2025年2月3日、世界最大級の運用会社である米国のバンガード社が同社のETF・投資信託の信託報酬の大幅な引き下げを発表しました。
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経費率の引き下げは2月1日から。VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)などの経費率が下がります!
2/1にバンガードがETF・投信のコストを引き下げを発表!
VTは0.07%→0.06%に引き下げ。VTを保有する楽天VTやSBI・V・全世界株式も連動して保有コストが下がります。
他の人気ETFもVEA、VIG、VGT、VWO、VXUSなどが軒並み低コスト化、他にもVEAは0.06%→0.03%と半減。https://t.co/7SbibB1Ol4 pic.twitter.com/09W0ZM4qoH— なまずん🐟20代からインデックス投資をスタート🐟 (@gameoftheweak) February 5, 2025
VTの経費率は0.07%→0.06%に
経費率が引き下げとなるETFの一覧は前述のリンクからご覧いただければと思いますが、独断と偏見で選ぶ主なETFは以下の通りです。
投資対象 | ティッカー | 変更前 | 変更後 |
全世界株式 | VT | 0.07% | 0.06% |
先進国株式 | VEA | 0.06% | 0.03% |
新興国株式 | VWO | 0.08% | 0.07% |
米国増配株式 | VIG | 0.06% | 0.05% |
情報技術株式 | VGT | 0.10% | 0.09% |
全世界株式(除く米国) | VXUS | 0.08% | 0.05% |
S&P500グロース | VOOG | 0.10% | 0.07% |
S&P500バリュー | VOOV | 0.10% | 0.07% |
その他にも多数のETFの経費率が引き下げられ、合計では3億5000万ドル(約530億円)以上のコスト削減になるという発表がなされています。
もはやバンガードの主要なETFは0.1%を切るものが多くを占めてきています。なお、全米株式のVTIやS&P500のVOO、米国公債のBND(いずれも経費率は0.03%)は今回は改定されませんでした。
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私は投資を始めた2017年にVWOを数十万円分買っているので、わずかながら恩恵を受けることになりました!
以前は国内投信の信託報酬が高かったので、10年単位でインデックス投資をしている人だとVTを保有している人も多いと思います。また、後述するようにSBI・楽天などの一部のファンドはバンガードETFを購入する方法で運用されているので、今回の経費率引き下げの恩恵を受ける人は多いでしょう。
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VTの経費率が0.06%であるのに対して、国内投信の「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の信託報酬は税込で0.6%を切っているので、裏を返すと「eMAXIS Slim」は相当頑張ってくれていることがわかります。
ただ驚いたのですが、VTの純資産総額は約43億ドル(約6兆6700億円)であるのに対して、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は純資産総額5兆5000億円まできています。近いうちにVTを追い抜く日がきそうです。
国内投信も「棚ぼた」で実質信託報酬が下がる!
今回のバンガードETFの経費率引き下げは、バンガードETFを直接購入している投資家だけに恩恵があるのでなく、例えば「SBI・V」シリーズなどのバンガードETFを購入する国内投信も実質的な信託報酬が下がるので、多くの投資家にとって歓迎すべきニュースです。
SBIグローバルアセットマネジメントは2月6日にプレスリリースを出し、実質的な信託報酬の改定を発表しました(図はプレスリリースより)。
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VTやVIG、VEA、VWOなどを購入するファンドの信託報酬が下がります。
また、まだ正式発表はされていませんが、楽天投信投資顧問も「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」(楽天VT)などのバンガードETFを購入する投信がいくつかあるほか、「セゾン・グローバルバランスファンド」なども同様の事情で信託報酬が下がることは間違いありません。
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「棚ぼた」的な信託報酬の引き下げですが、投資家としては保有コストが下がることは歓迎すべきことです!
運用規模拡大→経費率引き下げという素晴らしい仕組み
今年で50周年となるバンガード・グループの最大の強みはライバルよりも低コストな商品を供給していることで、「低コスト」はバンガードの運用哲学にも含まれています。
信託報酬・経費率という点では運用会社と個人投資家はどうしても対立してしまうのですが、バンガードは「投資家自身が会社を保有する」という他社にはない仕組みを取り入れて、この対立を最小にまで解消しています。これが低コスト化しやすい構造になっているのです(詳しくは以下の記事にて)。
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日本でも投資信託の低コスト化がかなり進みましたが、これは2018年開始のつみたてNISAや2024年からの現NISAなどの制度改革を背景に、運用会社間の競争による低コスト化が進んだ影響が大きいです。「投資家のために」低コスト化したというよりも、「運用会社の戦略として」の低コスト化の側面が大きいと言えます。
背景は何であってもコストが下がればよいという考え方もありますが、バンガードの低コスト化には「投資家のために」という視点がより強いのだということを知っておいてもよいかもしれません。
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