つみたてNISAの対象商品には13本の全世界株式インデックスファンドが承認されています。
しかし、同種のインデックスファンドでも、その運用成績はまったく同じにはなりません。コストや運用によって差がでます。
では、最も運用成績がよいファンドはどれでしょうか?
この記事では、基準価額の推移をもとに過去の損益率を比較しました。最終的な損益を分析することで、見えないコスト面も含んだファンドの総合的な実力を知ることができます。
2022/08/04 2022年7月末の情報に更新。
2022/09/03 2022年8月末の情報に更新。
2022/10/03 2022年9月末の情報に更新。
2022/11/03 2022年10月末の情報に更新。
2022/12/03 2022年11月末の情報に更新。
全世界株式インデックスファンドの対象指数は3種類
全世界株式インデックスファンドには3種類の対象指数(ベンチマーク)があります。日本を含むものと含まないものがあります。
MSCI ACWI(日本を含む)
MSCI ACWI(MSCI All Country World Index)は、米国MSCI社が算出している株価指数です。
日本を含む50か国からなり、時価総額加重平均によって算出されます。各国の大型株・中型株の約3000銘柄からなり、時価総額では約85%をカバーしています(2021年11月末時点)。
国別の構成比は次の通りで、米国が60%以上を占めています。
国名 | 構成比 |
米国 | 61.47% |
日本 | 5.72% |
中国 | 3.85% |
英国 | 3.51% |
カナダ | 2.84% |
その他 | 22.61% |
MSCI ACWIに連動するインデックスファンドには、日本を含む指数と、日本を除く指数をベンチマークとするものがあります。ここでは日本を含むファンド4本を一覧にしました。
なお、信託報酬は税抜、純資産総額の単位は百万円です。ファンドは、①信託報酬率が安い、②運用期間が長い(設定日が古い)、という順に並べています。
ファンド名称 | 1年 損益率 |
3年 損益率 |
5年 損益率 |
10年 損益率 |
信託 報酬 |
実質 コスト |
純資産 総額 |
決算日 | 設定日 | 備考 |
eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー) |
3.98% | 49.78% | – | – | 0.104% 以内 |
0.170% | 763,836 | 2022/04/25 | 2018/10/31 | |
Smart-i Select 全世界株式 |
– | – | – | – | 0.104% | 未決算 | 300 | 2023/02予定 | 2022/04/27 | |
たわらノーロード 全世界株式 |
3.87% | – | – | – | 0.120% | 0.289% | 3,624 | 2021/10/12 | 2019/07/22 | |
つみたて 全世界株式 |
3.83% | – | – | – | 0.200% | 0.280% | 810 | 2022/06/27 | 2020/03/06 | 実質コストは概算 |
ステート・ストリート 全世界株式 |
3.65% | 48.56% | 64.23% | – | 0.480% | 0.602% | 10,185 | 2021/11/30 | 2017/09/08 |
信託報酬が最も低い「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の運用成績が最も良い結果となりました。2022年1月から12か月連続です。
相変わらず「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が最もよい選択肢だと思います。
信託報酬が低いほうがリターンが高くなり、期間が長くなるほどその差が広がる傾向がみられています。
MSCI ACWI(日本を除く)
続いて、MSCI ACWIの「日本を除く指数」の比較・一覧です。
この指数を対象とするファンドは4本あります。
ファンド名称 | 1年 損益率 |
3年 損益率 |
5年 損益率 |
10年 損益率 |
信託 報酬 |
実質 コスト |
純資産 総額 |
決算日 | 設定日 |
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) |
3.98% | 51.58% | – | – | 0.104% 以内 |
0.173% | 189,419 | 2022/04/25 | 2018/03/19 |
Smart-i Select 全世界株式(除く日本) |
– | – | – | – | 0.104% | 未決算 | 243 | 2023/02予定 | 2022/04/27 |
野村つみたて 外国株投信 |
3.90% | 51.42% | 69.22% | – | 0.190% | 0.238% | 70,137 | 2022/05/12 | 2017/10/02 |
三井住友・DCつみたてNISA 全海外株 |
3.84% | 50.55% | 67.77% | 271.96% | 0.250% | 0.355% | 121,541 | 2021/11/30 | 2011/04/18 |
eMAXIS 全世界株式 |
3.41% | 49.14% | 65.29% | 268.99% | 0.600% | 0.722% | 22,320 | 2022/01/26 | 2010/07/20 |
