2020年1月17日(土),東京都品川区で「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019(FOY2019)表彰式」が開催されました。今年で13回目を迎えます。終了後には懇親会も開かれました。
この記事は,表彰式のメインであるFund of the Year 2019の発表と,それに先立って行われたプログラムについての参加録です。熱気に包まれたFOY2019の雰囲気をお届けできればと思います。
FOY2019の会場入口には,ボランティアで運営してくださる委員会の手作りの掲示がありました。運営委員会の皆さま,毎年の開催をありがとうございます。
個人投資家でつくる表彰イベントの意義
FOYは個人投資家の有志により開催されています。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」の公式ページによれば,FOYの目的は次のとおりです。
証券会社の宣伝やうたい文句にまどわされず,自分たちにとって本当によいと思える投資信託を投信ブロガーたちが投票で選び,それを広めることで「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」というイベントです。
単に優れたファンドを紹介するためのイベントではありません。よりよい投資環境を作りたいという個人投資家の思いを,投票と表彰という手段で社会に伝えていく催しです。
FOY2019のスケジュール
表彰式は3部構成の充実したプログラム
プログラムは以下のとおりです。
懇親会は大規模な親睦の場に
FOY2019表彰式の終了後,懇親会が有志によって開催されています。約2時間,個人投資家や運用会社の方などとの親睦の場になりました。
ブログやSNSで知っていても,なかなか会って話す機会はありません。このような交流の場は貴重ですね。
投資仲間とのリアルな交流もとても楽しいものです。懇親会の実行委員の皆さまにもお礼申し上げます。
eMAXIS Slimシリーズにさらに支持が集まったFOY2019
FOY2019のハイライトである第3部,FOY2019の発表と表彰式の模様です。有効総投票者数は221人でした。順位を短報します。
第1位~第5位:eMAXIS Slimシリーズのさらなる躍進!
第2位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(前年8位)
第3位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(前年1位)
第4位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(前年2位)
第5位 eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)(前年5位)
栄えあるFOYは,日本を含む全世界に時価総額加重平均で投資するeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)でした。FOY2018では,設定直後にもかかわらず第3位にランクインしていた有力ファンドが栄冠に輝きました。
eMAXIS Slimシリーズは他社の信託報酬引き下げに追随することで支持を集めてきました。本ファンドも例外ではなく,ライバルとの信託報酬引き下げ競争に参加し,これまでピッタリと付いてきています。
設定日は2018年10月31日で,純資産総額は138億円,信託報酬は年率0.104%です(2020年1月17日時点,信託報酬は税抜。以下同じ)。信託報酬はクラス最低水準です。
eMAXIS Slimシリーズの日本株・先進国株・新興国株を組み合わせるよりも低コストで,リバランス不要という特徴を持ちます。世界に分散投資したい投資家にとってはとても有用で,その点が評価されています。
第2位は,米国株式に投資するeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)でした。こちらも設定から日が浅いものの,低コストを追求する姿勢に支持が集まりました。最近の米国株の躍進にも後押しされての第2位です。設定日は2018年7月3日,純資産総額は497億円,信託報酬は年率0.088%です。信託報酬はクラス最低水準です。純資産総額500億円に到達すると「受益者還元型信託報酬」の仕組みにより,わずかながらクラス最低になります。
第3位はeMAXIS Slim 先進国株式インデックスでした。昨年第1位のファンドを獲得したファンドです。本年も確実に票を集め,第3位に入りました。設定日は2017年2月27日,純資産総額は804億円,信託報酬は0.0965%以内です。信託報酬はクラス最低です。
第4位は<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドでした。FOY2014~2016の3連覇,FOY2017・2018で2位と6年間にわたって上位をキープしています。今回は,eMAXIS Slimシリーズ以外で唯一,第5位までにランクインしました。表彰式ではeMAXIS Slimシリーズへの危機感が表れたコメントとともに,衝撃的な信託報酬の引き下げの発表がありました。
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式
「残高に応じて5回も信託報酬を引き下げてきた」
「既存ファンドの信託報酬切り下げは初」
「最安を能動的に狙う」
「販売会社にも協力をいただく」
「0.0999%の信託報酬を2月から0.0930%にする」要約:来年もニッセイさん,5位以内に入りたいそうです。 https://t.co/iiafcTFdUq
— なまずん🐠20代インデックス投資🐠編集者4年目 (@gameoftheweak) January 18, 2020
設定日は2013年12月10日,純資産総額は1603億円,信託報酬は最安値の発表がありました。純資産総額はクラスで最大規模です。
第5位は昨年・一昨年に引き続きeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)でした。設定来の人気商品で,継続した資金流入が魅力です。第1位を3回連続で取るのも大変ですが,第5位を3年連続で取るほうが難しいと思います。株だけでなく,債券やREITに分散投資したい投資家には欠かせないファンドです。
