台風の接近で大雨に打たれるなまずんです。
雨の日は読書に限ります。
今日は私がインデックス投資を始める上で,ETF(上場投資信託)について詳しく知りたいと思って手に取った書籍を紹介します!
第三者的視点でETFを評価した貴重な一冊
本書を購入した当時は非上場の投資信託とETFの違いをようやくつかんだころで,ETFのメリット・デメリットの把握や選び方に困っていたところでした。そんな中,たまたま書店で目に入ったのがこの本です。
『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読んだ直後に買ったような記憶があります。
なんと言っても,本書の特徴は第三者投信評価機関であるモーニングスター株式会社の朝倉智也氏が執筆した点にあります。金融機関の方も詳しいとはいえ,どうしても営業的になりやすいテーマに関して,一歩引いた視点から論理的に書かれています。
「なるほど!」と思ってたくさん付箋をいれてしまいました!笑
本書の情報
著者:朝倉智也氏
第三者投信評価機関として有名なモーニングスター株式会社の代表取締役社長。慶應義塾大学文学部卒後,米国イリノイ大学でMBAを取得,ソフトバンク株式会社を経てモーニングスター株式会社設立に参画しました。
発売日・版元
2017年6月発売。経済・ビジネスに強いダイヤモンド社からの出版です。
本書の構成
目次
はじめに
第1章 世界で存在感を高めるインデックスファンド
第2章 インデックス投資の最強ツール「海外ETF」に注目
第3章 今、ETFへの注目度が急上昇しているのはなぜか?
第4章 ETFを買う前に、ここだけはチェック! 資産運用の最新常識
第5章 ETFはこの7本を買いなさい
第6章 もっとこだわりたい人へ 一歩進んだETFの活用法
第7章 ETFをどこで、どう買ったらいいのか?
誰を読者対象としているか
ETFに関心があり,賢い選び方・買い方や運用方法を体系的に知りたい方向けに書かれています。
入門書ではありますが,ETF運用にすでに取り組んでいる方でも,「なるほど!」と思うであろうオススメな情報が満載です。
ETFを賢く選択しよう
朝倉氏がETFを勧める2つの理由
本書の前半で述べられているのがこの言葉。
私は,一定の条件のもとでは,もっとも望ましい金融商品は「ETF」だと考えています(p.38)
その理由について,氏は2つの理由を挙げています。
- 販売会社が存在しないので,コストを低く抑えられる
- ポートフォリオを組むのに「使い勝手がいい」金融商品
販売会社が存在しないので,コストを低く抑えられる
書中の図によれば,2016年12月時点でのTOPIX連動のインデックスファンドの信託報酬は年率0.56%。一方でETFは0.14%。
この差が生まれる理由は販売会社の手数料が一因です。
ポートフォリオを組むのに「使い勝手がいい」金融商品
ETFはそのほとんどがインデックスに連動する運用です。株式,債券,不動産,コモディティなど多様な資産クラスの銘柄が揃っている上に,国・地域やセクター別の銘柄があります。
本書では特定の国や業種に絞りつつ,その中での分散投資がETFによって可能になることが利点として挙げられています。
なぜETFが国内で普及しないか
これまで,日本ではETFがあまり知られてきませんでした。大変優れた商品性を持っているにもかかわらず,なぜ人気が出なかったのかというと,金融機関にとってETFが「おいしい商品」ではなかったからでしょう(p.47)
投資家にとって「良い商品」は必ずしも金融機関にとって良いとは限りません。両者は「手数料」を挟んで利害関係にあります。
手数料が取れれば取れるほど金融機関は儲かります。投資信託の「回転売買」を勧める金融機関がときどき話題になりますが,この利害関係は歴然としてある以上,投資家は手数料には敏感にならなくてはなりませんね。
投資信託 | ETF | |
---|---|---|
売買時のコスト | かからない商品も多い(ノーロード) | 証券会社指定の手数料がかかる |
運用時のコスト | 信託報酬(ETFより高い) | 信託報酬(投資信託より安い) |
どういった視点でETFを買うべきか
本書の目玉は,書名でもある第5章「ETFはこの7本を書いなさい」です。どういったETFを購入すべきかという5つのポイントがまとまっています(p.109の図)。
