「物価上昇」がだんだんと現実味を帯びてきました。欧米ではここ数か月、前年比で4~6%台かそれ以上の物価上昇率を記録しています。国内でも値上げのニュースが続いていますね。
コロナ禍からの需要回復もあり、すでに昨年のうちから資源・エネルギーや食料の価格は世界的に上昇してきました。そこにロシアによるウクライナへの侵攻もあって物価上昇に拍車がかかっています。
日本の物価は過去25年間でほとんど伸びていません。しかし、「今度こそは物価が上がるだろう」と考えている人も多いと思います。
インフレには株式やリート
経済情報メディアのQUICK Money Worldに、インフレ時にどのような資産を持つのが良さそうかを考察した記事がありました。
具体的には、1972年以降の約50年の米国のデータをもとに、株式(S&P500)、リート、金、商品のそれぞれのリターンやリスクを比べています。
最初に結論をいえば、インフレ時にも運用は「株式やリートが中心」というものでした。記事では、1970年代のスタグフレーション期と、徐々にインフレ率が高まっていった2000年代の状況をほかの年代と比較しています。
詳しくは記事を読んでいただくとして、おおまかに次のような内容が論じられていました。
- リターンが安定しているのは米国リート、米国株式
- 米国株式はインフレ率が高まる時期にもボラティリティ(リスク)が安定
- 金・商品はインフレ率が高まる時期のリターンは高いが、そうでないときのブレが大きい
「金や商品がインフレに強い」というのはよく言われるとおりのようですが、株式・リートがそう劣後するわけではありません。インフレ時以外もみると、金や商品は価格の変化が大きいです。対して、株式やリートはリターンが比較的安定していて、かつ物価上昇時にも目減りするわけではない、というデータでした。
ちなみに記事には「『商品やゴールドに投資をすること』と『ビジネスに投資をすること』の違い」「ビジネスでは、原材料は『踏み台』であり、そこに人間の賢さを載せる」という解説もあります。ここの話は腑に落ちるものでした。
インフレになっても、ビジネスでは上がった原料価格・賃金にさらに付加価値を上乗せしていく構図は変わりません。そのためリターンは比較的安定する……という考え方です。
ということで結局は、株を買っておくのが良さそうです。
個人で考えている対策はシンプル
さて、ここからは私が個人的に考えているインフレ対策です。
投資先を特定の地域に絞る必然性までは感じていないので、全世界に分散していきます。投資のほかにも、短期的には「どうせ買うものは今のうちに手に入れておく」というのもあります。将来の買い物を「前借り」できる範囲に限りますけどね。
株の値動きは大きいものの、たとえば30年後からみればほぼ確実にプラスになります。先に紹介した記事にあったように、ビジネスは付加価値をつけていくプロセスです。付加価値が運用収益の源泉なので、長期的にはある程度の範囲の実質リターンに落ち着くという考えです。
これは非常に概念的なのですが、私はインデックスファンドを「買って(手元で大事にしながら)放置しておく」と言うより、30年後の自分に対して「買ったら即、(はるかかなたに)ぶん投げていく」ようなイメージで保有しています。
対策をできている人とできていない人の差は開く
以降は私の推測ですが、いまの日本でインフレが進むと、インフレ対策ができている人とできていない人では大きく差が開いてしまいそうだと考えています。その理由は2つあります。
- インフレが進んでも、給与がそれ以上に伸びるかどうかは不透明
- インフレ率>金利の状態がしばらく続く
労働運動が盛んな時代には、「インフレが進んだら昇給を団体交渉で勝ち取る」という考え方もありました。でも近年はそのような会社・業界は限られてきています。
ほかにも「転職(または個人で交渉)すれば給与が上がる」という声もありますが、そのような強者ばかりではありません。人材確保のために給与が上がる業界・企業もあるでしょうが、「全員の給与が上がる」という「横並び」にはならないでしょう。
さらに、日銀は物価上昇率が2%程度に安定するまで緩和を続ける(=低金利を維持する)方向でここまで進めてきています。ということは、「インフレ率>金利」の時代がしばらく続きます。したがって無リスク資産の貯蓄だけでは確実に資産が目減りしてしまいます。
これまでは「運用しなければ増えない(でも目減りはしない)」という状況で済んでいました。しかし、インフレが進んだときに、運用なくしては収入や資産の目減りが同時に起こり得るかもしれません。
もちろん、そんな状況になれば、対策を取っている人にも悪影響はあります。それでも、運用で収益を得るという対策を取れているかどうかで差がつくことになるのではないかと思っています。
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