNISAを利用することを前向きに考える意義があります。これは50年以上の超長期の時間軸ではありますが、数百万円あるいは1000万円以上の差になる可能性すらあります。

将来、その時を迎えてみないとわからないことではありますが、相続税が生じる可能性が高い家庭ではこどもNISAを優先的に利用する意義が大きくなります。

相続税がかからない、あるいは少額で済む場合には、さらに条件が重なると親のNISAを埋めることを優先したほうが有利になる例はあるものの、その金額差は無視できる規模です。

その条件も、「いつ相続が発生するか」「将来の子どもの年間投資額はいくらか」などの現時点ではまったく確定できない要素が多いため、「税制を気にしてこどもNISAを利用しない」という判断をするのは妥当ではないでしょう。

現時点で親が自身のNISAの非課税枠1800万円を埋められる見込みがある人は将来、相続税がかかりやすい属性であるとも言えます。有利な確率が高く、外れても大きな損はしないという点で、こどもNISAを積極的に利用してみてはいかがでしょうか。

一方、相続の直前までの時点では、親が自分のNISAの非課税枠を埋められない家庭では、親のNISAを優先したほうが基本的に有利です。

もちろん、こどもNISAを積極的に利用しても大きく不利になるパターンは少ないので、子ども名義の資産を作りたいのであれば、ぜひ制度を利用してはいかがでしょうか。

なお、こどもNISAに入れたお金は次の見出しで詳しく説明するように、子ども名義の資産になります。ここまでに説明している損得の話はあくまで親子全体の話であり、こどもNISAを利用すると親の資産はそのぶん減ります。とくに18歳以降は親がコントロールできる範囲の資産ではなくなり、子どもの意思で全額使ってしまうこともできます。

これが大きな問題になり得る部分であり、こどもNISAを利用したことによって、親の老後資金などが不足してしまうことがないように慎重に判断しましょう。

したがって、現時点では親が自身のNISAの非課税枠1800万円を埋められる見込みが低い人は、損得以外の要素の影響も考慮して、まずは親が自身のNISAを利用することに注力することで問題はありません。

「こどもNISAは将来子どもに渡ることになる遺産の一部を早く渡しているに過ぎない」というのが私の見方です。あまり無駄遣いはしてほしくはない気持ちはありますが、私がこの世を去ったあと、子どもが遺産をどのように扱うかはコントロールできないのと同じです。

とりあえずわが家は、①将来、相続税が課される程度の資産ができそうであることと、②こどもNISAを利用したところで親の将来の資金が不足するリスクは低いこと、③子どもに渡したお金がどうなろうと私は大して気にならないので、こどもNISAを積極的に利用したいと思います。

こどもNISAを優先する前に知っておきたい注意点

まずは、こどもNISAと親のNISAの違いを確認してみましょう。どちらも運用益が非課税になる点は同じですが、お金を引き出せるタイミングや、誰の財産になるかが大きく異なります。

項目 こどもNISA 成人のNISA
対象となる年齢 0〜17歳(その年の1月1日時点で18歳未満) 18歳以上
年間投資枠 60万円(つみたて投資枠のみ) 360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)
非課税保有限度額 600万円 1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)
買える商品 つみたて投資枠の対象となる投資信託 つみたて投資枠・成長投資枠の対象商品
非課税期間 無期限 無期限
口座の管理 親権者など 本人
払い出し ・小学6年生の1月になるまでは、災害などの場合を除いて払い出せない
・それ以降は、子どもの教育費・生活費に充てる場合に限り、子どもの同意を得て払い出せる
・高校3年生の1月からは制限なし
いつでも可能
18歳以降 ・自動的に成人のNISAに移る
・こどもNISAで投資した額は1800万円の枠に含まれる
―
金融機関の変更 できない 1年単位で可能

払い出しの区切りは年齢で説明されることも多いのですが、その年の3月31日時点の年齢が基準です。そのため、小学6年生の1月と高校3年生の1月と読み替えています。

共通する部分は多いものの、こどもNISAに入れたお金は子どもの財産(名義)になり、親が自由に使えなくなるという大きな違いがあります。

それでは、主な注意点について具体的にみていきましょう。

親の老後資金には使えなくなる

注意点の1つ目は、こどもNISAに入れたお金は子どもの財産であることです。親の老後資金が足りなくなっても、親が自分の生活費として使えません。

足りなくなったら子どもに頼るという手はありますが、それも子どもが助けてくれればの話です。将来の子どもに親を支える余裕や気持ちがあるかどうかについて、楽観的に考えすぎないほうがよいでしょう。

たとえば現在、親が35歳・子が5歳で親の年間投資額が60万円の家庭が年率4%で運用し、60歳から毎年120万円(年間投資額の2倍)を取り崩す場合では、こどもNISAを優先すると親の資産が80歳で尽きてしまいます。95歳まで生きた場合には、子どもから累計約1800万円の仕送りを受ける必要があるのです。

一方、親のNISAを優先していれば、95歳まで親は自分の資産から支出できます。

老後資金に不安がある場合には、それだけで親のNISAを優先する十分な理由になります。

子ども本人の教育費・生活費以外には原則引き出せない

こどもNISAは、18歳になるまでにお金を引き出せる場面がかなり限られています。親の住宅購入や病気、失業などによってお金が必要になっても、こどもNISAに入れた資金を使うことはできません。

