この記事で紹介する「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」と「NZAM・ベータ NASDAQ100」は,米国新興市場のナスダック100指数をベンチマークとする投資信託です。
当記事をご覧の方はおそらく,米国籍ETFのQQQ(Invesco QQQ Trust Series 1;インベスコ QQQ 信託シリーズ1)にもご関心をお持ちでしょう。QQQは資産総額約1452億ドル(約15.1兆円,2020年12月12日時点)に及ぶ人気商品です。「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」はQQQを買い付けたり,同じ銘柄を組み入れたりする投資信託で,基本的にはQQQと同じ値動きになります。
ナスダック100指数は騰落が激しいので,「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」と「NZAM・ベータ NASDAQ100」は値動きが大きい商品です。
私はQQQを保有していますが,ほかに保有している投資信託と比べて,上がるときも下がるときも幅が大きいと感じます。
ここからは,QQQと同じ値動きをするこの2つの投資信託について情報をまとめていきます。
「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」と「NZAM・ベータ NASDAQ100」の基礎情報
「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」(以下,iFreeNEXT NASDAQ100)は2018年8月31日設定,「NZAM・ベータ NASDAQ100」は2020年3月12日に設定されました。
ベンチマーク:ナスダック100指数
すでに述べたとおり,どちらのファンドもナスダック100指数に連動する投資成果をめざすファンドです。
ナスダック100指数は,ナスダックに上場する企業のうち,金融銘柄を除く時価総額上位100銘柄による時価総額加重平均型株価指数です。アップル・アマゾン・マイクロソフト・フェイスブック・アルファベット(Google)のIT5社で指数の4割以上を占めています。
この指数に連動するETFがQQQです。2つの投資信託はQQQを買い付けるか,同じ銘柄を組み入れるため,運用成績はQQQとほぼ同じになります。
正確には,2つの投資信託の運用成績は,ナスダック100指数に比較して,QQQから出る配当分だけ上回り,次項で示すコスト分だけ下回ります。しかし配当もコストも比率が小さいので,ほぼナスダック100指数に連動すると考えておけばよいでしょう。
◆QQQの記事には組入銘柄やナスダック100指数の長期推移などをまとめています。
信託報酬などのコスト:信託報酬+QQQ経費率+その他コスト
保有期間中に運用会社に支払う信託報酬は次のとおりです。NZAM・ベータ NASDAQ100のほうが0.05%低い設定です。
iFreeNEXT NASDAQ100 | 年率税抜0.45% |
NZAM・ベータ NASDAQ100 | 年率税抜0.40% |
同じ米国株でも,S&P500連動のインデックスファンドは信託報酬が0.1%を切る「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」や「SBI・バンガード・S&P500」などがあります。それに比べればかなり高いです。
これに売買委託手数料やその他費用などがかかってきます。また,わずかな金額ではあるものの,iFreeNEXT NASDAQ100は組入銘柄の5%程度はQQQを保有しているので,その分にはQQQの経費率(年率0.20%)もかかってきます。
それらのコストを踏まえると,iFreeNEXT NASDAQ100は,実質コストとしては年間0.59%程度であったと推測されます(第2期「運用報告書(全体版)」をもとに作成)。
NZAM・ベータ NASDAQ100はまだ運用開始から間もないため実質コストは不明です。
信託報酬が安いことはファンド選びの上で重要なため,昨今の低コスト化を見ていると,もう少し競争が進んでほしいと思います。
純資産残高:コロナ・ショック以降大きく増加中
ファンドの規模を示す純資産総額は次のとおりです。先に設定されたiFreeNEXT NASDAQ100のほうが大きいです。
iFreeNEXT NASDAQ100 | 139.26億円 |