設定日は2017年5月9日,純資産総額は445億円,信託報酬は0.140%です。8資産均等のバランスファンドでは最大規模の純資産総額で,信託報酬は最低水準です。
◆写真 上位5ファンドの投信会社の表彰
第6~第10位:バンガード関連の投資信託が並ぶ
第7位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(前年6位)
第7位 グローバル3倍3分法(1年決算型)(新)
第9位 Vanguard Total World Stock ETF(VT)(前年7位)
第10位 SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド(新)
第6位は楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)。バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)を購入するファンドです。信託報酬では第2位のeMAXIS Slim米国株式や第10位のSBI・バンガード・S&P500インデックスファンドと差をつけられてしまいましたが,純資産総額は800億円まで伸ばしています。
第7位のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドは,第9位のVanguard Total World Stock ETF(VT)とともに,FOYの最多受賞賞を獲得しました。今回までに,どちらも11回ずつランクインしています。設定年はセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドは2007年,VTは2008年です。設定来,長期にわたって投資家の期待に応えてきました。
同順で第7位のグローバル3倍3分法(1年決算型)は,2019年で最も話題になったファンドの一つです。特徴は債券にレバレッジを掛けることで,2019年に入ってから純資産総額を大きく伸ばしました。3871億円と圧倒的な量の資金を集めています。
第10位はSBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドでした。2019年9月26日に超低コストで設定され,0.088%の信託報酬率は画期的です。設定から短期間にもかかわらず,119億円を集めています。本ファンドも「バンガード」の名称が入るように,バンガードの協力を得て運用開始となりました。
FOY2017からFOY2019までの順位の変遷
FOY2017からFOY2019までの順位の変遷を表にしました。毎年ランクインしているシリーズには,比較のために色をつけました。
- 赤=eMAXIS Slimシリーズ
- 緑=楽天バンガードシリーズ
- 青=<購入・換金手数料なし>シリーズ
- 灰=バンガードETF
2018年以降のeMAXIS Slimシリーズの躍進には目をみはるものがあります。また,バンガードETFが毎年ランクインしているだけでなく,バンガード関連ファンドの占める割合が高いです。
eMAXIS Slimシリーズか,バンガードの協力を得た共同ファンドに対する支持が厚いことがわかります。
◆「つみたてNISAでもおすすめ」として,本表のツイートを引用していただきました。つみたてNISAで投資するファンドを選ぶときには,FOYの結果も有用です。
発表以外の2つのプログラムも充実
当日はFOYの順位発表の前に,2つのプログラムが組まれました。いずれも充実していて,これだけでもセミナーとして十分楽しめるような大満足の内容でした。
第1部は2019年に話題になった年金
第1部は,権丈善一氏(慶應義塾大学教授)による「かしこい投資家なら知っておきたい! 公的年金3つのポイント」です。
そのポイントとは次の3つ。
- 公的年金は「保険」である
→貯蓄性の金融商品とは異なり,安心という効用を高めるもの - Output is Central(生産物が中心)
→賦課方式だけでなく,積立方式でも少子高齢化の影響を受ける - 支給開始年齢の引き上げと受給開始時期(年齢)の自由選択制はぜんぜん違う
→議論されているのは受給開始時期の自由選択制。支給開始年齢については何も変わらない。
解説は明快でわかりやすかったです。以下の本にも詳しいとのこと。まだ読めていないので,私も読んでみようと思います。
第2部は投信ブロガーの熱いコメント紹介
第2部の「みんなの【声】を聞いてみよう! 個人投資家が注目ファンドに寄せる「熱いコメント」一挙紹介!!!」(カン・チュンド氏,島田知保氏)では,今年も投資家の熱いコメントをたっぷりと楽しみました。ファンド愛と鋭い分析には感激します。
印象に残ったのは,多くの販路を持ちながら信託報酬を0.0999%まで引き下げた「たわらノーロード先進国株式」,圧倒的な低コストで設定された「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」,それに信託報酬で追随した「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」などのさらなる低コスト化に評価が集まったことです。
また,強い米国企業を長期保有する「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」の運用哲学や投資家への情報提供の充実を評価する声がありました。しっかりした運用哲学を持ち,実践するアクティブファンドは素晴らしいですね。
eMAXIS Slimの人気が今後も続くと予想
昨年のFOY2018に続く2回めの参加でしたが,今回も非常に充実したプログラムでした。
順位発表では,上位をeMAXIS Slimシリーズが席巻しました。コンセプトがしっかり定着したeMAXIS Slimシリーズの人気は当面続くであろうと予想しています。
eMAXIS Slimシリーズは信託報酬というところに焦点を合わせ,コストで他社に追随する戦略で成功しました。インデックスファンドの興隆の時代に,各社がどのような戦略で支持を得続けていくか,今後も注目していきたいと思います。
2020年も,個人投資家にとって投資環境の改善が続きますように!
◆FOY2019の投票記録。上位ファンドにも投票しました。
◆FOY2018の参加録です。コメントが熱い!
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