とくに、家計の緊急時の備えにはならない点は大きな要素です。

なお、こどもNISAを使う場合でも、教育費を誰の名義で支払うかはポイントの1つです。こどもNISAから払い出すと、その分の非課税での運用が終わります。子どもが将来、自分でNISAの非課税枠(1800万円)を利用できない場合では、払い出しで空いた非課税枠が使われないままになってしまいます。

親の特定口座などの資金を売って支払えば、その時点で売却益に税金はかかるものの、こどもNISAで非課税の運用を続けることができます。この比較では、親の課税口座の資金を教育費に充当するほうがこどもNISAの資金を利用するよりも有利です。

ただし、子どもが将来、自分で非課税枠を全額利用できる場合は、教育費の払い出しで空いた非課税枠を後で子どもが使えるので差は小さくなります。また、親の課税口座の含み益が大きければ、こどもNISAから払い出したほうが有利になることもあります。

なお、相続税がかかる家庭では、教育費を親の資産から出せば親の相続財産が減るので、こどもNISAを使う場合でも、親が教育費を支出するほうが長期的にはさらに有利になります。

以上の点から、こどもNISAを利用する場合でも、教育費は親が自分の名義の資産から支出したほうが長期的には有利になりやすいといえます。

18歳以降は子どもが自由に使えてしまう

子どもが18歳になると、こどもNISAは自動的に成人のNISAに移り、子ども自身の口座として管理されるようになります。

若いうちに大きなお金を持つことを、良い経験の機会とみるか、無駄遣いのリスクとみるかは家庭によって分かれるでしょう。子どもとお金について話しておくことも含めて、考えておきたいポイントです。

個人的には、数十年後に受け渡す遺産の先取りに過ぎないという考え方をしています。自分の死後に子どもが遺産をどう使うかをコントロールできないのと同様であり、子どもが自らの責任で活用すればよいと割り切って考えています。

子どもの将来のNISAの非課税枠を先に使ってしまう

こどもNISAで投資した分(簿価)は、子どもが18歳になった後、子ども自身のNISAの1800万円の非課税枠に含まれます。600万円の満額を利用した場合には、子どもが将来、自分の収入から1200万円分を投資すると非課税枠が埋まり、その後子ども自身は課税口座で投資していくことになります。

この「子どもの非課税枠が減ってしまうこと」は、後で紹介するシミュレーションで、親が自身のNISAを優先したほうが有利になる場合のおもな要因です。

贈与・相続の手続き面で注意を要する

親子の間でのお金のやり取りは、贈与税や相続税のルールにも注意が必要です。

贈与税の基礎控除は、贈与を受けた人ごとに年110万円です。こどもNISAの年60万円だけなら基礎控除の範囲内ですが、祖父母などからの贈与と合計して110万円を超えると贈与税がかかります。また、毎年決まった額を何年にもわたって贈与することを約束していたと見なされる場合は、その合計額の権利のやり取りがあったと考えて、贈与税が課される可能性があります。

さらに、相続や遺贈で財産を受け取った人が、亡くなった人から亡くなる前の7年以内に受けた贈与は、一部の例外を除いて相続財産に加算されます。親が早くに亡くなった場合は、直前にこどもNISAに入れたお金が相続財産に加算されうるのです。

一方で、それより前に入れたお金は運用益も含めて親の相続財産から外れるので、将来、相続税がかかる家庭では相続税を減らす効果があります。

この相続税はこどもNISAと親のNISAのどちらを優先するかにおいて大きな差を生じる要因の1つであり、重要です。

税金の損得をシミュレーションする前提

ここまではこどもNISAの主な注意点についてさまざまな面から考えてきましたが、ここからは心理的・定性的な要素は考慮せずに、税金の損得だけを比べたシミュレーションを行います。

シミュレーションの限界

冒頭でどちらが有利であるかはケースバイケースであることに触れました。そうなってくる理由は、条件の組み合わせによってどちらが有利になるかが異なるからです。

具体的には、親子の年齢、これまでの親のNISAの利用状況、親の年間投資額、子どもの将来の年間投資額、今後の運用リターン、親の将来の取り崩し額、親が亡くなる年齢などによって結果は変わります。

現時点では推定困難なものが多く、極端なことを言えば、孫のこどもNISAの利用や、将来の税制変更も変数になり得ます。また、税金を計算する(税引後の総額を比較する)ために、最後に資産をすべて売却する前提を置いているのも、現実に即しているわけではありません。

したがって、このシミュレーションは精緻に診断するためのものではなく、「どのくらいの条件だとどちらが有利で、どれくらいの差があるか」の目安を大まかに知るという使い方をしてもらえればと思います。

このほか、計算を単純にするために、次のような割り切りをしています。

・相続税は親のNISAと特定口座の資産だけで計算し、不動産や預金などのほかの財産はないものとする
・贈与税は考えない(贈与は年110万円の基礎控除の範囲内)とする
・こどもNISAを教育費などとして途中で払い出す使い方は考えない
・親子の年齢差は30歳で固定する