NZAM・ベータ NASDAQ100 | 12.35億円 |
信託報酬はNZAM・ベータ NASDAQ100のほうが安い設定ですが,現時点では様子見としている人も多いのかもしれません。
iFreeNEXT NASDAQ100の純資産総額は2020年に入ったころから増えはじめ,3月以降に加速しています(2020年12月8日の月次レポートより)。
NZAM・ベータ NASDAQ100の純資産総額も増加傾向にあります(2020年11月16日の運用レポートより)。
コロナ・ショックではIT銘柄への注目が高まったこともあり,IT企業を多く組み入れるNASDAQ100指数を買う人が増えたのかもしれません。
取り扱い販売会社:ネット証券中心
ファンドを購入できる販売会社はネット証券が中心です。SBI証券,楽天証券,マネックス証券などで購入することができます。
iFreeNEXT NASDAQ100 | 10社 |
NZAM・ベータ NASDAQ100 | 5社 |
詳しくは各社のウェブサイトをご確認ください。
なお,執筆時点ではつみたてNISAの対象商品ではありません。ですが,2019年に対象商品に追加された「eMAXIS NYダウインデックス」(2013年設定)のように将来的には対象商品に追加されるかもしれません。
QQQへの直接投資に比べて少額投資や定額定期買付に向いている
iFreeNEXT NASDAQ100とNZAM・ベータ NASDAQ100はQQQと同じ指数に連動します。しかし,商品としての特徴は異なるので,目的に合わせて使い分けるのがよいでしょう。
投資信託は保有期間中に,信託報酬などのコストがかかってきます。そのため,単純に保有し続けるコストだけを考えれば,QQQを直接購入するほうが有利に思えます。
しかし,投資できる金額の制約や売買手数料,ドル資金の準備や配当金の再投資の手間などを考えると,国内投資信託のiFreeNEXT NASDAQ100やNZAM・ベータ NASDAQ100には利点があります。
とくに,少額投資やドルコスト平均法(定額定期買付)での購入には好都合です。
QQQの株価は2020年12月11日時点で1株あたり301.85ドル(約3.14万円)でした。
これが単価なので,それ以下の金額で購入することはできません。したがって,ドルコスト平均法などの定額買付は難しい人が多いでしょう。数十万円以上の金額で定期買付するなら別としても,数万円程度の定期買付であると無駄が大きくなってしまいます。
10万円を毎月投資するような場合は初月に3株しか買えず,残る約1万円は待機資金となってしまいます。
それに対して,投資信託の2つは100円から細かく購入金額を指定して買うことができます。QQQの単価未満でも購入できるので,投資金額が少ないほどこの点はメリットとなります。
また,これは配当金の再投資の際も同様です。QQQは配当利回りが低く,直近では1%を割っています。つまり,100株持っていたとしても1年間では1株も買えません。その間,資金を待機させておくことになってしまいます。
投資信託はこの点でも便利です。配当金は自動的にファンド内で再投資されるので,待機資金の問題はなくなります。
そもそも,QQQの購入のためにドルを準備したり,配当金を再投資したりするのは手間でもあります。手間を減らしたい人にも投資信託が向いていると思います。
コスト面では保有コストではQQQが有利です。iFreeNEXT NASDAQ100の保有コストが年率0.59%,QQQの経費率が年率0.20%です。一方で,購入時・売却時のコストとして,ETFは手数料がかかります。また,配当金の再投資の際には,QQQは課税後の再投資となるために効率がややわるいです。
このような要素を考えれば差は小さいものですので,私としては,投資法にかける手間などを踏まえて投資信託を選んでもよいと思います。
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コメント
QQQとifreeの記事とても興味深い内容で面白かったです。有益な情報の共有をありがとうございます。
そこで質問なのですが、当方21歳現在S&P500(sbi-sbi バンガード)は積立で保有しており40万×5年分は手元にある状態です。
その他にNASDAQ100に魅力を感じまずは80万円をアノマリー考慮した上で6月から9月の間に20万円ずつ購入しようと考えていました。
なまずん様の最終的な結論としては長期的に見てifreeの手数料+隠れコストは取るに足らないということでしょうか?
