『本当の自由を手に入れる お金の大学』:お金に関する論点を概観できる本

210810 本当の自由を手に入れる お金の大学【書評】書評
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2020年に発売された話題の1冊を入手しました。本書を読み終えた友人からもらいました。

著者の両学長は著名人ですが,これまでその発信にほとんど接点がありませんでした。

ただ,この本は発売時から気になっていました。その理由は「個人の資産形成・家計管理における論点が集約されていること」です。

節約や投資などの個々の論点について詳しく,かつわかりやすく書かれた本は他にもたくさんあります。しかし,論点を概観していくような本はあまりありません。今回手にとってみて,その点では期待を裏切らない1冊でした。

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目次と全体の内容

STEP0 経済的に自由になるための基本――お金持ちの大原則
STEP1 《貯める》――支出を減らして貯蓄を増やそう

通信費
光熱費
保険


税金
STEP2 《稼ぐ》――稼ぎを増やして蓄財ペースを上げよう
転職
副業
STEP3 《増やす》――貯蓄を投資にまわして資産運用しよう
準備編
株式投資
不動産投資
STEP4 《守る》――形成した試算を守ろう
STEP5 《使う》――人生を豊かにすることに使おう

「貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う」の5つの手段を通じて,「生活費<資産所得」によって達成される経済的自由をめざすという構成です。

手に取るとわかりますが,全体のページ数の半分が「STEP1 《貯める》」に割かれています。なかでも「保険」に46ページ,「家」に30ページ,「税金」に24ページと,この3つに合計100ページが使われているところは注目です。

支出の規律をとることなくして,資産形成を進めることは難しいです。また,保険や家,税金といった大きな支出から手を付けていくという考え方には私も賛成です。

「STEP2 《稼ぐ》」「STEP3 《増やす》」は,最低限知っておくべき留意点が簡潔にがまとまっています。基礎的なところを学び,実際にやるときには,それらのテーマに詳しい本や実践事例で理解を深めていくのがよさそうです。

「STEP4 《守る》」以降は割かれるページは少なく,おまけ程度です。実質的には,「STEP3 《増やす》」までが本書の内容です。

資産形成における選択肢を知ることに役立つ

最も評価したいのは,冒頭に書いたように「個人の資産形成・家計管理における論点が集約されていること」です。

要するに,この本の「目次」です。私が最も読みたかったのはここ。

これから資産形成を始める人にとって,全体を俯瞰した「地図」を入手することは重要です。どこにどんな論点があるかを知り,優先順位の高いところから手を付けていくという方法をとることができます。

問題点を知らなければ気づくことができませんし,よい方法を選択することもかないません。そのうえで,本書の目次はよく整理されているというのが私の評価です。

他にも,資産形成を始めたい人を登場人物として,ストーリーにのっとって展開されていることもよかったです。論点を提示し,正解・不正解を示して理由を簡潔に説明するスタイルで,テンポよく読めました。

手に取りやすい本を求める人を想定しているのでしょう。

また,公的保険制度の概要や投資信託の仕組みを簡潔に図表に落とし込んでいるところも,入門書として親切です。節約・投資の具体的な方法も指南されていることから,すぐに実践に移せそうな感じがします。本書が売れる理由はよくわかりました。

どんなところに注意すべきか,ざっと知りたい人には適した本でしょう。

疑問に感じたところ

一方で,違和感を持ったところもあります。最も注意が必要なことは,対立意見や不確定事項を詳しく検討していないところです。

論の展開では自説の主張とその根拠をまとめるだけでなく,異なる立場の見解や,前提が崩れたときの影響を精査していく必要があります。そこがかなり省略されていることも相まって,論理があやしいところがあるのは残念でした。

例えば,保険の要否については,「日本には充実した公的保険があるので,民間保険は不要」と読めるところがあります。

一見すると正しいしているようですが,公的保険の充実度合いと民間保険の要否はまた別の話です。また,「保険会社が手数料を取っているぶん,民間保険は損な商品」といったような記述もあり,論点がすり替わっているようなところもありました。

この本を「卒業」したらテーマを掘り下げていくと良さそう

この本は,正解と不正解を提示して,その理由を列挙し,効率よく点数を取ることを追い求めるような構成になっています。「大学」と銘打つものの,これは予備校の授業や参考書の構造に近いものです。それもあって本書の読後感は,納得したというよりは説得されたような感じでした。

短期間である一定の知識を得るには良い構成で,さまざまな論点を収集・整理した入門書としては価値のある1冊です。本書を読んだあとは,たとえば制度や仕組みを知るためにFP3級試験を受けたり,より詳しくテーマを掘り下げた本へステップを進めて考え方を学んでいくことで,この本の良いところをさらに生かせるのではないかと感じます。

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