とくに相続時の課税が大きな要素であり、夫婦・子ども2人の場合は、親1人・子ども1人の組を2つ並べたものに近いと考えられますが、夫婦の一方が亡くなったときに配偶者が相続するなど、相続の順番が変わる点は異なります。相続人の数が増えると相続税の基礎控除が増えるので、結果にある程度の影響を及ぼし得ることには考慮が必要です。

比較の方法・前提と結果の示し方

比べるのは次の2つの方法です。違いは子どもが17歳以下のときに、親の投資資金をどちらのNISAから先に入れるかだけです。

  • 「こどもNISA優先」:親の年間投資額を、こどもNISA→親のNISA→親の特定口座の順に入れていく
  • 「親NISA優先」:親の年間投資額を、親のNISA→こどもNISA→親の特定口座の順に入れていく

子どもが18歳になったあとについては、親の新規投資資金は、「親のNISA→子どもへ贈与(年100万円まで)し、子どものNISA非課税枠の利用に協力→親の特定口座を利用」という順としています。

つまり、①親は親子のNISAと自分の特定口座に資金を入れ、②子は自分のNISAと自分の特定口座で投資する設計です。仮に親のNISAの非課税枠が余っていても、子から親への投資の援助はしないこと(子が親を援助するのは資金が尽きた場合のみ)としました。

また、今回は以下の範囲で計算を行っています。

項目 設定
2027年1月時点の親子の年齢 ・親30〜45歳、子0〜15歳
・親子の年齢差は30歳で固定
親の年間投資額 ・30万〜180万円
・2027年から親が59歳の年まで、毎月積み立てる
親のNISAの既存利用額 ・90万〜540万円
・2024〜2026年に上記年間投資額と同じ額を積み立てた分
・これまでの含み益は考慮しない
子どもの年間投資額 ・30万〜360万円
・子どもが25〜59歳の間、毎月積み立てる
・NISAの枠を超えた分は子どもの課税口座にて投資
運用利回り ・年4%で一定。分配金なし
・年7%の結果は参考として計算
親の取り崩し ・60歳から亡くなるまで、毎年「年間投資額」と同じ額
・親の特定口座→親のNISAの順に取り崩し
・親の資産が尽きたら子どもの資産から支払う
親が亡くなる年齢 ・80〜95歳
・親のNISAの資産は亡くなった日の時価を取得価額として、親の特定口座の資産は取得価額を引き継いで、子どもの課税口座に移る
相続税 ・親が亡くなったときのNISAと特定口座の時価の合計にかかる
・相続人は子ども1人(基礎控除3600万円)
・今の税率で計算し、税は子どもが相続した資産を売って納める
評価の時点 ・子どもが65〜85歳で全資産を一括売却した時点(相続税を考慮するパターン)
・親が亡くなる直前(亡くなる年の年初)に親子とも全資産を売却した時点(相続税を考慮しないパターン)
税率 ・課税口座の売却益に20.315%

結果は、「こどもNISA優先」と「親NISA優先」のそれぞれについて、ある一定時点で資産をすべて売却した場合を考え、相続税や売却益にかかる税金を払った後の、親と子どもの資産の合計を比較しました。

あわせて、相続の影響を考慮しない比較として、親が亡くなる直前に親子とも全資産を売却した時点の税引後の世帯資産での比較もしました。

取り崩し額を年間投資額と同じにしているので、親が亡くなる時点では基本的に資産が残る設定といえます。

結論:判断の目安

シミュレーションの結果は複雑なので、先に得られた結果をまとめます。

まず、結果を大きく分けるのは、「どの時点までを考えるか」です。

親が亡くなった後も子どもが運用を続けることまで考えると、こどもNISAを優先するほうが有利になりやすくなります。一方、相続の直前までで比べると、親が自分の枠を埋められない家庭では親のNISAを優先したほうが有利です。

相続を経て子どもが運用を続ける場合には、①親の財産に相続税がかかるか、②相続した後に子どもが何年持ち続けるか、③子どもが将来自分でNISAの枠を埋めるほど投資するか、④親が自分の枠を早めに埋められるか、⑤開始時点で子どもが何歳かの5つがとくに大きな決定因子です。

考える前提 家庭の状況 有利になりやすい方法
相続を経て
子どもが運用継続
親が亡くなるときの財産が、相続税の基礎控除を大きく超える こどもNISA優先
子どもが相続した後、20年以上持ち続ける こどもNISA優先
子どもが将来、自分でNISAの枠を埋めるほどは投資しない(年30万円程度まで) こどもNISA優先
親が自分のNISAの枠を早めに埋められる家庭で、開始時の子どもの年齢が0〜5歳 こどもNISA優先
以下をすべて満たす
・親の財産に相続税がかからない
・親が自分のNISAの枠を埋められない
・子どもが将来自分の枠を埋める
・親が長生きして子どもが相続後すぐに売る
親NISA優先
相続の直前まで 親が自分のNISAの枠を埋められない家庭 親NISA優先
親が自分のNISAの枠を早めに埋められる家庭で、子どもが0〜5歳のうちに始める こどもNISA優先(差は大きくない)
親が自分のNISAの枠を早めに埋められる家庭で、子どもが10〜15歳から始める どちらでも差は小さい

相続を経ても子が運用を継続する場合:こどもNISA優先が有利な場合が多い

まず、親が亡くなった後も子どもが運用を続け、その後売却した時点で比べた結果を紹介します。この場合、親NISA優先が有利になるのは、相続税がかからないか少ない家庭で、いくつかの条件が重なったときに限られます。