突然の不躾なメッセージ申し訳ありません。
よろしければ後学のためにもご教授いただきたくおもいます。
コロナウイルスが日に日に猛威を奮っております。ぜひご自愛ください。一読いただきありがとうございます
はじめまして。丁寧なコメントをありがとうございました。手堅く投資をされているようで素晴らしいです。NASDAQ100は値動きが激しいものの,有望な企業が多い指数だと私は思っています。
細部まで検討できたわけではありませんが,ご質問のパターンであればQQQを直接購入したほうがよいと私は感じます。
iFree NASDAQ100の第1期運用報告書をみると,1年間の運用成績は配当除く指数に対して+0.4%にとどまります。信託報酬+隠れコストは合計で0.55%程度ですので,QQQに対して0.55%ほど下振れしていると考えられます。100万円に対して,年間5,500円程度のコスト差がでていたと思います。
本記事の趣旨としては,①1株単価の高いQQQを少額投資で買うのは難しい,②ドルコスト平均法のように定額定期買付には投資信託のほうが向いている,③そもそも投資金額が少なければ,ETFと投信の保有コスト差は実際の金額としては少ない,という考え方の紹介にあります。
また,運用期間の長さや純資産総額などの投資商品としての信頼性については,QQQのほうが高いです。
繰り返しになってしまいますが,いただいた情報をもとに私が考える範囲では,海外株であるQQQの購入・保有にとくに不自由がなければ,QQQを選んだほうがよいと感じます。
早速のご返答ありがとうございます。
完結かつとても腹に落ちる回答に納得すると同時に私の勉強不足を痛感いたしました。
この度はご多忙の中お時間をいただいてしまい申し訳ありませんでした。
これからも是非なまずん様の記事等々から学ばせていただきたく思います。
本当にありがとうございました。
こちらこそご返信をありがとうございました。
自分で読み直して,記事中で説明不足な点も多かったことを反省しています。
近いうちによりわかりやすくなるように修正を検討します。
今後ももし何かあればお気軽にご連絡ください。
なまずん様
はじめまして。今回の暴落を機にSBIに口座を開き、投資をはじめた初心者です。現在30代で2人の幼稚園児の父親なのですが、教育資金のために長期的に投資をしようと考えております。
いろいろと調べてQQQやSPYD(などの高配当ETF)への投資を魅力を感じてます。
そこでお聞きしたいのですが、QQQを直接買い付ける(NISA枠を使わず)ことと、つみたてNISA枠を使って記事にもある通りiFree NASDAQ100を購入するのとどちらがおすすめなものでしょうか。
お忙しい中恐縮ですが、ご教授頂けますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
MKパパさま
はじめまして。コメントをありがとうございます。
ご返信が遅れましたこと,誠にお詫び申し上げます(引越直後で,荷物整理に追われてしばらく時間をとれませんでした)。
暴落を機にネット銀行に口座を開設されたとのことと,その行動力は素晴らしいと私は思います。
ひとつ申し上げますと,「iFree NASDAQ100」は,2020年5月時点では,つみたてNISA対象ファンドではありません(その旨は記事中にもさらっと書いただけでしたので,リライト時にはもう少し目立つように検討します)
ですので,QQQでもiFree NASDAQ100でも,課税口座から購入することになります。
本記事の趣旨としては,①1株単価の高いQQQを少額投資で買うのは難しい,②ドルコスト平均法のように定額定期買付には投資信託のほうが向いている,③そもそも投資金額が少なければ,ETFと投信の保有コスト差は実際の金額としては少ない,という考え方の紹介にありました。
毎月数千~数万円程度で積み立てていくつもりであればiFree NASDAQ100のほうが使い勝手がよく,ある程度まとまった金額で購入し,保有し続けるにはQQQと使い分けるのがよいと私は考えています。
また,これまでの運用期間の長さや純資産総額などを考慮した「投資商品としての信頼性」については,QQQのほうが高いです。
