4月14日のモーニングスターの記事に、気になるテーマがありました。「新興国株式」を投資対象に含めるか? といった内容でしたが、私は記事のなかで「新興国株式と先進国株式にリターンの差はどれくらいあるのか」という点に関心をもちました。
ご存じのとおり、ロシアはウクライナに侵攻したことで、世界の国の多くから制裁を受けています。そのような背景から株価は大きく下がりました。
3か月で約-90%になったファンドが3本あります。ブル・ベアファンド以外でこの下落率を記録したのは初めてだそうです。
近年暴落しているのはだいたいロシア株
記事には、現存するファンドの「3か月での下落率」が大きかったトップ10がまとめられています。詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、トップ10の内訳は次のとおりです。
- 2022年のロシア関連が6本
- 2020年の原油関連が2本
- 2008年の東欧・ロシアが2本
「現存するファンド」という条件付きですが、原油を除けばロシア関連の株がよく暴落しています。
今回の下落はロシアの政治的なリスクが顕在化した形です。2008年はリーマン・ショックで新興国がとくに大きな打撃を受けました。
ロシアだけでなく新興国は政治的なリスクが比較的高いと言われているので、そもそも投資しないという人もいますね。幸い、ロシア株の組入比率は新興国株式のなかでも数%なので、これが致命的になることはないでしょう。投資先を分散する理由の一つです。
先進国も新興国もリターンはほぼ同じ
では、新興国株式の過去のリターンは、先進国株式と比べてどうだったのでしょうか? 記事では「ほとんど差がなかった」としています。
過去指数の推移をみる限りでは、10年程度の期間では最大で3~5%乖離する時があるものの、長期的には乖離は解消される傾向にあり、変動率の高さも含めてどちらかの指数を選んだことで明らかな有利・不利はなかったということになる。
1987年12月を基準にすると、2000年ごろには先進国が優位に、2010年ごろには新興国が優位に、そして2022年頃には先進国が再び優位になっています(表は記事より)。
10年単位でみると、数%の振れ幅はあるものの、新興国も先進国も大きな差がない結果になっていますね。
なお、リスクについてもほとんど差がないという結果になっています。
新興国はリスクが高いものの、相応のリターンも期待できるという説もありますが、指数レベルでは先進国と差があまり生まれないようです。分散による効果なのか、この35年がたまたまなのか。
予想は難しいので結局はどちらも買うのが私の戦略
株式市場はある程度は効率的です。「先進国と新興国では、どちらかが大きく儲かる!」と多くの人が考えた場合は、一方だけが買われて、結局は適正な水準になります。そう考えれば、リスクに大差がない投資対象では、リターンも同じような水準になります。
ただ、先進国が優位になった2000年頃に先進国株式を買い、新興国が優位になった2010年頃に新興国株式を買う……そんなトレンドフォロー型の投資をしていたら総リターンは劣後したといえます。
長い目でみれば平均に回帰する傾向が見られるので、先進国または新興国のみを選ぶのであれば、「人気になっているから選ぶ」「直近のリターンが高いから選ぶ」という方法は得策ではないと私は思います。
要するに、これは株価形成のしくみでもありますが、株による収益の優劣は「買っている人の現在の予想」と「将来時点におけるその後の予想」の差によるところが大きいです。その投資対象の実際の成長度合いも重要なのですが、周りの人がどう予想しているか(そして将来にどう予想されるか)にかなりの影響を受けるわけですね。
多くの人の期待値を超えて高成長を遂げ、その後も高成長を遂げると予想される……という株が一番儲かることになります。
この20年で新興国が世界のGDPに占める割合は約20%から約40%に増加しました。これからも増えていくでしょう。だからといって「先進国株式よりも新興国株式のほうが儲かる」とは言い切れないのが投資のおもしろいところ。
私は「どちらも買っておく」(=全世界への投資)という方法で、時価総額比で保有しています。予想を当てるのは難しいので、平均に乗っかるいつもの「弱者の戦略」で切り抜けていきます。
平均に回帰しなかった場合の最上級のリターンを得ることはできませんが、リターンの安定のためには有効な戦略ではないかと思います。
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