『ウォール街のランダム・ウォーカー』:私がインデックス運用を始めたきっかけ

書評
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レビューを書こうと思いつつ,最新版の発刊から2年も経ってしまいました。この本には特別に思い入れがあるのです。

この本,『ウォール街のランダム・ウォーカー』は多くのインデックス投資家に支持される1冊です。アクティブファンドに対するインデックス投資戦略の利点の解説書であり,同時にインデックス投資の実践に関する指南書でもあります。

私が投資家としての道を歩み始めたきっかけになったのもこの本でした。

インデックス投資について詳しく知りたいという人には心からオススメしたい本です。余談ですが,紙版のデザインが格好いいので迷わず紙版を買いました。真っ赤な扉と,カバーを外したところ(なお,1枚めの右上の本は1つ前の原著第11版です)。

ウォール街のランダム・ウォーカー(扉)

ウォール街のランダム・ウォーカー(装丁)

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目次と全体の内容

著者のバートン・マルキールは米国プリンストン大学の名誉教授で,現在はインデックスファンドシリーズで世界的に有名な運用会社バンガードの社外取締役も務めた経済学者です。

第1部 株式と価値
第1章 株式投資の二大流派
第2章 市場の狂気
第3章 1960年代から90年代にかけてのバブル
第4章 21世紀は巨大なバブルで始まった

第2部 プロの投資家の成績表
第5章 株価分析の二つの手法
第6章 テクニカル戦略は儲かるか
第7章 ファンダメンタル主義者のお手並み拝見

第3部 新しい投資テクノロジー
第8章 新しいジョギング・シューズ――現代ポートフォリオ理論
第9章 リスクをとってリターンを高める
第10章 行動ファイナンス学派の新たな挑戦
第11章 「スマート・ベータ」と「リスク・パリティー」――新しいポートフォリオ構築方法

第4部 ウォール街の歩き方の手引
第12章 財産の健康管理のための10カ条
第13章 インフレと金融資産のリターン
第14章 投資家のライフサイクルと投資戦略
第15章 ウォール街に打ち勝つための三つのアプローチ

第1~3部がインデックス投資の戦略の優位性を解説する部分です。第4部にそれを実践するための方針が書いてあります。

前版と比較すると,全4部・15章構成であることは変わりません。ですが,第3章・第11章の見出しが変わり,内容にも変更が入っています。テーマとしては,「仮想通貨バブル」と「リスク・パリティー」の2つが加わりました。

インデックス運用の優位性

第1部は,株式投資をすべき理由がまとめられ,過去の「狂乱」を踏まえた教訓も説かれています。何度も起こっては消えていたバブルの熱狂に飲み込まれずに「ゆっくりと,しかし確実に金持ちになる」(p.22)という意図があります。

第2部は,株価の動きを元に売り買いのタイミングを予測する「テクニカル分析」と,企業価値の推定を通じて銘柄選択を行う「ファンダメンタル分析」の二大手法に対して,インデックス運用の利点を説いています。

第3部は,リスクとリターンの関係性,そして分散投資の有用性を理論化した現代ポートフォリオ理論を紹介しています。また,近年の新しい手法についてもインデックス運用と比較しています。ここでも,インデックス運用の利点を再確認するような構成になっています。

つまるところ,本書を通じては「アクティブ運用で,インデックス運用を長期的に継続的に上回り続けることは難しい」「そのため,インデックス運用を中心に据えて運用するのがよい」との主張が論じられています。アクティブ投資がインデックス運用を上回ることが難しい理由には,手数料や税といった取引コストの影響や,取引のタイミングを誤ることなどが挙げられます。

詳しくは書籍を読んでいただくこととしても,インデックス運用はさまざまな指摘に耐えうる強みを持っています。多くのインデックス投資家がこの本の主張と同じことを継続的に発信していますね。

インデックス運用の方針

第4部は,これまでの学問的な話から一転。実践のための話題になります。

理屈をわかったうえで,「それではどうやって実践するのか?」というところへのアドバイスが展開されていきます

とくに有用だと感じるのは,第12章「財産の健康管理のための10カ条」です。

第1条 元手を蓄えよ
第2条 現金と保険で万一に備えよ
第3条 現預金でもインフレ・ヘッジ
第4条 節税対策と年金制度の活用
第5条 運用目標をはっきりさせる
第6条 マイホームの活用
第7条 債券市場に注目
第8条 金,ダイヤ,書画骨董,コレクター・アイテム
第9条 投資にかかるコストに目を配る
第10条 分散投資が大原則

