なまずんです。
これまでファンド選びは「低コスト」を圧倒的に重視してきました。今後もコスト重視は変わりませんが,2019年1月13日(日)に開催されたFund of the Year 2018に参加して触れた,投資家と投信会社の思いには心を打たれました。
支持者の心をつかんだファンドが上位入賞
FOYでは,eMAXIS Slimシリーズ(三菱UFJ国際投信)の躍進が印象的でした。
見事にFOY2018に輝いた「eMAXIS Slim先進国株式インデックスファンド」を始め,上位5位までに3つ,10位までに5つ,20位までに7つのファンドが入りました。5年連続で2位以上を獲得している「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(以下,ニッセイ外国株式)」が例年通り大健闘。ファンの心をしっかりつかむ商品力・ブランド力には感心しました。
インデックス投資家にとって,ファンドは「相棒」
インデックス投資で成功するための原則は長期にわたるバイ&ホールドです。三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slimシリーズとニッセイ外国株式に共通するのは低コスト戦略で,他のFOY上位入賞ファンドを見ても総じて低コストが評価されていると言えます。
ただ,初参加の私がびっくりしたのはそれだけではありません。投資家それぞれにファンドへの熱い思いがあることを知りました。
インデックス投資の成功の原則は,長期にわたるバイ&ホールド戦略です。大げさに言えば,この戦略を取る投資家にとって投資先商品の選定は,人生をともにする「相棒選び」です。
となると,商品に求められるのは数字で表わせる「低コスト」だけでなく,目に見えない「愛着や信頼感」も重要です。この「愛着や信頼感」がブランド力でもあります。
ブランドには独自性が求められます。eMAXIS Slimシリーズの独自性は「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という趣旨でしょうし,ニッセイ外国株式の強みは資金流入とともに毎年信託報酬を切り下げ,投資家と投信会社のwin-winの関係を作り上げてきた実績です。
低コスト化だけでなく,顧客との交流の価値が今後重要に
投資ブログ「貧乏人でも投資がしたい」を運営するいぬデックスさんが指摘する通り,投信会社にとって今後,商品力だけでなく顧客とのコミュニケーションや広報の重要性が増してくるでしょう。
以下はいぬデックスさんとは関係のない私見ですが,顧客との交流の価値が高まるのには理由があります。
iDeCo・つみたてNISAの普及を後押しに,投資家の裾野が広がりました。自分で積極的に情報収集する旧来の投資家だけでなく,比較的ライトに積立投資を行う層が徐々に増えてきています。これはマイナーだった投資がメジャーになるうえで欠かせない過程です。
そうなると,iPhoneを販売するアップル社が,「スマートフォンが普及した先にある,便利で楽しそうな未来(「iPhoneだけ」)」を見せるマーケティングをしたように,投信会社には「投資信託が開く,保有者の明るい未来」を提示し続ける役割が生まれます。投信会社は市民を「良き投資家」に仕立てる役目の一端を担っていると私は思います。
そういった意味で,各社ともまだ改善の余地がたくさんあります。三菱UFJ国際投信はブロガー向けイベントを開催するなど一歩先を行っていますが,個人的にこの取り組みには気持ち悪さも拭えません(一応薬剤師国家資格を持っているせいかもしれません。製薬会社が勉強会と称し,医師を招いて薬の効能を説明するスキームとほぼ同じ)。
三菱UFJ国際投信の行動はどう見てもただのマーケティングです。ブロガーからの意見収集と宣伝の両方ができるので,投信会社にとってはおいしい話です。現時点では意見を聞きやすいブロガーを対象に試行している段階なのかもしれませんが,一般人を含む万人を対象にすべきと切に願います。
eMAXIS Slimシリーズは良い商品群です。しかし,ブロガーに商品や投信会社の広告塔の役割を担わせるのは少しおかしな話です。今回のFOYで私がeMAXIS Slim先進国株式とニッセイ外国株式に2票ずつ,同数票を投じたのは,商品はともに素晴らしいのに,マーケティングの動きが怪しい三菱UFJ国際投信と,そもそも情報発信力が微妙なニッセイアセットマネジメントにもう一歩を期待したい感情も背景にありました。
2社だけでなく全ての投信会社に,投資家全体に向けた積極的な情報発信で,投資家からの「愛着と信頼感」を勝ち得てもらいたいです。
日本の投信のさらなる進化に期待
今は90歳,100歳まで生きる可能性がある時代です。
従来,日本の投資信託は短命に終わるものがほとんどでした。今後も短期運用で終わってしまうファンドは多いのでしょうが,信頼と愛着を得た良質のファンドにはぜひ,私の人生より長く残されてほしいものです。
いま20代後半の私にとって,投資信託で運用する期間は50年以上になる可能性があります。それほど長期にわたって保有するには,「低コスト」といった商品力以外の魅力を持ち,投資家の心をつかむ必要があります。
今回のFOYの盛り上がりに触れて,日本の投資信託の将来はまだ進化するのではないかと期待を感じました。低コスト化の立役者である三菱UFJ国際投信,ニッセイアセットマネジメントを始め,各投信会社の今後の取り組みに注目したいと思います。
FOYでは「日本のバンガードになる」と話した三菱UFJ国際投信と,涙ぐましいコスト削減の努力を伝えたニッセイアセットマネジメント。いち投資家として,投信会社の思いも,もっと知りたいですね!
◆熱気に包まれたFOY2018の参加記はこちら
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