投資先が「全世界株式」だけでよくなってきた理由

210814 投資先が「全世界株式」だけでよくなってきた理由 インデックス投資
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2021年8月11日,楽天証券トウシルに経済評論家の山崎元さんの記事「個人投資家が実行しやすいインデックス投資を考える」が掲載されました。

この記事では,個人投資家がインデックス投資をする場合は,リスク性資産の選択は「全世界株式インデックスファンド」でよいのではないかと提言しています。

積極的におすすめしたい理由があるというよりは,世界が1つになってきて従来のように複数のファンドの比率を決めて保有する魅力が減り,その結果,全世界株式の総合的な評価が高まったという印象を受けました。

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全世界株式なら1本を選ぶだけでよい

山崎さんがインデックス投資における投資配分について,これまでいくつかのパターンを紹介していました。記事でも,過去に次の5つをよく取り上げたとしています。

  • 国内株(TOPIX):50%、外国株(先進国株ないし全世界株)50%
  • 国内株40%、外国株60%
  • 国内株60%、外国株40%
  • 国内株50%、先進国株35%、新興国株15%
  • 全世界株100%

このうち,山崎さんは「国内株40%:外国株60%」をよく勧めている印象が私は強いです。最近は別の記事でもそのように書いていました。

その理由には,日本株には為替の影響がないために相対的にリスクが低いことがあります。また,最近では外国株に比べて日本株がやや低く評価されすぎているという考えも書かれています。この記事でも,「国内株40%:外国株60%」が好みであることには触れています。

しかし,今回は「個人投資家へのお勧めとして、一番いいかも知れないと思うのは、『全世界株式100%』」とまとめられていました。

投資にかかる労力やコストを考えると,低コストの全世界株式インデックスファンドの1本にまとめる方法が最適です。その後に保有比率を見直すリバランスを行う必要はありません。手間の軽減になり,リバランスによる売買で非課税投資枠を消費してしまうようなこともないというメリットがあります。

ただし,おすすめする割には少し歯切れがわるいのが気になります。記事を読み進めていくと,その迷いが生まれる理由も少しわかります。

インデックスファンドの保有割合をどう考えるか

さて,記事の補足として,ここではリスク資産をどのような割合で持つかについての基本的な考え方を1つ,簡潔にまとめます。

リスク資産を保有するときに,「何をどれだけ保有するか」というのは昔から研究がなされてきました。その成果の1つであり,多くの専門家の支持を集めているのがポートフォリオ理論,とくに資本資産価格モデル(CAPM)です。

これはリスク性資産ごとのリスク・リターン・相関係数の3つのデータだけに着目して,投資家にとって最適なポートフォリオを検討するものです。この3つがわかると,リスクに対してリターンの効率が最も高い資産構成のパターンをシンプルに決めることができます。

この方法で求められる保有比率を効率的フロンティア(有効フロンティア)とよびます。図解すると次のようになります(図は東証マネ部!より)。

効率的フロンティアの図(東証マネ部より)

ここでは3つの証券が書かれていますが,いくつであっても同じような図を書くことができます。

詳細はさておき,からまでの青線が,無リスク資産を考えずに検討される効率的フロンティアです。この青線の形を決めるうえで,相関係数がとくに大きな役割を果たします。

相関係数は-1から1までの値をとります。-1に近いほど分散する効果が高く,1に近いほど分散する効果は低くなり,1になると分散のメリットは生まれなくなります。

日本株と外国株の配分比率を考える意義が減った

山崎さんの記事ではリスクと相関係数の高さを調べています。簡潔には次の3つに注目しています。

  • リスクの高さは,全世界株式(日本除く)<先進国株式<S&P500
  • 全世界株式(日本除く),先進国株式,S&P500の相関係数は0.97以上
  • 日本株と上記の外国株式3種の相関係数は0.78~0.79

外国株式3種の動きかたはもはや同じといっていい水準です。また,相関係数が0.8に近い内外株式への分散投資も効果がごく限られています。山崎さんいわく,リスクが20.0%の資産A・B(相関係数0.8)を50%ずつ保有したときのリスクは19.0%。効果はないわけではないものの,分散投資の効果は微々たるものです。

近年は世界の政治的・経済的つながりがより強くなってきました。過去には国ごとに異なる値動きをしてきた株価の相関が高まり,現代ではまるで1つになったかのように動くようになってきたと解釈できます。

すると,国内株式・海外株式の組み合わせを考えてもメリットがなくなってきます。そして,リスクの高さも考えると,記事で言われているように市場全体といえる全世界株式に投資していく方法が魅力的になってきます。

なお,今回の分析は5年という比較的短い期間のデータをもとに算出したものです。そのような限界がありますが,今後各国の株価の連動性が大きく減ることは考えにくいとは思います。

全世界株式インデックスファンドのおすすめ4本

全世界株式インデックスファンドには魅力的な商品がたくさんあります。1本で全世界をカバーするなら日本を含む商品を選び,日本株を別に持っている人は日本を除く商品で外国株だけを買うようにしてもよいでしょう。

日本を含む商品で人気のものはこの2つ。

 

  • eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
    →全世界株式のなかで人気No.1
  • 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
    →バンガードETFのVTを買う投信

日本を除く商品で人気のものはこの2つ。

  • eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)
    →信託報酬が同種のファンドで最安
  • 三井住友・DCつみたてNISA・全海外株
    →低コストかつ設定から10年の運用実績がある

各ファンドを含めたリターンは毎月更新のファンド比較記事でも取り扱っていますので,ご参考に!

◆全世界株式インデックスファンドの過去リターン・信託報酬・純資産総額などを一覧比較。

【2021年12月・つみたてNISA対象】インデックスファンド比較・一覧【過去リターン・信託報酬,実質コスト,純資産総額など】
(2022/01/16)この記事は2021年版です。最新版は以下のページからどうぞ。 この記事では,つみたてNISAで購入できるインデックスファンドの過去リターン・信託報酬・実質コ...

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