私はどちらかというと後者のほうなので,QQQを購入しています。
お子様の教育資金づくりがうまく進むことを心より願っております。
あくまで過去の値動きですが,QQQはアップル・グーグル・アマゾン・フェイスブックといったハイテク銘柄が中心なので,上がるときは大きく上がるものの,暴落時は大きく下がる傾向があります(たとえば,ITバブルの崩壊時には5分の1程度になっています)。
そのため,使う時期がある程度決まっている教育資金づくりには,QQQに頼りすぎるのは危険と私は感じます。
立ち入り過ぎなコメントとは存じますが,進学と暴落が重なるリスクをご検討いただいたうえで,対処可能な割合を投資に振り向ける計画を立てられるのがよいのではないか,と考えております。
やや蛇足なところもございますが,以上でご回答とさせていただければ幸いです。
いつも良記事楽しく拝見してます。
QQQは魅力的で、農林中金からもβNQ100が発売されましたね。
おそらく、今のところ、投信でQQQ連動で買えるのはこの2本だけでしょう。
信託報酬だけみればこちらも魅力的ですが、ある程度期間が経ち、実質コストとか把握できるようになれば比較記事とかも面白そうですね。
新しいものの好きの自分としてはとりあえずβNQ100に食いついてみました。(笑)
あるかりさま
ご覧いただきましてありがとうございます。
農林中金のこのファンドは耳にはしましたが,恥ずかしながらこれまで全然確認してきませんでした。
iFreeより信託報酬が安いのですね。
比較することなどをご提案いただき膝を打つ思いです。
次回のリライト時にはぜひ,検討させていただきます!
非常に有益な記事をありがとうございます。
iFree NEXT NASDAQ 100とQQQの総手数料差には、QQQの買付手数料(私の利用している楽天証券ですと0.495%)も加味されておりますでしょうか?
また、定額定期買付の恩恵で購入口数を自動で調整できる点も踏まえると、QQQを毎月買い付けていく資金力がないわけではないのですが、どちらにするべきか悩んでいるところです。
徐々に増えてきてはいると思いますが、記事にある対抗馬の存在で購入層が分散したり、
その他の事柄に起因して繰り上げ償還になる可能性がQQQよりも圧倒的に高い点は考え得るリスクだと思いますが。
ぺこぱさま
コメントをありがとうございました。
>QQQの買付手数料(私の利用している楽天証券ですと0.495%)も加味されておりますでしょうか?
こちらは含んでいません。信託報酬と異なり,評価が難しいためですが,確かにこれも追記したほうが親切ですね。
貴重なコメントに感謝申し上げます。
長期運用するならば,QQQを買うほうがコスト的には有利です。
しかし,端数で買えたり,ファンド内で再投資ができたりする投信のほうが資金効率がよい面もあります(すみませんが,具体的にどのあたりで損得が分かれるかはまだ検討していません)。
また,コストは投資金額に比例するので,投資金額が大きくなければ,わずかなコスト差は無視して投信で自動化してしまい,楽なほうを取るのもありだと思います。
おっしゃるとおり,繰上償還のリスクは比較にならないので,数十年単位で持つつもりならQQQを購入したほうが安心かもしれません。
いつも有益な記事をありがとうございます。NISA枠を満額利用しての買い付けを行おうと思っているのですが、ETF(QQQやVIG)か個別株(GAFA等)どちらがより良い選択だと思われますか?ご意見お願い致します。
ヤマトさま
コメントをありがとうございます。QQQやVIGはあくまで例であり,ご質問の趣旨は例ETFと個別株のどちらを買うべきかとの内容かと理解しています。極論を申し上げれば投資スタイルによります。ただその上での私の意見としては,特定の企業の株を持ちたいのであれば個別株,そうではなく,セクターや指数で考えているならばETFで十分と思います。また,ETFは商品の方針にのっとって自動的に組入銘柄が変わっていきますが,個別株は自らメンテナンスするところに特徴があるので,どちらがよいかはやはりどんな投資をしたいかによるでしょう。ただし,個別株投資であればある程度,ご自身で投資先を分散させることを私はおすすめします。