こどもNISA優先が有利になる理由

有利・不利が決まる背景は大きく4つあります。

1つ目は「こどもNISAが親の非課税枠からあふれるお金の受け皿になる」効果です。親の投資額が多いと、親のNISAの枠に入りきらないお金は、課税口座に回ります。こどもNISAを先に使えば、そのあふれる分をこどもNISAで受け止められます。

2つ目は「こどもNISAに資金を入れておけば、相続と関係なく非課税が続く」効果です。親のNISAは、親が亡くなると非課税期間が終わり、子どもの課税口座に移ります。そのため、その後の値上がり益には課税されてしまいます。一方、当初からこどもNISAに入れた分は、子どものNISAで非課税のまま運用が続きます。

3つ目は、逆にこどもNISA優先には不利にはたらくものですが、「こどもNISAを使うと子ども自身の将来の非課税枠が減る」効果です。子どもが将来、自分で早く非課税枠を埋められるほど影響が大きくなります。

4つ目は「こどもNISAを利用すると親からの相続財産が減る」効果です。こどもNISAに入れたお金は運用益も含めて親の相続財産から外れるので、親の財産が相続税の基礎控除を超える家庭では、その分だけ相続税が減ります。

1つ目・2つ目・4つ目はこどもNISA優先に有利に、3つ目は親NISA優先に有利にはたらきます。優劣は各家庭において、どの効果が強く作用するかで決まります。

なお、1つ目と3つ目は親が生きている間に生じる効果であり、2つ目と4つ目は相続を経て初めて差になる部分です。詳しくは後述しますが、この違いが相続の直前までで比べた場合と結果が変わる理由になっています。

親の財産に相続税がかかりそうなら、こどもNISA優先

親のNISAを優先した場合の親の財産が、相続税の基礎控除(相続人が子ども1人なら3600万円)を超えると、前述の4つ目の効果(相続財産が減る)があらわれます。

たとえば、親が35歳・子が5歳で親の年間投資額が60万円、子どもも将来年60万円を積み立てていく場合を考えてみましょう。親が95歳・子が65歳の時点で親が亡くなり、子どもがすぐに売ると、相続税を考えなければ親のNISAを優先したほうが約100万円有利です。

しかし、親のNISAを優先した場合には親の財産が7370万円になり、多額の相続税がかかります。一方で、こどもNISAを優先した場合には、親の財産は2141万円にまで圧縮されるため、相続税を含めるとこどもNISA優先のほうが455万円有利になるという結果になりました。

前述した条件の範囲で試算したところでは、親NISA優先が有利になる例は、相続税が250万円程度に収まる場合のみでした。

ただし、数十年先にはインフレが進んでいる可能性があり、そのときには相続税の基礎控除が変更されている可能性もあります。仮に基礎控除や税率の区分が年2%ずつ引き上げられると、運用リターンが年4%の場合には、相続税を考えない場合に近い結果になりました。

なお、相続税がかかるかどうかは不動産なども含めた親の財産全体で決まるので、ほかの財産がある家庭は金融資産が少なくても相続税がかかりやすくなります。

子どもが相続後に長く持つなら、こどもNISA優先

相続後に持つ期間が長いほど、相続した親のNISAの資産の値上がり益にかかる税が増えていきます。これにより、2つ目の効果(相続を経ても非課税が続く)が大きくなります。

今回試算した範囲では、相続後20年以上運用する場合はこどもNISA優先が有利でした。

子どもが将来、自身のNISAの枠を埋めきれないなら、こどもNISA優先

子どもが将来、自分でNISAの枠を埋めるほど投資しなければ、3つ目の効果(子どもの非課税枠が減る)の影響は小さくなります。たとえば年間投資額が30万円であれば、35年間積み立てても、こどもNISAの600万円と合わせて投資金額は1650万円です。成人後に親から贈与を受けなければ1800万円の枠に収まります。

今回の試算では、子どもの年間投資額が30万円なら、こどもNISAを優先したほうが基本的には有利でした。

なお、①相続税がかからず、②親が自分の枠を埋められない家庭で、③子どもが相続後にすぐに売る場合は、どちらの方法でも税金がかからないので、差は生じません。

親が自分の枠を早めに埋め、子どもが小さいうちに始めるなら、こどもNISA優先

親の年間投資額が多い家庭(目安として年120万円以上)では、1つ目に挙げた効果(親の非課税投資の受け皿になる)が強くはたらきます。

たとえば、親が35歳・子が5歳で年間投資額120万円の家庭では、最終的にこどもNISAに入る金額はこどもNISA優先なら600万円ですが、親NISA優先では60万円にとどまります。

子どもが0〜5歳のうちに始める場合は、相続後すぐに売るときも含めて、今回試算した範囲では例外なくこどもNISA優先が有利で、数百万円以上の差になりました。

大きな差になるのは、このような家庭は親の老後の財産が大きくなりやすく、4つ目の相続税の効果も加わるためです。

親の財産に相続税がかからず、子どもが自分の枠を埋めるなら、親NISA優先が有利になり得る

親NISA優先が有利になるのは、1つ目・2つ目・4つ目の効果がいずれも弱く、3つ目の効果(子どもの非課税枠が減る)が上回る場合です。今回の試算で親NISA優先が有利になったのは、次の条件が重なったときでした。

