先日,フィデリティが毎年行っている「ビジネスパーソン1万人アンケート」の結果が公表されました。このなかでは投資に関する考え方や実践についても尋ねています。2020年の調査では,2010年の調査開始以来,初めて調査対象者に対する投資家の比率が40%を超えたことがいくつかのメディアでニュースになっています。
投資家は全年代で増えましたが,なかでも20代・30代投資家が大きく増加しています。また,投資情報の入手先も変化が見られ,SNSやブログなどの役割が増えています。
投資家比率は4割を突破し,若い人の上昇率が大きい
この調査は毎年,全国の20代~50代の会社員・公務員を対象に,1万人以上に行われています。
以下のグラフと表のとおり,「投資をしている」と回答した人の比率は2016年から4年連続で増加しました。2020年は40.5%と初めて40%を超えています(図表は「ビジネスパーソン1万人アンケート」より。以下同じ)。
年代別・性別に集計した表からは,男女とも20代・30代の比率が大きくなったことがわかります。全体では10.1%の伸びに対して,20代男性では12.3%,20代女性では11.5%,30代男性では16.1%,30代女性では12.9%の伸びと,平均の伸びより大きな増加がみられました。とくに30代男性では50%を超えました。
「投資をしている」と宣言をしていなくても,実は何らかの投資をしている人は多いということでしょう。
一方で,調査対象者の年収分布を見ると,今回は変化が見られていますので,注意が必要です。これまでは年収500万円未満の人が50~55%を占めていたのに対して,今回は35%でした。そのぶん高年収側に回答者がかたよっています。
このように調査対象者の母数が全人口を反映しているわけではないとありませんが,昨年までの傾向なども総合的に考えれば,若手投資家は増加傾向にあると言えそうです。
「長期・分散・積立」が有効であるとの考えが広まってきた
投資をしている人を対象に聞いた項目では,長期投資・分散投資・積立投資の3つが有効であると考える人が2018年から増加しています。
この3つは,2018年から始まったつみたてNISAの対象商品の要件として挙げられています(金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」より)。
つみたてNISAのの対象となる投資信託は,安定的な資産形成を目指す,長期・積立・分散投資に適した商品となるよう
- 販売手数料が0円(ノーロード)で,信託報酬も低い商品
- 頻繁に分配金が支払われない商品
などの法令上の条件が設けられています。
長期・分散・積立による資産形成は,資産は少ないものの運用期間が多く取れる若年世代には知っておいてほしいことです。また,長期投資・分散投資への理解が深まることで,年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの運用機関に関する見方も変わっていきますので,とても重要です。
また,どのような商品に投資しているかを尋ねている項目では,外国為替証拠金取引(FX)や毎月分配型投資信託といった長期での資産形成には適さない投資先を選ぶ人が徐々に減少しています。一方で毎月分配型ではない投資信託を保有する人が増加するなどの傾向がみられています。
まとまった資金がなくても投資ができることが広まってきた
調査では,投資をしていない人にはその理由を聞いています。以下のグラフのように,その理由にも近年は大きな変化が見られるようになりました。
明らかなのは「投資するだけのまとまった資金がないから」という選択肢を選ぶ人が減ったことです。100円などの少額から簡単に買えることなどが徐々に広まってきたのでしょう。
一方で,「何をすれば良いのかわからないから」「色々勉強しなければならないと思うから」という回答が徐々に増えていることは気になるところです。
確かに,資産形成の過程ではいろいろ判断しなければならない機会もあります。しかしそのような判断もそれほど難しくはありません。資産形成の目的ややり方,そして手をかけなくても実践できることを継続的に発信している人のスタンスをいろいろみて,自分にあった方法を見つけてみましょう。
資産形成を行ううえでSNS・ブログ・YouTubeなどの影響はますます大きくなる
お金に関する情報の入手先を聞いた設問の回答では,SNSが大きく伸びて9.2%に達しました。なかでも,20代では22.7%がSNSを情報の入手先として選びました。
また,資産形成を行ううえで影響を受けたものについて,2020年から「ブロガーまたはユーチューバーなど」という項目が新設されました。回答は表の通りで,全体では6.8%でした。
SNSの情報の特徴は消費者の一次情報である点です。また,商品のどのようなところを評価して購入したかなどがわかるところにも利点があります。
資産形成を行ううえでの影響についても,同じ消費者づての回答である「家族からの助言」「職場の同僚以外の友人からの助言」「職場の同僚の助言」に加えて,新たな情報の入手先になっているようです。
年齢別にみると20代・30代はSNSから情報を得たり,ブロガーやYouTuberに影響を受けたりする人の割合が高く,この傾向が続けばブログやYouTubeなどの消費者による発信の影響はより大きなものとなっていくと考えられます。
一方で,SNSやブログ,YouTubeなどによる個人からの情報発信には有用な点だけでなく注意すべきところもあります。情報が自分にとって役立つかどうかを,情報を受け取る側が自分で判断しなければなりません。発信者の実践にとっては有用でも,その情報を受け取る人にとって有用かどうかはまた別の話だからです。
置かれた状況や将来の目標が人によって異なるため,SNSやブログ,YouTubeなどを活用する際は,発信者に依存するのではなく,いろいろな人の考えや実践に触れて,自分に合った方法を見出していくのが良いでしょう。
20代・30代からの長期の資産形成を
調査結果からもわかるように,20代・30代から資産形成を考える人は確実に増えています。その手段として,長期・分散・積立投資に適したつみたてNISAや,長期での老後資金づくりに役立つiDeCoなどの制度もすでに整ってきました。ライフスタイルに合わせて,誰もが投資を始め,続けやすくなりました。
私も老後資金づくりを主目的に,手間をなるべくかけずに行えるインデックス投資を始めています。
「長期投資」については,運用期間が長ければ長いほど有利であり,時間がなければ難しい方法です。20代・30代のうちから始める人が増えている今,少しずつでも長期・分散・積立投資を始めていきましょう!
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