ネット証券最大手のSBI証券が,iDeCoのプランを大きく改定します。
SBI証券が9月27日にiDeCoの新プラン「セレクトプラン」を発表し,ラインアップ予定の商品が公開されました(プレスリリースより)。
2005年から提供されているこれまでのプランは「オリジナルプラン」となり,「セレクトプラン」は2018年11月1日(木)から受付開始。一度換金されてしまいますが,移行を申し込めば「オリジナルプラン」→「セレクトプラン」の移行も可能です。
新プランは低コスト商品が揃い,魅力的です。新旧プランと,私が開設している楽天証券のiDeCoラインアップの大手2社3ラインアップを比較したいと思います。
アセットクラスごとに信託報酬を比較
投資信託を用いた長期投資のリターン向上に,投資家ができることは限られています。そのなかで,運用コストの低廉化は確実にリターン向上に結びつく重要な要素です。
そこで,本記事ではSBI証券「セレクトプラン」,「オリジナルプラン」,楽天証券について,アセットクラスごとに最も信託報酬が安価な商品を比較します(情報は2019年7月15日時点。信託報酬は年率,税抜表示)。
2018年5月,確定拠出年金法の改正に伴い,運営管理機関はiDeCoの運用商品を35以下とすることが規定されました。SBI証券はこれまで,豊富な商品ラインアップ(67商品,今後の「オリジナルプラン」)を売りにしていました。2018年9月時点で「オリジナルプラン」に入っている67商品は,2023年までに35以内に減る見込みです。
なお,除外対象となるファンドでも,2018年4月30日時点で保有していた数量までは継続保有可能です。
すでにSBI証券「オリジナルプラン」のiDeCoの除外対象となるファンドは決まっていますが,本記事では運用予定商品も含めて記載します。
国内株式:SBI証券セレクトプランが最安
●SBI証券セレクトプラン
・eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
・<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド
信託報酬:0.140%以内
●SBI証券オリジナルプラン
・三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド
信託報酬:0.160%
●楽天証券
・三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド
信託報酬:0.160%
SBI証券セレクトプランにラインアップされる2投信がトップです。
とはいえ,SBI証券オリジナルプラン,楽天証券とも十分に低コストな投資信託をラインアップしています。
先進国株式:SBI証券セレクトプランが最安
●SBI証券セレクトプラン
・eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
・<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
信託報酬:0.0999%以内
●SBI証券オリジナルプラン
・DCニッセイ外国株式インデックス
信託報酬:0.140%
●楽天証券
・たわらノーロード先進国株式
信託報酬:0.200%
SBI証券セレクトプランにラインアップされる2投信がトップです。
SBI証券オリジナルプラン,楽天証券のラインアップも十分低コストな投信ですが,信託報酬の低コスト化が激化する今は割高感が無きにしもあらずですね。
米国株式:SBI証券セレクトプランか楽天証券
先進国株式の中でも,米国株式に限った場合,SBI証券セレクトプランには「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)(信託報酬:0.150%以内),楽天証券には「楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド(全米株式))(信託報酬:0.150%)(通称:楽天VTI)がラインアップされています。
ベンチマークが異なりますが,米国株式に限定すれば楽天証券も有力です。
新興国株式:SBI証券セレクトプラン
●SBI証券セレクトプラン
・eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
信託報酬:0.189%以内
●SBI証券オリジナルプラン
・EXE-i新興国株式ファンド
信託報酬:0.23%程度
●楽天証券
・インデックスファンド海外新興国(エマージング)株式
信託報酬:0.55%
SBIセレクトプランにラインアップされたeMAXIS Slim新興国株式インデックスがトップです。
楽天証券とは約3倍信託報酬に差があります。新興国株式はSBI証券セレクトプラン一択です。
全世界株式:SBI証券セレクトプラン
●SBI証券セレクトプラン
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(全世界株式))
信託報酬:0.142%程度
●SBI証券オリジナルプラン
