2020年の春に居住用物件を購入しました。築20年程度の中古マンションです。
フルリフォーム物件でなければ,中古物件には経年による傷や設備劣化があります。この物件は大掛かりな工事は不要でしたが,入居に当たってさまざまな部分に修繕・改修を行いました。そのほとんどを,自分で行ういわゆるDIY(Do It Yourself)ですませました。
専門知識が必要な修繕や規模の大きな改修は業者に依頼する必要があります。ですが,見た目を変える程度の変更は自分で簡単にできることがわかりました。
DIYのメリットは,費用が抑えられることだけでなく,作業をすることによって物件の状態を詳しく知ることにもあります。中古物件の購入時だけでなく,住みながらの建物の維持管理にも応用できるでしょう。この記事では,私が今回作業するに当たってかかった費用・時間や注意点などの概要をまとめていきます。
補修箇所の概要と補修前の状態
上記の記事でも少し説明していますが,この物件は水回りの一部をリフォームして,「一部リフォーム物件」として売り出された中古マンションです。それまでは長年,分譲賃貸物件として貸し出されていました。
全体的にはきれいな状態でした。そのため,業者にリフォームを依頼するほどの部分はなく,次のような箇所を自分で簡単に修繕・改修しました。かかった時間は合計約5日間,かかった費用は約6万円でした。
- フローリング
→水性ウレタンニスを使用して退色のカバーと表面の保護 - 屋内の扉まわり
→木部のワックスがけ,蝶番の調整,取っ手の金属部分の塗装 - ビニール巾木
→ところどころ接着不良だったビニール巾木を接着 - カーテンレール
→新品に取り替え - 洗面台のスイッチシール
→経年劣化したシールの張り替え - コンセントプレート
→破損したカバーの取り替え
なお,私はこのような補修・改修の経験があったわけではありません。どれも素人なりに調べながら進めていきました。
フローリングの水性ウレタンニスがけ
費用と作業時間が最もかかったのはフローリングのニスがけです。60平米程度のフローリングに対して,2~3回の重ねがけをした作業で,かかった費用と時間は次の通りです。
- 費用:約2万5000円
- 時間:約3日間
買った資材は,水性ウレタンニス・ニスがけのためのコテバケ・塗料皿・紙やすり・刷毛・マスキングテープ・手袋・ワックスはがし剤でした。
使ったニスはこちらの水性ウレタンニスです。ニスにはつや出しとつや消しがありますが,今回はマットな質感がほしかったので,つや消しの製品を購入しました。
なお,今回は壁紙を張り替えるなどの大掛かりな作業がほかにありませんでした。このような作業がある場合は,床に取り掛かるのは最後がよいです。チリやホコリが落ちてきたり,床に小キズをつけることがあるためです。作業は基本的に上部から行いましょう。
ワックスがけではなくニスがけにした理由は耐久性と色合い
この物件のフローリングは建築当初からのものとみられます。全体的には小キズがみられる程度できれいなものの,直射日光のあたる部分を中心に,傷みや退色が起こっていました。
写真左側に窓があり,日の当たるところほど白っぽくなってしまっていました。また,中央左下のキズやシミがやや目立ちます。
床の機能としては問題なかったことから,今回は張り替えないできれいによみがえらせる方法を探りました。具体的には,素人でも作業できる水性ウレタンニスでの補修を行いました。
床の保護では簡便なワックスがけを行うこともできますが,水性ウレタンニスを使うことにした最大の理由はメンテナンスの頻度です。水性ウレタンニスはワックスに比べて耐久性が高いです。1年に1回程度の塗り替えが必要なワックスに比べて,水性ウレタンニスは塗り直しが3~5年後でよいところを評価しました。
また,上の写真のような退色をカバーする必要があったことも理由です。それには,カラーワックスよりも色付きの水性ウレタンニスのほうが適していました。耐久性があることに加えて,複数の色付き水性ウレタンニスを混合して使用することで,好みの色合いにできるからです。
2~3回塗り終えた同じ部分の写真です。同じ時刻ではないので多少見え方は変わりますが,退色していた表面は改善し,キズやシミが目立たなくなりました。
