富士通 45歳でリストラ事件と人生のオプション

190330富士通 45歳でリストラ事件と人生のオプション 仕事観
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なまずんです。

総合エレクトロニクスメーカーの富士通が45歳以上の全社員を対象とする割増給付金付き早期退職を募集したニュースと目撃した一連の反響について,私が感じたことをまとめました。

[スクープ]独自入手、富士通の4月機構改革と人事異動の骨子
富士通は近日中に発表する4月1日付の組織改編と人事異動について、このほど社内に通達した。複数の富士通関係者によれば、4月1日付の組織・人事の骨子は次の3点である。
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自己責任論への違和感と危機感

本件について私が心配に思うのは,「早期退職を迫られて困る人は,自己責任」との論が散見されたことです。人生において転職を想定せず,自身の能力と実績を主体的に築いてこなかった人が悪いという論理です。それだけでなく,「無能な人間は排除されて当然」といった極端な主張までが視界に飛び込んできたときは驚きました。

私は斜陽産業と言われる出版業界で働いていますので,例え転職したくなくてもジョブチェンジを迫られる可能性は他の業界より大きいです。そういった事態に備え,自分の市場価値を上げる重要性は痛感しています。

だからこそ違和感を持つのかもしれません。「転職市場における自分の市場価値を高められなかった本人が悪い」。努力できる人の「強者の論理」が強すぎやしないかと危機感を覚えます。

市場価値は他者との比較で決まる

さて,そういった強者の論理を唱える人の拠り所は,「若い頃から,社会で必要とされる優れた能力開発に努め,実績を残せ」というものです。

社会で生きていく上では一定の役割を果たす必要があります。主張は明快かつ重要で,主張そのものに対しては私も異論はありません。

しかし,リストラや転職に話題を限定した場合,少し注意が必要と思います。重要なのは「他者よりも」優れた能力・実績があるかどうか。雇用先のポストには座席数があるため,自分の実力を単に伸ばすだけでは,市場における自分の価値は高まりません。市場価値は他者との比較で決まる要素が大きいからです。努力していたとしても,さらに努力家で才能がある人がいればかないません。

構造は高校・大学などの入学試験と似ています。ライバル全員が勉強に打ち込む環境では,自分が努力を重ねて学力を積み重ねても,他者との比較で決まる偏差値は一向に上がらない経験をした方は少なくはないでしょう。

努力不足だけを根拠にした主張はこの視点が抜けています。もちろん,他者より優れた能力・実績をめざす気概は必要と私も考えますが,それだけで話を押し通す態度は私には少し乱暴に映ります。

自己投資できる環境が全員にそろっているわけではない

自ら転職を希望する状況にない人は,「転職したときの自分の市場価値」を念頭に置きながら日々の仕事をするほうが珍しいです。

しかも,それは意識が低い人だけでなく,努力したい意思はあっても,多くの時間や労力をつぎ込むのが難しい事情を抱える人もいます。例えば,育児や介護に時間を費やしながら働くなどの環境要因,持病・障害を抱えるなどの健康要因も多いはずです。

恵まれた環境に守られながら高みに登った強者には,社会には弱者が存在することすら見えなくなって自己責任論に走るのかもしれません。

そもそも,希望に逆らって退職しなければならない状況に至ったときに,最も責められるべきは経営者であり,労働者ではありません。しかし,そんな状況に至った経営責任を追及するには職場の団結力を保たなければなりません。そのためには個人の枠組みを超え,職場の労働者が団結して立場を守る姿勢が必要です。

自己責任論の台頭はその団結を分断するものとなるでしょう。「企業に求められる人材になれ」と自己責任をうたう張本人を含めて,結果的に労働者の立場を弱めていくのではないかと危惧します。

小さな実績を積み重ねる

以上で「強者の論理」への批判は終了です。現実的には,個々人が何も対策なく過ごしては,実際に転職を迫られたときに自分が困るのは目に見えています。誰であれ,途方に暮れない程度に,何らかのオプションは想定する必要があるでしょう。

取るべき自己防衛策で必要なのは,①小さくても何らかの実績を残すこと,②希少性の高い資格や能力を持つことです。また,③労働以外の収入源を持つ選択肢も有力と思います。

私も,いざ勤務先が今後10年ほどの間に破綻した場合のオプションと,それらの「強さ」の展望を漠然と予測しています。

  • 業界の有力媒体を担当し,特集を定期的に組んだ経験
    →同業他社への転職
  • 保有する薬剤師国家資格
    →薬剤師として人生再スタート
  • 地元に帰る
    →家業を継ぐ
  • 投資
    →成果が出ていると願いたい

この中で,「薬剤師」と「地元に帰る」のオプションは今がピークで,歳を重ねるにつれてパワーを失っていきます。時を経るにしたがって,必要な能力や人脈が失われていくからです。冒頭の記事で話題になった「45歳」時点ではほぼ無力なオプションかもしれません。

一方,本業の経験と投資は基本的にパワーを増していきます。圧倒的な実績を残すことは難しくても,一つひとつの業務でなるべく改善点を見つけ,業界における知見と実績,人脈を少しずつでも重ねる気概は持ち続けたいと思います。投資は予測しかねる部分も多いものの,将来的には生活を支える資金の一部になることを願っています。今できる範囲で,投資資金を積み増す選択を心掛けています。

「自己責任」を否定することは必ずしも個人の努力を拒否するものではなく,むしろ個人の能動的な取り組みは不確実性が増す社会ではますます重要視されるでしょう。過激な自己責任論とは距離を置きつつも,自分にできることにはしっかり向き合い,人生のオプションを検討しておく程度にはぜひ,準備したいものです。

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