※全世界株式に投資する商品はなし
●楽天証券
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド(全世界株式))
信託報酬:0.210%
SBIセレクトプランにラインアップされたSBI・全世界株式インデックス・ファンドがトップです。
楽天証券には通称・楽天VTがありますが,SBI・全世界株式・インデックスファンドの低コストには及びません。なお,SBI証券オリジナルプランには中小型株ファンドはありますが,全世界株式市場全体への連動をめざす商品はラインアップされていません。
国内債券:SBI証券セレクトプラン
●SBI証券セレクトプラン
・eMAXIS Slim 国内債券インデックス
信託報酬:0.120%以内
●SBI証券オリジナルプラン
・三菱UFJ 国内債券インデックスファンド(確定拠出年金)
信託報酬:0.120%
●楽天証券
・たわらノーロード国内債券
信託報酬:0.1512%
SBIオリジナルプランにラインアップされた投信がトップです。
国内債券運用を主体にしたい場合,SBI証券のプラン変更をする必要はないかもしれません。
先進国債券:SBI証券セレクトプラン
●SBI証券セレクトプラン
・eMAXIS Slim 先進国債券インデックス
信託報酬:0.140%以内
●SBI証券オリジナルプラン
・野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)(※除外予定)
・三井住友・DC外国債券インデックスファンド
信託報酬:0.21%
●楽天証券
・たわらノーロード先進国債券
信託報酬:0.17%
SBIセレクトプランにラインアップされた投信がトップです。
eMAXIS Slim先進国債券インデックスは純資産総額が500億円を超えれば信託報酬はより安価になります。
新興国債券:SBI証券セレクトプラン
●SBI証券セレクトプラン
・iFree 新興国債券インデックス
信託報酬:0.22%
●SBI証券オリジナルプラン
・三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド
信託報酬:0.52%
●楽天証券
・インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)
信託報酬:0.52%
SBIセレクトプランにラインアップされた投信がトップです。
オリジナルプランや楽天証券の商品の信託報酬の半分以下です。
その他
8資産均等型バランスファンドについては,SBI証券では,セレクトプランに「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」(信託報酬:0.159%以内),オリジナルプランに「iFree 8資産バランス」(信託報酬:0.220%)があります。楽天証券には株式15%,債券85%で全世界の指数に連動して運用する「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」(信託報酬:0.2078%)が2018年5月に用意されました。
国内外のREITやコモディティは今回は比較しませんが,どのプランも概ね似たラインアップです。
SBI証券ユーザーであれば,セレクトプランに変更しよう
低コストのインデックス投資を国内外の株式中心に行う場合,すでにSBI証券でiDeCoを開設している人のほとんどは,セレクトプランへの移行申し込みをすべきでしょう。
セレクトプランとオリジナルプランの変更は無料で,その他の諸経費は同一です。
楽天証券とSBI証券セレクトプランでは,SBIセレクトプランのほうが低コスト商品がそろっていました。正直,もう少しいい勝負をするかと思ったのですが,eMAXIS Slimを揃えたSBIセレクトプランに軍配が上がりましたね。
コストだけを考えればSBI証券
これからiDeCoを開設しようとする人はコストだけを考えればSBI証券の一択です。しかし,現時点ではSBI証券では受取時に「一時金」「年金」のどちらかしか選べません。楽天証券など多くの運営管理機関では「一時金と年金で併給」という選択肢があり,税制上有利な受け取り方を選べる可能性があります。
すでに楽天証券など別の運営管理機関でiDeCo口座を開設している人が移管すべきかどうかどうかですが,現時点ではその必要性は少ないと思います。移管にはコスト(4000円の運営管理機関が多いです)と時間(2~3か月)がかかってしまいます。
特に拠出額が少ない人(月額1万2000円/年間14万4000円)などは,移管にコストと時間を掛けるメリットがあるとは言えません。私は楽天証券にiDeCo口座を開設していますが,現時点では変更の予定はありません。
また,運用商品ラインアップの変更や給付時の受け取り方などは今後変わる可能性があるでしょう。現時点では,SBI証券ユーザーの多くはセレクトプランに移行するのが賢い選択ですが,その他の運営管理機関から移管する必要があるとまでは言えないと私は思います。
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