塗るときの注意点
ワックスと同じような感覚で塗ればよいだけなので,実際の作業はそれほど難しくありませんでした。
注意点は,①厚塗りしないことと,②乾く前に同じところを二度塗りしないことでした。これは塗りムラの原因になります。
二度塗りしてしまったところは以下の写真のように跡になりました。ちょっと失敗しても,乾いてから塗り直せば目立たなくなります。ですので,少し失敗しても二度塗りせずに塗り進めましょう。
なお,撮影を忘れていましたが,意外と大変だったのは塗るところではなく,塗ってはいけないところをマスキングテープでしっかり隠すことでした。
水性ウレタンニスではなく,水性ニス(水性アクリルニス)や油性ニスという別商品もあるので要注意です。水性アクリルニスは耐久性に劣り,床での使用では水性ウレタンニスのほうがよいそうです。油性ニスはおもに屋外用です。
屋内の扉まわりの補修
この物件は扉にも大きなキズはなく,そのまま使用することができました。経年的な変化へのメンテナンスを行いました。
木部のワックスがけ
扉などの木部には家具用ワックスを塗りました。床のニスがけと並行して作業したので,作業時間は実質的には1時間くらいでした。
- 費用:約2000円
- 時間:約3時間
つやが出たようにも思いますが,もともときれいだったので,残念ながらあまり意味は感じられませんでした。
扉の蝶番の調整
可動部である扉は,経年によって両開きの扉が少しぶつかっていたり,やや傾いていたりしたところを補修しました。長年使っていると。扉の重さや開閉の衝撃,板の反りなどで扉のしまり方は変わってしまうことがあります。費用はかからず,ドライバー1本で作業できるため,かかった時間は15分くらいでした。
- 費用:0円
- 時間:約15分
たとえば,扉同士がぶつかっていてすこし浮いている箇所がありました。
この扉には下の写真のようなスライド蝶番が使われていました。これはネジを調整することで,扉の角度や位置を調整することができます。
具体的には,右側の真ん中の段の2本のネジによって扉の角度・位置を変更できます。
少しコツがいりますが,何度か挑戦しているうちに簡単にできるようになりました。
なお,このようなスライド蝶番でない場合は,補修できないこともあります。また,経年によって扉に大きな反りが生じているときは,蝶番を調整しても直るとは限りません。
扉そのものの不具合は,扉を交換すること以外では補修が難しいです。その場合はDIYでは限界があるように思います。
取っ手の金属部分の塗装
引き戸の取っ手部分などの金属部分の塗装が剥げていたので,市販の塗料で塗り直しました。
- 費用:約1000円
- 時間:約2時間
塗料のほかに,床を塗るときに使ったマスキングテープも使用しました。補修の前後比較は以下の写真のような感じです(左が補修前,右が補修後)。
元のとは違う色に塗りましたが,これはこれで良さそうです。摩擦で剥がれないように,上から無色の水性ウレタンニスを塗りました。
なお,裏でネジ止めされているだけの取っ手であれば,ホームセンターなどで新しい取っ手を買って,ドライバー1つで交換することができます。蝶番を調整した開き戸の取っ手はキズだらけだったので,新しい取っ手に替えてもいいかもしれません。
ビニール巾木の接着
巾木とは床と壁が接する部分に取り付ける木やビニールの部材のことです。この物件はビニール製でした。やや剥がれていたのをボンドで補修しました。
- 費用:約300円
- 時間:約15分
壁紙や巾木は全体的にはきれいだったので変えませんでした。補修に費用がかかるところをそのまま使える物件は初期費用を抑えることができました。
カーテンレールの取り替え
とくに不具合はなかったものの,やや古い印象だったので新しい装飾レールに変更しました。単純に好みの問題による改修です。2か所の窓のカーテンレールの取り替えに約3時間かかりました。
- 費用:約2万5000円
- 時間:約3時間
費用はほぼカーテンレール代です。以下のレールを2本買いました。
そのほかに,もともと付いていたカーテンレールをとめていたネジの穴を埋める資材を買いました。器具は保有している電動ドライバー・のこぎり・キリを使って作業しました。電動ドライバー・のこぎりとも,ホームセンターで1000円くらいで購入したものです。