  • 親の財産にかかる相続税が250万円程度まで
  • 親の年間投資額が30万~60万円程度で、親のNISAの枠が埋まらない
  • 子どもが将来、自分でNISAの枠を埋めるほど投資できる
  • 親が長生きして、子どもが相続した後、比較的短期間で売る(子どもの投資額が年180万円超で相続後の運用期間が10~15年程度、あるいは年90万円程度で運用期間が5年程度)

親NISA優先が有利な場合も、差は最大240万円程度です。

子どもの年齢が高いと、どちらにせよ差は小さくなる

根本的な話ですが、たとえば2027年に子どもが15歳の場合には、こどもNISAに入れられるのは17歳までの3年間で最大180万円です。

このようにそもそもの上限が低くなる場合には、上述の4つの効果はすべて小さくなります。つまり、どちらを選んでも差は小さくなります。

それでもこどもNISA優先が有利になることが多いです。

親が老後に資産を多く使うと、こどもNISA優先のメリットが小さくなる

取り崩し額を増やすと、親が亡くなったときの財産が減るので、相続に関する2つ目と4つ目の効果が弱まり、こどもNISA優先のメリットは一般に小さくなります。

たとえば、親が35歳・子が5歳で年間投資額60万円の家庭(子どもの年間投資額60万円、親90歳で死亡・子75歳で売却という条件)では、取り崩しが年60万円ならこどもNISA優先のほうが1084万円有利になります。

しかし、取り崩しが年90万円になると655万円、年150万円では235万円、年180万円では1万円となりどんどん差は縮小します。

また、相続税による影響が大きい場合には、取り崩しを増やすと親NISA優先が数百万円程度、有利に逆転することがあります。

ただし、親の資産が尽きて子どもが仕送りをするようになると、事情が変わります。今回の試算では、仕送りは子どもの課税口座から先に出すことにしているので、子どもの課税口座での積立が仕送りに使われ、こどもNISAに入れたお金は子どものNISAで非課税のまま残ります。

これにより、子どもの投資額が大きい家庭では、取り崩しを増やすとこどもNISA優先のメリットがかえって大きくなる場合がありました。ただし、このあたりは複雑すぎるうえに見通せない要素が多すぎるので、あくまで参考程度のものでしょう。

利回りが高いほど、こどもNISA優先が有利

試算では利回りを年4%としましたが、年7%で計算すると、今回試算した条件の範囲では、こどもNISA優先が有利になりました。

長く複利効果があるぶん、利回りが高いほど相続に関する2つ目と4つ目の効果が大きくなるからです。

有利・不利が入れ替わる境界と相続税の具体的な影響

ここまでに挙げたように、こどもNISAと親のNISAのどちらを優先するほうが有利であるかを決める因子は多く、すべての場合を紹介するのは困難です。

そこで、まずはこどもNISAを優先しても、親のNISAを優先しても大差がなくなる条件と具体例を見てみます。

有利・不利が入れ替わる境界

差がほとんどなくなるのは、次の4つのパターンです。

  • ①どちらの方法でも税金がかからない:相続税がかからず、親も子どもも自分の枠を埋めない家庭で、子どもが相続後すぐに売る場合
  • ②こどもNISAが親の非課税投資の受け皿になる効果(前述の1つ目の効果)と子どもの非課税枠が減る効果(3つ目の効果)がつり合う:相続税がかからず、親が自分の枠を埋められる家庭で、子どもが相続後すぐに売る場合
  • ③相続を経ても非課税が続く効果(2つ目の効果)と子どもの非課税枠が減る効果(3つ目の効果)がつり合う:相続税がかからず、親が自分の枠を埋められない家庭で、子どもの投資額に見合った年数だけ相続後に持つ場合
  • ④ ③の効果に加えて相続財産が減る効果(4つ目の効果)が加わってつり合う:親の財産にわずかに相続税がかかる場合

前述したように相続税の影響は大きく、①~③は相続税がかからないもの、④は少額の相続税がかかるものという見方ができます。

具体的な条件で代表的なパターンを提示してみます。

なお、以降の表はプラスの値になれば「こどもNISA優先」がそのぶん有利、マイナスの値になれば「親NISA優先」がそのぶん有利という意味になります。右4列の数字の単位は「万円」です。

パターン 親子の年齢
(2027年)
親の年間
投資額
子どもの
年間投資額
親の死亡年齢と
子どもの売却年齢
(相続後の運用年数)
こどもNISA優先と
親NISA優先の差額
親が亡くなった
ときの財産
(親NISA優先)
相続税(親
NISA優先)
① 親40歳・子10歳 30万円 30万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
0万円 2081万円 0万円
① 親45歳・子15歳 60万円 30万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
0万円 1526万円 0万円
② 親45歳・子15歳 120万円 60万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-2.7万円 1791万円 0万円
② 親45歳・子15歳 180万円 90万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-4.5万円 743万円 0万円
③ 親40歳・子10歳 30万円 90万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
+0.5万円 1850万円 0万円
③ 親40歳・子10歳 60万円 180万円 親85歳で死亡
子65歳で売却(10年)
-1.3万円 3318万円 0万円
③ 親40歳・子10歳 30万円 180万円 親85歳で死亡
子65歳で売却(10年)
+3.7万円 1659万円 0万円
③ 親45歳・子15歳 60万円 360万円 親80歳で死亡
子65歳で売却(15年)
-0.2万円 1541万円 0万円
④ 親40歳・子10歳 60万円 90万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
+0.2万円 3699万円 10万円
④ 親35歳・子5歳 30万円 180万円 親95歳で死亡
子75歳で売却(10年)
+7.7万円 3685万円 9万円
④ 親30歳・子0歳 30万円 360万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
-8.0万円 4772万円 126万円