まずはお金を用意し,必要に応じて保険で危険をヘッジしながら,節税制度をうまく活用してインデックス運用をしていく。そんな基本的な考え方がここに凝縮されています。

「ほとんどの人には保険は必要」とし,生命保険についても「掛け捨ての死亡保険に加入すると同時に,(貯蓄型保険に入る場合と比較して)保険料の節約分を免税の老齢貯蓄プログラムで運用する」といった持論も書かれています。

税金の制度は日米で異なるので,米国を基準とした本書の内容をそのまま適用できるわけではありませんが,基本となる考え方は同じです。

投資の方針や基本的な考え方,すなわち大局観をどのように持つかという点では参考になるでしょう。

本書との出会いが私の実践の基盤

すでに述べたように,私はこの『ウォール街のランダム・ウォーカー』から受けた影響が大きいです。これまで,その考え方に基づいた運用を進めてきました。

2017年の秋に本書の1つ前の版(原著第11版)をとある書店の棚で見つけたのが,私が『ウォール街のランダム・ウォーカー』との出会いでした。簡素な投資本は数冊読んだことがありましたが,しっかり書かれた投資本を読んだのはこれが最初の1冊です。

最初に読んだ原著第11版(左)も,2019年に出た原著第12版も付箋がたくさんつきました。

ウォール街のランダム・ウォーカー(最新版と旧版)

難しいという意見もあるものの,投資に関心があり,かつ文字の多い本でもある程度は読める人なら読破にまったく支障はありません。1回で完全に理解することは難しくても,その主張は伝わるでしょう。

投資に関する知識がない人向けに書いたと語られている割には分厚く,しかも文字が多い「圧迫感」のある本です。しかし,米国の原著が12版を重ね,世界中で読みつがれているということは他には代えがたい価値があります。

米国での初版は1973年のことですから,それこそ半世紀の時の試練を受けています。それだけでなく,今も改訂によって鮮度の保たれているという点で特筆すべき本なのです。

日本語版が出たのは1992年の第5版で,それからすべての改訂版が訳されています。これは日本でも30年近くにわたって支持を得て売れ続けてきたということの証左です。

基本的な主張を同じでも,中身はアップデートされて読みつがれてきています。邦訳初版を中古書店で見かけたので購入しました(左)。原著第12版(右)とイラストまで同じで,主張もほぼ一緒です。情報のアップデートを経て,インデックス運用の利点という主張がより確たるものになっている印象です。

ウォール街のランダム・ウォーカー邦訳初版と最新版

そして私はというと,『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読み終えた2017年の11月から,すでに開設していたiDeCo口座とともに,楽天証券のNISA口座と特定口座で広く分散されたインデックス運用を開始。そのまま5年目に突入して今に至っています。

現状では良すぎてかえって心配になるほど順調に運用の成果が上がっています

◆これまでの実践の記録です。

月次実践録
毎月末時点での資産状況の経過をまとめています。インデックスファンドを定期的に買い付けること以外はほとんどしていません。

ちなみに,その次には『敗者のゲーム』を読みました。論じられている内容はほぼ同じです。『ウォール街のランダム・ウォーカー』と比べて例示がコンパクトで,そのぶん薄く仕上がっていますね。

運用の実践には日本の実践者も参考に

さて,すでに書いたとおり,本書はインデックス運用の利点と実践の方針については非常によくまとまっています。基本的な投資戦略については世界共通ですので,本書はその理解にとても役立ちます。。

しかし,米国と日本では税・社会保障の制度がまったく異なります。具体的には,非課税投資制度,年金保険制度,健康保険制度に大きな隔たりがあります。また,購入できる投資信託も異なります。

本書は米国を想定して書かれているので,日本での実践にはそのまま適用できないところもあります。そのようなときは,日本人が書いている本やネットでの発信を参考にしてみましょう。

私も,ネット証券の楽天証券でiDeCo口座・NISA口座を開設して,日本の運用会社が運用する優れた投信を購入するに至るまでは,本やブログで実践者のやり方を大いに参考にしました。

物事の見方や大きな方針を世界的な名著で養い,実践の詳しいところは実践者のやり方を参考にしていく。これはどちらも重要なことだと私は考えています。

◆読んだ本のうちいくつかを紹介している書棚です。どれも人生の指針を定めるうえで大いに参考になりました。

書評
私の本棚です。

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