投信に詳しいブロガーに,真に支持されるファンドはどれか――。2020年の覇者を決定する「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2020」(FOY2020)の表彰式が,1月16日(土)にオンラインで開催されました。
この表彰式は,投信ブロガーが本当によいと思う投資信託を選び,支持を表明していく場です。運用会社にも意見がダイレクトに届くため,よりよい投資環境をつくるうえで大きな役割を果たしています。
証券会社の宣伝やうたい文句にまどわされず,自分たちにとって本当によいと思える投資信託を投信ブロガーたちが投票で選び,それを広めることで「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」というイベントです。
引用元:投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2020
FOY2020はオンライン開催
新型コロナウイルスの蔓延の影響を受けて,表彰式はオンライン開催となりました。表彰式のあとの懇親会は残念ながら中止ですが,これはやむを得ません。
感染対策がきっかけの配信でしたが,遠方からでも参加できるためよい取り組みでした!
音声や動画が乱れることもなくスムーズに視聴できました。運営の皆さまには本当にお礼を申し上げます! わずかばかりではありますが,寄付つきチケットで応援させていただきました。
表彰式は2部構成
第1部では投資家からの熱い声が紹介され,第2部では第20位から第1位まで,投票結果が順に発表されました。
第5位までの入賞ファンドからは運用会社からのビデオメッセージが放映されました。この企画もよかったです!
第2部 投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2020 結果発表
運用実績の長いファンドが目立ったFOY2020
FOY2020の投票総数は190人(有効185人)でした。本記事では第10位までを一気に紹介します。
第1位~第5位:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が2連覇
第2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(前年4位)
第3位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)(前年9位)
第4位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(前年7位)
第5位 ひふみ投信(前年14位)
第1位は,2連覇のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)でした。2021年1月15日時点で,純資産総額は876億円です。昨年の授賞式の段階では純資産総額が138億円だったため,この1年で資金流入のペースが急拡大しています。
信託報酬は税抜年率0.104%ですが,「eMAXIS Slim」シリーズに設定されている受益者還元型信託報酬が適用されるため,同種ファンドと比べてわずかながらコストで先んじています。
投票者からの声でも出たように,これ1本で全世界に時価総額加重平均で投資できるところが素晴らしい商品です。
第2位に入った<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドはFOY2014に初登場で第1位を獲得して以来,上位を維持しています。ファンドの規模の拡大にともなって信託報酬を率先して引き下げ続けてきたところが揺るぎない支持を得ている理由です。
第3位のバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT),第4位のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドはともにFOYで12回めの入賞となりました。長期にわたって投資家の期待に応えているファンドです。これらも,この1本で資産運用を完結できるような使い方ができる点が魅力的です。
第5位にはひふみ投信が入りました。設定から12年で基準価額が6万円を超えており,結果がすべてのアクティブファンドでしっかり結果を残してきたことが評価されています。
新しいファンドが上位に入ることが多かった近年の傾向とは異なって,運用期間がやや長いファンドが4つランクインしました。
順位 | ファンド名 | 設定年月 |
第1位 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 2018年10月 |
第2位 | <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式 | 2013年12月 |
第3位 | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT) | 2008年6月 |
第4位 | セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | 2007年3月 |
第5位 | ひふみ投信 | 2008年9月 |
第6位~第10位:eMAXIS Slimシリーズが4つを占める
第7位 eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(前年3位)
第8位 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)(前年13位)
第9位 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(前年8位)
第10位 農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね(前年12位)
第6位から第9位まではeMAXIS Slimシリーズのバランス(8資産均等型),先進国株式インデックス,全世界株式(除く日本),米国株式(S&P500)が入賞しました。
第10位までにはインデックスファンドが8本入りましたが,そのうち5本が「eMAXIS Slim」シリーズです。他社のファンドの低コスト化に徹底して追随してきたことで,どのファンドも類似ファンドにおける最低水準の運用コストを達成しています。
第10位はアクティブファンドの農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶねが入りました。このファンドは米国に上場している企業に長期で投資することを目的としたファンドです。「投資信託財産の中長期的な成長を目指して運用」するという方針が評価されてランクインしました。
FOY2017からFOY2020までの順位の変遷
以上がFOY2020の結果でしたが,FOY2017からFOY2020までの順位の推移を見てみましょう。人気を集め続けるファンドとそうでないファンドがあることがわかります。
- 赤=eMAXIS Slimシリーズ
- 緑=楽天バンガードシリーズ
- 青=<購入・換金手数料なし>シリーズ
- 灰=バンガードETF
- 紫=アクティブファンド
楽天バンガードシリーズは他のファンドに比べてやや割高になってしまい,FOY2020ではトップ10に入らないという結果になりました。
また,eMAXIS Slimシリーズは,2019年までは他社が信託報酬が引き下げ,それに追随してeMAXIS Slimが信託報酬を改定するという流れがよく見られました。しかし,2020年は信託報酬の引き下げがあまり行われず,eMAXIS Slimシリーズも自発的に信託報酬を切り下げることはありませんでした。
話題にのぼる機会が少なかったこともあって,FOY2020ではeMAXIS Slimシリーズがやや順位を落としたのかもしれません。
一方で,他社の動向ではなく,純資産総額の拡大にともなってコストを引き下げてきた<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式やVTが順位を上げることにもなりました。
単に低コストなだけでなく,長期目線の視点が評価された
先日投稿した記事のように,インデックスファンドを選ぶ際はコストを重視することはすでに多くの人の常識になっています。
◆「eMAXIS」シリーズ1兆円で売れているのは「eMAXIS Slim」だけ
そしてコストの引き下げもかなりの水準まで進んだ今回,上位には運用期間が比較的長く,投資家に支持され続けてきたファンドが入りました。長期にわたって投資家に向き合う姿勢とその実績が今後はより重視されてくることでしょう。
今年も上位はハイレベルな争いとなりました。10位までに入るファンドはどれも投信ブロガーから非常に評価されている商品です。投資家の皆さまには,ぜひ,投資先を考える際の検討にご活用くださいませ!
優れたファンドを送り出し続けてくださる運用会社の皆さまには心から感謝しています。今後もよろしくお願いいたします。
◆過去のFOYの関連記事です。
*タイトル画像の背景は「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」Facebookページからお借りしました。
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