これらの具体例がいわば損益分岐点に当たります。ここから概ね条件が偏ると、以下の方向に結果が傾きやすくなります。

  • こどもNISA優先に傾く:親が亡くなるときの財産が多い、利回りが高い(相続税がかかる)、親の年間投資額が多い(自分の枠を早めに埋められる)、子どもが相続後に持つ年数が長い(子どもの課税口座での利益が大きくなる)
  • 親NISA優先に傾く:子どもの将来の投資額が大きい、親の取り崩し額が大きい(例外はあるものの、相続税の効果で有利になっていた家庭では逆転することもある)
  • 子どもが小さいうちに始めるほど、こどもNISAに入るお金が増えるので、どちらに振れる場合も差が大きくなりやすい

さて、上記の項目のうち、子どもの年間投資額、親の死亡年齢と子どもの売却年齢は現時点では想定がとくに難しい項目ですよね。

これがどれくらいの差を生み出すかのイメージを持てないと決定が難しくなってしまいます。そこで、相続税がかかる例とかからない例で、これらを動かしたシミュレーションを行いました。

相続税がかかる家庭の場合

先に、相続税がかかる家庭(親35歳・子5歳で開始、親の年間投資額60万円(親のNISAの既存額180万円)、運用利回り4%)の場合を見てみましょう。

親が亡くなったときの財産と、その場合の相続税は親の死亡時期によって以下のように異なります。

親80歳で死亡 親85歳で死亡 親90歳で死亡 親95歳で死亡
こどもNISA
優先
親が亡くなった
ときの財産
1882万円 1952万円 2037万円 2141万円
相続税額 0万円 0万円 0万円 0万円
親NISA
優先
親が亡くなった
ときの財産
4786万円 5485万円 6336万円 7370万円
相続税額 128万円 233万円 360万円 554万円

年間60万円の取り崩しは行っていますが、運用による収益のほうが大きいので、親が長生きすればするほど運用資産は膨らんでいきます。

なお、親の財産はこどもNISA優先のほうが少なくなっていますが、この差額の多くはこどもNISAに600万円を入れたことによる影響です。子どもが運用を続けていれば、逆に子どもは相当する資産を持っていることになります。

子どもの年間投資額、子どもの売却年齢、親の死亡年齢で表を作ってみると、結果は以下のようになりました。プラスの場合はこどもNISA優先が有利、マイナスの場合は親NISA優先が有利です。

子どもの年間投資額 子どもの売却年齢 親80歳で死亡 親85歳で死亡 親90歳で死亡 親95歳で死亡
30万円 65歳 +682万円 +667万円 +612万円 +554万円
75歳 +1280万円 +1309万円 +1290万円 +1276万円
85歳 +2166万円 +2259万円 +2293万円 +2345万円
60万円 65歳 +583万円 +567万円 +512万円 +455万円
75歳 +1075万円 +1103万円 +1084万円 +1071万円
85歳 +1803万円 +1896万円 +1931万円 +1984万円
90万円 65歳 +498万円 +483万円 +429万円 +370万円
75歳 +950万円 +979万円 +962万円 +950万円
85歳 +1619万円 +1714万円 +1751万円 +1807万円
180万円 65歳 +383万円 +369万円 +314万円 +253万円
75歳 +780万円 +812万円 +796万円 +785万円
85歳 +1368万円 +1469万円 +1511万円 +1573万円
360万円 65歳 +310万円 +296万円 +241万円 +178万円
75歳 +674万円 +708万円 +693万円 +682万円
85歳 +1213万円 +1317万円 +1363万円 +1428万円

相続税の負担が大きく、すべての場合でこどもNISA優先が有利になりました。とくに、子どもの年間投資額が少なく、子どもの売却年齢が高い(運用年数が長い)ほど差が大きくなります。

相続税がかからない家庭の場合

次に、相続税がかからない家庭(親40歳・子10歳で開始、親の年間投資額30万円(親のNISAの既存額90万円)、運用利回り4%)の場合を見てみましょう。

親が亡くなったときの財産と、その場合の相続税は以下のようになります。

親80歳で死亡 親85歳で死亡 親90歳で死亡 親95歳で死亡
こどもNISA
優先
親が亡くなった
ときの財産
512万円 454万円 383万円 297万円
相続税額 0万円 0万円 0万円 0万円
親NISA
優先
親が亡くなった
ときの財産
1503万円 1659万円 1850万円 2081万円
相続税額 0万円 0万円 0万円 0万円

子どもの年間投資額、子どもの売却年齢、親の死亡年齢で表を作ってみると、結果は以下のようになりました。プラスの場合はこどもNISA優先が有利、マイナスの場合は親NISA優先が有利です。