- コスト(信託報酬)
- 純資産残高
- 出来高
- 乖離率
- ポートフォリオの中身
本書ではコストができるだけ低いものを勧めつつ,純資産残高と出来高が小さすぎないかも考慮するように助言しています。純資産残高は他の商品との比較次第のため具体的な数字は記載されていませんが,出来高は1日最低1万株,できれば3万株はほしいと訴えています。
また,基準価額からの乖離率も出来高が小さいほど大きくなる傾向があります。
5つ目のポートフォリオの中身とは,連動する指標に何が含まれているかを確認することです。代表的なものは新興国株式クラスで,韓国を含むMSCIと含まないFTSEのように,指数によって違いがあります。
ETFと投資信託の使い分け
信託報酬ではETFに軍配
ETFの最大の魅力は,インデックスファンドと比べても信託報酬が低水準であること(中略)株式のようにリアルタイムで取引ができる機動性,指値注文や成行注文も可能という利便性にあります
一方,「購入手数料」「少額での金額指定購入の可否」という点ではETFはインデックス投資に見劣りします。(p.44)
インデックス投資を選んだとき,投資信託を選ぶかETFを選ぶかは迷いどころです。その基準をコストや利便性という観点で分解していますね。
コストはETFと投資信託でかかるタイミングと大きさが違います。
違いを表にまとめました。
ETFは売買コストが掛かるので,毎日・毎月積み立てていくには売買に手数料がかからない商品が多い投資信託が適しています。一方で長期保有が前提の場合,保有時のコストを考慮するとETFのほうが低コストであることもあります。
ETFは分配金の再投資の手間がかかる
資産形成期においては分配金を再投資に回すことが望ましいです。
その点に有利なのは投資信託。ETFは分配金を自分で再投資しなければなりません。そのときに分配金にかかる税金と売買のコストがかかってしまいます。
少額であれば,投資信託のほうがおすすめです。
どの7本を買うべきか?
さて,本書で説明された条件を満たす商品の中から,朝倉氏が勧める7本は何でしょうか?
ぜひ本書を手にとっていただきたく,ご紹介します。
- 【全世界株式】バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
- 【先進国小型株式】iシェアーズ・コア S&P小型株ETF(IJR)
- 【国内株式】MAXISトピックス上場投信(1348)
- 【新興国株式】バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)
- 【米国債券】iシェアーズ・コア米国総合債券市場ETF(AGG)
- 【先進国債券(除く米国)】バンガード・トータル・インターナショナル債券ETF(米ドルヘッジあり)(BNDX)
- 【新興国債券】バンガード・米ドル建て新興国政府債券ETF(VWOB)
米国の運用会社によるETFが多いのは,国内ETFは出来高が不十分なものも多いからです。
それぞれの商品が選ばれた理由や強みについては詳しい解説がありますので,書籍をご覧ください。また,「この20本なら」と第20位まで少し数を増やして検討した場合の商品群も約60ページにわたって解説されています。
ランキングのその後や,それぞれの商品の特徴について,ぜひお読みください!
ちなみに,私は4位のVWOを保有しています。
ETFを購入しようと思っている方全員にオススメ
第三者的視点から投資信託の情報を提供するモーニングスター株式会社のトップが書いたとのことで,ポジショントークではない客観的な情報提供がなされていると感じます。
例えば,これまでETFが普及してこなかった理由として金融機関の責任に言及するなど,構造的な問題にも触れています。
また,出来高もパフォーマンスに影響しうるという投資信託とは違った点についても,具体的な数字を挙げていたことは交換でした。
ランキング形式での商品紹介も概ね的を射ていて特に20位までを示したほうは私にとってもなるほどと感じるものでした。
長期保有を見込んでいて,比較的信託報酬の高い新興国株式は私はETFを3か月おきに積み立てにしています。
◆私が新興国株式ではETFを保有している理由をまとめたのはこちら
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