インデックスファンドにおけるレンディングの仕組みを聞きました(2023年5月31日三菱UFJ国際投信ブロガーミーティング)

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2023年5月31日に、三菱UFJ国際投信の社内とオンラインでハイブリッド開催されたブロガーミーティングに現地参加してきました。そのうち公式から当日の模様が公開されると思いますが、この記事ではおもな内容と、現地で聞いた話を少しだけ加えて書いていきたいと思います。

「ブロガーミーティング」という名称ですが、ブロガーでなくても参加可能です。三菱UFJ国際投信はこのような個人投資家向けの発信に積極的で、個人投資家を大切にする姿勢が伝わってきます。

現地参加は私を含めて8人、オンラインも含めると176人が参加したそうです。終わったあとの交流会以外は、オンラインでも視聴できるのがいいですね。

プログラムは以下の3部構成でした。

1.開会の挨拶及び「eMAXIS Slimシリーズ」の基本理念について
2.【解説】有価証券の貸付(レンディング)とは?
3.Q&A

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eMAXIS Slimの基本理念は今後も変わらないとのメッセージ

1つ目のプログラムは、eMAXIS Slimシリーズの基本理念にかかわるもので、三菱UFJ国際投信常務取締役の代田秀雄さんによる話。

これは、4月13日に三菱UFJ国際投信から出されたプレスリリース「『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』シリーズの基本理念について」を補足する内容という位置づけで、結論からいえば、「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」というコンセプトは今後も維持していくという宣言でした。

この背景には、4月に運用が始まった日興アセットマネジメントの「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」が、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の約半分の信託報酬率で登場したことがあります。

これまで、他社の同種ファンドが信託報酬を引き下げたときは、間髪入れず「eMAXIS Slim」シリーズも同水準に信託報酬を下げてきましたが、現時点ではそのような対応をしない方針が示されています。

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4月13日に出た「eMAXIS Slim」シリーズの理念に関するプレスリリースの要点は、①運用コストは、信託報酬だけを比較するのではなく、信託報酬以外のものも含めた運用コスト全体で判断すべき、②ファンドの信託報酬になにを含むかはファンドによって異なり、ファンドの計理業務(基準価額の計算など)、目論見書や運用報告書の作成費用、指数の商標使用料(ライセンスフィー)などがあらかじめ入っているものと、別途ファンドに負担させるものがある、ということです。

要するに、「Tracers」では②の費用は信託報酬のほかにかかってくる費用であるのに対して、「eMAXIS Slim」では信託報酬の中にあらかじめ入っているので、単純に信託報酬だけで比べるのは公平な比較ではないということですね。

代田さんの説明では例え話として、オンラインショッピングで送料別の商品価格と送料込の商品価格を単純に比較することはできないのと一緒だといった説明がありました。

重要なことは全体の運用コストなので、それを比較していくことが大事だと私も思います。この点は終了後にも代田さんが本編にも増してなかなかの剣幕で語っていました(笑)。

「Tracers」が発表された直後には、信託報酬に含まれる内容が異なっているという情報が、三菱UFJ国際投信の取材協力も得てかなりの数のメディアで報道されていましたが、三菱UFJ国際投信としてはそういった適切な情報発信への協力にも力を入れているそうです。

なお。信託報酬以外のコストは運用後にわかるものが多いことから、今後「Tracers」の運用報告書が出て信託報酬以外のコストが判明し、総経費率の比較などから「eMAXIS Slim」が明らかに高コストになっている場合には「最低水準の運用コスト」の理念の維持をめざす検討がなされると考えてよいとのことでした。

つみたてNISAの開始に先立って登場した「eMAXIS Slim」シリーズは、「投資家がつみたてNISAの非課税投資期間である20年以上にわたって付き合えるファンドをめざしている」という言葉もあり、投資家の安心を大切にする姿勢を見せてくれています。

ただ、信託報酬外の費用は必ずしもファンドに負担させずに運用会社が負担することもできるそうで、「Tracers」に限らず他社がそういった作戦を取ってきた場合はどうするのかということになりますね。もっとも、そのような費用を長期にわたって運用会社が負担し続けるのは現実的ではないようですが。

このように、「eMAXIS Slim」シリーズが「他社のコストに合わせる」ことを強く意識し、宣言していることには保有者の1人としては安心感がありました。

しかし、すでに「eMAXIS Slim」シリーズが業界のデファクトスタンダードになってきていますから、個人的には少しでもそれ以上のところ(業界最低を率先して更新していくこと)もめざしてほしいと期待しています。

有価証券の貸付(レンディング)による効果はコスト分をいくらか取り返すくらい

続いてのプログラムは有価証券の貸付(レンディング)に関するテーマでした。こちらは4月25日のプレスリリースで、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」などがレンディングを開始したことに合わせたテーマでしょう。

レンディングとは、ファンドが保有している現物株を証券会社などに貸し出し、その賃借料(品貸料)を得るという仕組みです。証券会社が株を借りる理由は、その背景に株を空売りしたいなどといった投資家がいるためです。すなわちそのような投資家が負担するコストの一部が品貸料としてファンドに入ってくることになります。

ただし、品貸料のすべてがファンドに入ってくるわけではなく、55%は委託会社・受託会社が報酬として受け取り、ファンドの収益となるのは45%です。この収益は基準価額に反映されていきます。

レンディングの方法には、貸出先とあらかじめ貸出枠や貸出料率を決めて契約しておくエクスクルーシブ方式と、貸出銘柄、貸出料率を都度決定するオンデマンド方式があります。

Q&Aでの説明も踏まえると、オンデマンド方式のほうが料率は高めですが、実際の契約形態はエクスクルーシブ方式のほうが多く、ファンドにとっての収益もエクスクルーシブ方式によるもののほうが大きいそうです。

ただし、100%以上の担保(現金や国債などの安全資産)を要することなどから、収入の絶対額としては小さく、「信託報酬によるマイナス分を多少カバーできる」程度の金額にとどまります。また、借り手がいないときは収入にならないため、レンディングによって得られるリターンは年によってもばらつきがあるとの説明でした。

なお、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」のようにファミリーファンド方式で運用している場合は、実際に株を買っているマザーファンドがレンディングを行っているので、ベビーファンド側には間接的なメリットがあるということになります。

担保があることから、レンディングによるリスクはかなり低いと考えてよいでしょう。収入としては多くないようですが、保有する資産を活用してコストを穴埋めしてくれるのはありがたいですね。具体的な金額は聞けませんでしたが、レンディングをすることにかかる人件費よりも多くを得ていることを期待したいです。

貸出中の株は売却できないことから、ファンドが保有する株を全部を貸し出すことはせず、解約や指数における銘柄の採否、会社の合併などによる影響が及ばないように注意して運用しているとのことでした。

インデックスファンドにも運用の苦労がある

本編はもちろんですが、Q&Aセッションもインデックス投資家にとっては気になる話題が満載でした。

銘柄選択をするアクティブファンドとは異なり、銘柄選択そのものは行わないインデックスファンドの運用はあまり注目を浴びる機会が少ないように思います。しかし、「単純に計算で求められている指数に、ファンドの実運用として連動する」という目的を達成するのは高度な技術が必要といえます。

この日に出てきた話題だけでも、購入・解約への対応、業界慣行や取引方法を含めた取引コストの削減、先物やレンディングによる指数追従性の追求などで、運用会社はかなりの努力をしていることがわかりました。

低コストで高品質なインデックスファンドを提供してくれる運用会社の皆さまにはあらためて感謝を申し上げます!

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