子どもの年間投資額 子どもの売却年齢 親80歳で死亡 親85歳で死亡 親90歳で死亡 親95歳で死亡
30万円 65歳 +161万円 +118万円 +65万円 0万円
75歳 +335万円 +292万円 +239万円 +174万円
85歳 +593万円 +549万円 +496万円 +432万円
60万円 65歳 +132万円 +88万円 +35万円 -30万円
75歳 +268万円 +225万円 +171万円 +107万円
85歳 +470万円 +427万円 +373万円 +309万円
90万円 65歳 +97万円 +54万円 0万円 -64万円
75歳 +217万円 +173万円 +120万円 +56万円
85歳 +394万円 +351万円 +298万円 +233万円
180万円 65歳 +47万円 +4万円 -49万円 -114万円
75歳 +143万円 +100万円 +47万円 -18万円
85歳 +285万円 +242万円 +189万円 +124万円
360万円 65歳 +15万円 -29万円 -82万円 -146万円
75歳 +95万円 +51万円 -2万円 -66万円
85歳 +214万円 +170万円 +117万円 +53万円

このように、相続税がかからない家庭でもこどもNISA優先が有利になるパターンが多いものの、差は最大でも数百万円にとどまります。子どもの年間投資額が大きく、親の死亡年齢が高く、さらに子どもの売却年齢が低い例では、親NISA優先が有利になることもあります。

具体例といくら有利であるか

最後に、具体例を紹介します。条件と差額の程度をイメージする参考に利用していただければと思います。

こどもNISA優先が有利な例

こどもNISAが有利になる具体例は以下のような場合です。最も右の列はこどもNISA優先の場合と親のNISA優先の場合に、子どもの最終的な売却時にどれくらいの差額が出るかを計算したもので、ここまでの表と同様にプラスであればこどもNISA優先が有利という意味です。

親・子の年齢
(2027年)
親の年間
投資額
子どもの
年間投資額
親の死亡年齢と
子どもの売却年齢
(相続後の年数)
差額
親30歳・子0歳 30万円 60万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+722万円
90万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+94万円
60万円 60万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+1150万円
120万円 60万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+1042万円
親35歳・子5歳 30万円 30万円 親80歳で死亡
子85歳で売却(35年)
+1070万円
60万円 60万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+1103万円
親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+455万円
180万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
+314万円
360万円 親80歳で死亡
子85歳で売却(35年)
+1213万円
親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+178万円
120万円 60万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+863万円
親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+443万円
180万円 90万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+746万円
180万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+1371万円
親40歳・子10歳 30万円 90万円 親80歳で死亡
子75歳で売却(25年)
+217万円
60万円 60万円 親85歳で死亡
子85歳で売却(30年)
+824万円
180万円 親95歳で死亡
子75歳で売却(10年)
+31万円
120万円 90万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+322万円
180万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
+70万円
180万円 90万円 親90歳で死亡
子75歳で売却(15年)
+592万円
親45歳・子15歳 30万円 30万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+99万円
60万円 90万円 親80歳で死亡
子85歳で売却(35年)
+255万円
120万円 60万円 親85歳で死亡
子75歳で売却(20年)
+84万円
180万円 60万円 親80歳で死亡
子75歳で売却(25年)
+122万円

親NISA優先が有利な例

一方、親NISA優先が有利な具体例は以下のようなものがあります。

親・子の年齢
(2027年)
親の年間
投資額
子どもの
年間投資額
親の死亡年齢と
子どもの売却年齢
(相続後の年数)
差額
親35歳・子5歳 30万円 180万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-181万円
360万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
-124万円
親40歳・子10歳 30万円 60万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-30万円
180万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
-49万円
360万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-146万円
親95歳で死亡
子75歳で売却(10年)
-66万円
60万円 90万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-84万円
360万円 親85歳で死亡
子65歳で売却(10年)
-63万円
親45歳・子15歳 30万円 180万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-42万円
360万円 親90歳で死亡
子75歳で売却(15年)
-8万円
60万円 90万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-47万円
180万円 親95歳で死亡
子75歳で売却(10年)
-25万円
360万円 親90歳で死亡
子65歳で売却(5年)
-66万円
120万円 180万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-13万円
180万円 90万円 親95歳で死亡
子65歳で売却(0年)
-4万円

相続を経る場合、親NISA優先が有利になる条件は、子どもが売る時期などが少しずれるだけで崩れやすいものです。

相続の直前までを考慮した場合:親が自身の枠を埋められない家庭では親のNISA優先

ここまでの結果は、親が亡くなった後も子どもが運用を続け、最後に売却した時点で比べたものでした。ここでは、相続の影響を除き、親が亡くなる直前までに生じた損得だけで比べるとどうなるかを見ていきます。

相続の直前までで比べると、なぜ結果が変わるのか

ポイントは、親が生きている間は、親のNISAもこどもNISAも、売るときに税金がかからない点では同じだということです。お金を親のNISAとこどもNISAのどちらに入れても、親が生きているうちに売るなら、それだけで損得は生じません。

差が出るのは、NISAに入りきらずに課税口座に回るお金の違いだけで、前述の1つ目の効果(親の非課税枠からあふれるお金の受け皿)と3つ目の効果(子どもが自身で埋める非課税枠が減ること)によるものです。

