人気の米国株インデックスファンドのうち、この記事ではCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動する2つのファンドの運用状況を比較します。
1つは、2017年に設定された「楽天・全米株式インデックス・ファンド」。公式の愛称は「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」ですが、「楽天VTI」と呼ぶ人が多いです。
もう1つは、2021年に設定された「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」(SBI・V・全米株式)。楽天VTIに対して「SBI・VTI」と言われることもあります。
CRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動する商品では、米国バンガード社のETF「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(VTI)が有名です。あとでも記載しますが、楽天もSBIも、このVTIを購入しているファンドです。
なお、CRSP USトータル・マーケット・インデックスの構成銘柄の特徴や、ほかに人気のある米国株式指数S&P500との違いはこちらの記事もご参考にどうぞ。
SBI・V・全米株式と楽天・全米株式の基本スペック
SBI・VTIと楽天VTIの信託報酬などの基本的なスペックをまとめておきます。表は左右にスクロールできます。純資産総額と取扱販売会社は7月15日時点です。
名称 | 設定日 | 信託報酬 (税抜) |
純資産 総額 |
取扱 販売会社 |
運用 方法 |
楽天・全米株式 (楽天VTI) |
2017/09/29 | 0.150% | 604,018 | 18社 | マザーファンドを 通じてVTIを購入 |
SBI・V・全米株式 (SBI・VTI) |
2021/06/29 | 0.088% | 87,091 | 1社 | マザーファンドを 通じてVTIを購入 |
楽天VTIのほうが3年9か月早く設定されました。それもあって、純資産総額は楽天VTIのほうがはるかに大きいです。
信託報酬は後発のSBI・VTIのほうが安く設定されています。SBI・VTIはまだ運用期間が1年と短く、信託報酬以外のコストの詳細がわかる運用報告書が発表されていません。
なお、信託報酬のほかにVTIの運用コストが年率0.03%かかります。
取扱販売会社は楽天VTIが18社であるのに対して、SBI・VTIはSBI証券1社のみです。楽天VTIは、楽天証券だけでなくSBI証券、マネックス証券などの他のネット証券でも買えるのとは対照的ですね。
過去1年のリターンは「SBI・V・全米株式」が少しリード
続いては運用状況を見ていきます。まずは、楽天VTIとSBI・VTIの2022年6月の月報からの情報です。過去1か月、3か月、6か月、1年の運用状況です。ベンチマークはSBI・VTIの月報から。
名称 | 1か月 | 3か月 | 6か月 | 1年 |
インデックスの 動き |
-2.15% | -7.71% | -6.13% | 7.06% |
楽天・全米株式 (楽天VTI) |
-2.2% | -7.9% | -6.4% | 6.6% |
SBI・V・全米株式 (SBI・VTI) |
-2.18% | -7.77% | -6.28% | 6.61% |
小数点以下の桁が揃っていないので評価が難しいですが、どちらのファンドも同じくらいやや下方に乖離していますね。
乖離の原因は、信託報酬のほかに、ファンドによるVTIの購入コスト、VTIからの分配金に対する米国での課税、その他ファンドの維持に必要な経費があるためです。楽天・SBIとも同じ条件ですが、コストとしてはVTIの運用のための費用の影響も受けています。
どちらもファンドも同じような乖離状況ですので、運用には大きな問題はないのではないかと思います。
若干はSBI・VTIのほうが良さそうですが、この比較方法は現在の一時点での乖離によってよく見えたり悪く見えたりしてしまいます。実際の運用はどちらが勝っていたのでしょうか。続いて、SBI・VTIが設定された翌日(2021年6月30日)に対する基準価額の推移から、両ファンドの運用状況をみてみたいと思います。
2021年6月30日に 対する騰落率 |
楽天・全米株式 (楽天VTI) |
SBI・V・全米株式 (SBI・VTI) |
2021年7月末 | +1.35% | +1.29% |
2021年8月末 | +4.20% | +4.13% |
2021年9月末 | +2.24% | +2.19% |
2021年10月末 | +9.41% | +9.33% |
2021年11月末 | +10.26% | +10.16% |
2021年12月末 | +13.87% | +13.75% |
2022年1月末 | +4.63% | +4.56% |
2022年2月末 | +4.39% | +4.31% |
2022年3月末 | +15.68% | +15.59% |
2022年4月末 | +10.41% | +10.40% |
2022年5月末 | +9.02% | +8.99% |
2022年6月末 | +6.58% | +6.61% |
2022年7月15日 | +7.51% | +7.55% |
この1年では、5月末ごろまでは楽天VTIのほうがリターンがよい傾向がありましたが、この1か月ほどでSBI・VTIが逆転しています。
どちらかが一方的ということはなく、現状ではほぼ互角と考えていいと思います。一般的には、運用1年目は信託報酬以外のコスト面で不利になりやすいことから、SBI・VTIは健闘しているのではないでしょうか。
SBI・VTIはSBI証券でしか買えないのがネック
このように、新しく設定されたSBI・VTIは楽天VTIと比べて運用が劣る様子はありません。安心して購入できそうです。
信託報酬に差があるため、運用に問題なければ今後も楽天VTIよりもわずかにリターンが高くなっていくかもしれません。コスト重視で考えるなら、SBI証券の口座を作ってSBI・VTIを購入するようにしてもよいと思います。
しかし、口座開設や管理の手間をかけてまでSBI・VTIを選ぶほどの必要はなさそうです。
現状では楽天VTIと比べて販路の違いが大きく、純資産総額が近いうちにひっくり返るようなことはないでしょう。この1年では楽天VTIのほうが流入金額が大きいと考えられます。より長く運用している実績があり、結果もほぼ互角であることから、とくに問題があるようには思えません。
個人的には、SBI証券以外で楽天VTIを積立設定していたらそのまま変更せずに様子を見ておくと思います。
楽天VTIも信託報酬でもっと競争してくれると選びやすいのですけれどね。どちらが決定的に優勢かの判断は現状の情報では少し難しいと思います。
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