過去1年間のリターンでは「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」が6か月連続で最も良い結果となりました。トップを取ったのは2022年1月からの集計で、「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」が11回、「野村つみたて外国株投信」が1回です。
「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」と「eMAXIS全世界株式」はマザーファンドを共有しています。そのため、運用そのものの差はほとんどありません。3年間で約2.5ポイントもの差がついているのは信託報酬の差が大きいですね。
FTSE Global All Cap指数
FTSE Global All Cap指数は、英国FTSE社が提供する株式インデックスです。
日本を含む49か国が含まれる、時価総額加重平均の株価指数です。構成国は49か国の約9000銘柄で、小型株も含むところがMSCI社の指数と異なります。時価総額で95%以上をカバーしているところが、MSCI ACWIとの大きな違いです(2021年11月末時点)。
国別の構成比は次の通りで、こちらも米国が60%以上を占めています。ただ、MSCI ACWIとは、英国と中国の割合の順位が逆になっています。
国名 | 構成比 |
米国 | 60.20% |
日本 | 6.25% |
英国 | 3.80% |
中国 | 3.62% |
カナダ | 2.83% |
その他 | 23.30% |
なお、全世界株式ETFで広く知られているVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)はFTSEの指数に連動します。
この指数に連動するインデックスファンドは3本です。「SBI・V・全世界株式」が2022年1月に設定されました。
ファンド名称 | 1年 損益率 |
3年 損益率 |
5年 損益率 |
10年 損益率 |
信託報酬 | 実質コスト | 純資産総額 | 決算日 | 設定日 | 備考 | |
SBI 全世界株式(雪だるま) |
4.03% | 47.98% | – | – | 0.104% | 0.122% | 80,456 | 2021/11/12 | 2017/12/06 | 信託報酬・実質コストに原資産経費率約0.042%(年率)含む | |
SBI・V 全世界株式 |
– | – | – | – | 0.138% | 未決算 | 14,820 | 未決算 | 2022/01/28 | 信託報酬・実質コストに原資産経費率約0.08%(年率)含む | |
楽天 全世界株式 |
3.57% | 47.95% | 62.41% | – | 0.190% | 0.238% | 226,472 | 2022/07/15 | 2017/09/29 | 信託報酬と実質コストに原資産経費率約0.08%(年率)含む |
運用成績は「SBI・全世界株式(雪だるま)」が「楽天・全世界株式」を上回りました。2022年1月からは、「楽天・全世界株式」が7回、「SBI・全世界株式(雪だるま)」が5回トップを取っています。
「楽天・全世界株式」はマザーファンドを通じて米国バンガードのVTを購入しているのに対して、「SBI・全世界株式(雪だるま)」は3種のETFを組み合わせて、指数への連動をめざす方式です。この運用方法の違いが差を生んでいると思われます。
運用方法を踏まえると「楽天・全世界株式」のほうが指数に忠実に連動しているので、私はこちらを評価しています。
また、2022年1月に新たに「SBI・V・全世界株式」が設定されました。
これは「楽天・全世界株式」と同様にバンガードのVTを購入していくファンドです。それでいてこちらのほうが信託報酬が安いので、「SBI・V・全世界株式」が「楽天・全世界株式」を上回る成績を残すのかどうか注目しています。
1本に絞るなら、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」
MSCI ACWIとFTSE FTSE Global All Capの構成は大きくは変わりませんが、組み入れる銘柄数には約3倍の差があります。
その差はおもに、時価総額の小さい小型株の有無です。つまり、小型株の運用成績が大・中型株を上回ればFTSEのほうが好成績となり、逆になればMSCIのほうが好成績になります。
ただし、銘柄が少ないMSCI ACWIも、時価総額では85%以上を組み入れています。それもあって、両指数の値動きは大差ないと考えてよいでしょう。
ふつうに投資に取り組む人にとっては、注目すべきほどの差はありません。それよりは投資を始めて、継続していくほうがずっと重要です。
最近は全世界株式インデックスファンド1本だけで資産形成を進めていく方法も人気です。もしそうするなら、最も純資産総額が大きく、かつ運用コストもかなり抑えられていると考えられる「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」を選ぶのがよいと考えています。
もし、小型株も含めてより多くの銘柄に分散することに魅力を感じるなら、「楽天・全世界株式」を選ぶのもありでしょう。また、日本の個別株や日本株の投資信託を持っている人は、「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」などの日本を除く全世界株式を選ぶのもよいと思います。
◆米国株式や先進国株式など、その他の指数に連動するファンドの比較はこちらから!
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