親が亡くなる直前に親子とも全資産を売却した場合の試算

そこで、親が亡くなる直前(亡くなる年の年初)に、親子とも全資産を売却したと仮定して、その時点の税引後の世帯資産を比べました。実際にその時点で売る必要はありませんが、相続の影響を除いた「生前の損得」を測る方法です。

開始時に親が35歳・子が5歳で、親が90歳で亡くなる直前に親子とも全売却した場合の試算で、その後の相続を考慮しない点を除いて、その他の前提はこれまでと同じです。

ここまでと同様に、プラスであればこどもNISA優先が有利、マイナスであれば親NISA優先が有利です。

親の年間
投資額
子どもの
年間投資額
30万円
子どもの
年間投資額60万円
子どもの
年間投資額90万円
子どもの
年間投資額180万円
子どもの
年間投資額360万円
180万円 +163万円 +162万円 +155万円 +144万円 +138万円
120万円 +25万円 +4万円 +6万円 +13万円 +6万円
60万円 0万円 -60万円 -129万円 -226万円 -287万円
30万円 0万円 -31万円 -77万円 -142万円 -184万円

親が自分の枠を埋められない家庭(表の親の年間投資額年30万〜60万円)では、こどもNISA優先が有利になる例はありませんでした。子どもが将来自分の枠を埋めるほど投資する(子どもの年間投資額60万円以上)なら、親NISA優先が有利になり、その差は最大380万円程度です。

これは、親の非課税枠からあふれるお金がほとんどなく、親子のNISAともに運用益に課税されないので、つまりは特定口座における課税の影響があらわれています。特定口座を利用する場合、時間が経てば経つほど値上がり益が大きくなるので、通常は親が長生きすれば差は広がります。

つまり、相続を考慮しない場合は「親が今後、自分のNISAを埋められる見込みがあるならこどもNISAを優先利用し、そうでなければこどもNISAは利用せず、親のNISAに注力する」という行動が妥当でしょう。

注意したいのは、親が老後に自分の資産を使い切る家庭でも、親が亡くなった後も子どもが自分の資産を持ち続けるなら、相続の直前までの結果は当てはまらないことです。これは、こどもNISAに入れたお金は、子どものNISAで非課税のまま運用が続くからです。

いろいろな仮定を置いているシミュレーションではありますが、相続が生じる場合の結果を参考にするほうがまだ現実に即しています。

そうなると、税金の損得だけで比べれば、こどもNISA優先が不利になる条件は少なく、こどもNISAを優先して利用したほうがよい家庭が直観よりも多いといえます。

この場合に親NISA優先が有利になるのは、親の財産に相続税がかからないうえで、親が自分のNISAの枠を埋められない、子どもが将来自分で枠を埋めるほど投資する、子どもが相続後すぐに売る、といった条件が重なるときに限られます。

とくに、親の財産に相続税がかかりそうな家庭では、こどもNISAを利用したほうがほぼ有利で、その差は無視できない規模になることも多いです。こどもNISA優先の大きな有利さは、親のNISAのまま相続すると不利になることから生まれています。

ただし、こどもNISAに入れた資金は親の老後資金に使えない、子どもの教育費・生活費以外に引き出せない、子どもが安易に使ってしまうかもしれないなどのデメリットは、いずれもこどもNISAを使うことで生じるものです。シミュレーションで示した税制上のメリットの金額だけでなく、このような点もあわせて考えて決める必要があります。

なお、わが家は、親のNISAとこどもNISAの両方を最速で埋めていく方針です。

どれくらいの金額になるかはわかりませんが、私は将来的に一定の資産を次の世代に引き継ぐことになると考えているので、相続を経て子どもが運用を続ける場合の結果が当てはまります。また、現時点では親の老後資金が不足する可能性は低く、こどもNISAのデメリットが問題になる可能性は低いと考えています。

子どもに大きなお金を渡すことについても、将来の相続のときに全額が渡るか、先に一部が渡るかの違いです。極端なことをいえば、もし子どもが全額をすぐに使ってしまっても、困るのは本人であって私ではありません。資産をどのように育て、活用していくのかを、子どもと一緒に考えるきっかけにしたいと思います。

なお、今回のシミュレーションはすべて、新たな投資資金をこどもNISAに入れるか、親のNISAに入れるかを検討しました。親の特定口座にある資産を売却してこどもNISAに入れた場合については検討していませんが、以前に「特定口座の資産を売却してNISAに移すか」を検討しています。

こどもNISAに特化した内容ではないものの、基本的な考え方は同じです。特定口座の資産(とくに含み益が少ない資産)を売却し、こどもNISAに移すほうが良い結果になると考えられます。

◆特定口座の投資信託を売却してNISAに移すべきかを検討した記事です。

特定口座の投資信託を売却して新NISAに移すべきか(2)投資する金額が1800万円以上の場合
この記事では、現在特定口座で投資信託を持っている人が、2024年から始まる「新しいNISA」(新NISA)の枠をどう使っていくのがよいのかの検討結果をまとめています。全2回に分け、...

※本記事の制度に関する記述は2026年10月時点の情報に基づいています。制度は今後改正される可能性があることにはご留意ください。

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