カーテンレールの取り外しと設置
既製品のレールを購入し,適当な長さに切断します。
このくらいの棒の切断であれば,近所にとくに迷惑になることもなく作業できそうでした。
きれいなレールに変えて気分を一新です! 壁にはネジだけで簡単に付けられました。
壁のネジ穴を埋める修理
新しく取り付けたカーテンレールは,もともと付いていたカーテンレールとネジ穴の位置が異なりました。壁にネジ穴が残ってしまったので,それを隠すために,ネジ穴を埋める材料を使いました。
ネジ穴は直径2~3ミリくらいでした。これくらいなら,ネジ穴を埋める材料で目立たなくなります。
近くで見てこの程度ですので,遠目にはまったくわかりません。使用したのはこの商品で,類似の品も多いです。
なお,前回カーテンレールを設置した際についたのか,壁紙が一部キズついていました。ここはこのあと,壁紙を模したシールで補修しました。
一連の作業は10分ほどで終わりました。穴埋め剤を乾燥させるのに約1日かかります。
ふさかけの設置
カーテンレールと合わせて,ふさかけを設置しました。これまではプラスチック製で両面テープで付けられていましたが,木製でネジを使ってとめるものに変更しました。
ネジでとめるだけの簡単な作業ですので,これも15分ほどで終わりました。
洗面台スイッチ板カバーの取り替え
洗面台は新築当初からと思われるものでした。照明などのスイッチのカバーがなくなっていたので,これを補修しました。古いカバーを取り外し,新しいカバーに付け替えました。
- 費用:約1000円
- 時間:約30分
下の写真の左が変更前,右が変更後です。一目瞭然。
なお,洗面台はすでに廃盤品でしたが,スイッチの位置などは規格化されているようです。既製品を少し切ってぴったりのサイズにしました。家電量販店などでは在庫していないこともあるようなので,通販で買いました。
古びたスイッチカバーを新しくしただけで,印象はかなり変わりました!
コンセントプレートの取り替え
複数のコンセントプレートに破損が見られたので交換しました。プレートを買って,ネジでとめるだけです。
- 費用:約2000円
- 時間:約20分
これも簡単な作業ですので,スムーズに交換できました。
通販サイトやフリマアプリなどで,いろいろなデザインのプレートが安価で売られています。部屋の雰囲気を変えるにはコンセントプレートやスイッチプレートを変えてみるのもいいかもしれません。
今後業者に頼みたいのは電気周りの工事
以上のように,今回の入居ではほとんど自分で補修・改修しました。それから約2か月が経ちましたが,いずれもとくに不具合はありません。補修・改修の程度によるにせよ,これらのことは素人でもできるといえるでしょう。
一方で,手を付けられなかったところもあります。それが電気のスイッチです。
本来は以下のように透明なカバーが掛かっているのですが,このカバーが割れてしまっています(写真はパナソニックより)。
新しいものに取り替えればよいだけなので,これも自分でできると考えたのですが,透明なカバーだけを付け替えるのは難しく,スイッチ全体の取り替えが必要になりそうです。それには電気工事士の資格が必要です。私にはできないので,ここは業者に頼む必要があります。
自分で手直しできるものはやってみよう!
業者に頼むよりも時間と労力はかかりますが,DIYでもできる修繕・改修はかなりあることがわかりました。
私の場合は初心者だったのもあって,総時間数として約5日間かかりました。費用は合計約6万円でした。
冒頭で述べたように,DIYのメリットとして,自ら作業をすることで物件の部材の状態を知ることもできます。私の場合は,大きな不具合がないかどうかを中心に見た購入時とは異なり,細かなキズの有無や,もっと快適な空間にするにはどうすべきかといった視点で物件を見直す機会にもなりました。
余談ですが,この物件は総じてていねいに使われていたようです。床や洗面台スイッチを含めて,新築当初の部材・機材がそのまま使われている部分が多かったです。
定期的にメンテナンスすればまだ長く使えそうですので,私も丁寧に使っていこうと思います。