2020年10月7日に,日本を含む全世界株式に投資する「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の純資産総額が,節目の500億円を突破しました(三菱UFJ国際投信プレスリリース)。
eMAXIS Slimシリーズには,ファンドの純資産総額が500億円を超えた場合,その部分の信託報酬が0.0005%軽くなる受益者還元型信託報酬率が設定されています。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の基本的な信託報酬は年率0.104%(税抜)ですので,これにより税抜では0.104%を下回り,クラス最安になりました。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は税抜の信託報酬がクラス最安に
これまで,日本を含む全世界株式のコストは,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)と「SBI全世界株式(雪だるま)」の2ファンドが年率0.104%(税抜)で最安値として並んでいました。このたびeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に受益者還元型信託報酬が適用されることで,税抜ではeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬がわずかにSBI全世界株式(雪だるま)を下回るようになりました。
一方で,税込ではSBI全世界株式(雪だるま)のほうが信託報酬としては安くなります。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)はマザーファンドを通して直接全世界の株式に投資するしくみであるのに対して,SBI全世界株式(雪だるま)は米国籍ETFを買い付ける方式です。米国籍ETFの経費率には消費税がかかりません。
信託報酬(税抜) | 信託報酬(税込) | 投資対象ETFの経費率 | 信託報酬(税込)+経費率 | その差 | |
eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー) |
0.104% | 0.1144% | なし | 0.1144% | ― |
SBI全世界株式 (雪だるま) |
0.062% | 0.0682% | 0.042% | 0.1102% | 0.042% |
つまり,税込ではSBI全世界株式(雪だるま)のほうが0.042%だけコストが安いです。
しかし,SBI全世界株式(雪だるま)は米国籍ETFを介するために,投資対象国だけでなく米国でも課税されてしまう問題があります。これはeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)には生じません。
本記事では詳しく取り扱いませんが,その影響は年率0.05~0.1%と私はみています。消費税による差は0.042%ですから,米国での課税の要素を考慮すると,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のコストは税込でもクラス最安であると言えるでしょう。
なお,この信託報酬は執筆時点の国内株式インデックスファンドでの最安の水準(0.140%)より低い水準です。各社のファンドの競争が進むにつれて,全世界株式ファンドはどんどん信託報酬が下がりました。
2020年に入って資金流入量が大幅に拡大
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は2018年10月の設定以来,右肩上がりに純資産総額を伸ばしてきました。特に,2020年に入ってからは資金流入が大きく増えました(図はプレスリリースより)。
これは,2020年1月に開催された「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」(FOY2019)で第1位を獲得したことや,2019年11月に信託報酬を税抜年率0.120%から0.104%に引き下げたことなどがプラスにはたらいたものと思われます。
ファンドを運用する三菱UFJ国際投信によれば,2020年7月1日~10月7日の期間では,人気ファンドがそろうeMAXISシリーズのなかで,「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に次ぐ資金流入があったそうです。2020年に入ってから約350億円も集めていますね。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が,外国株式の定番である「eMAXIS Slim 先進国株式」を超えていたとは驚きました。
純資産総額での首位交代も
執筆している2020年10月11日時点では,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は全世界株式クラスで第2位の純資産総額です。純資産総額が最も大きいのは2017年に設定された「楽天・全世界株式」(楽天VT)です。
楽天VTはFOY2017にて第1位を獲得したファンドです。低コストで日本を含む全世界に投資できる類似ファンドはほかになく,販売開始直後から順調に純資産総額を伸ばしてきました。
しかし,現在は信託報酬で後れをとっていることにより,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)にの猛追を許しています。とくに,2020年3月のコロナ・ショック以降に差が急激に縮まりました。
この10月にもeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が,信託報酬だけでなく,純資産総額でもクラスでのトップを獲得しそうです。
米国株式に引き続き,全世界株式でも楽天バンガードシリーズからeMAXIS Slimシリーズに王座が変わることとなります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は,日本を含む全世界株式の第一選択に
このように,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は,コストと純資産総額の両方で,日本を含む全世界株式ファンドのなかで優位にあります。さらに,運用成績もほかのファンドと比較して問題なく,低コストに応じてリターンがやや高い傾向がみられました。
運用開始から2年ほどで,これまでに大きな問題もありませんでした。
そこで,全世界株式インデックスファンドをこれから購入するならば,eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を第一に検討することがおすすめです。
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