いよいよ年末が迫り、2024年からの新NISAのスタートまで間近になりました。現在、課税口座で保有している商品を売却し、新NISAで買い付ける人もいるでしょう。また、なかには私のように、2019年に買い付けた一般NISA口座が期限を迎えることから、これを売却し、その資金で新NISAで新たに買い付ける人もいると思います。
運用期限がくる一般NISA口座と特定口座で同じ投信を持っていて、かつ特定口座で利益が乗っている場合には、特定口座に払い出されてから売却すると不利になってしまいます。年内に売ったほうがいいのです。
特定口座に払い出されてしまうと、特定口座でもともと持っていた分とNISAからの払い出し分とで取得価額が平均化されてしまい、売却した際に税金がかかります。最終的に支払う税金には劇的な差が生じるわけではないですが、売るならNISA口座内にあるうちのほうが有利ということですね。
ですが、タイトルにも書いたように、もし2023年内に投資信託を売却するならそろそろ行動しないと間に合わなくなってしまいます。この記事ではそのタイミングと、特に一般NISAでは要注意なところについてまとめました。
投信は申込日に売買が成立するわけではない
投資信託の売買では「申込日」「約定(やくじょう)日」「受渡日」という3つのタイミングを理解しておくことが重要です。詳しく説明されているページは山ほどありますので、ここでは次のように簡単に説明しておきます。
- 申込日:投資信託の売買注文を証券会社が受け付けた日
→普通は15時までの注文は注文当日、それ以降は翌営業日 - 約定日:売買注文が成立する日
→普通は国内資産の場合は当日、海外資産の場合は翌営業日。この日の基準価額で取引される - 受渡日:売買代金が精算される日
→ファンドによって異なり、申込日から2~5営業日程度。新興国資産が入ると遅くなる傾向がある
時間軸でみるとこのような感じです(画像は野村証券のページより)。これは申込日と約定日が異なる外国資産の例ですね。
そして重要なのは、このうち「受渡日」が税金の計算などの実質的な取引日になることです。売却代金が入ってくるのも受渡日です。
このようなズレは投資信託に限った話ではなく、株の取引などでも同様です。が、私のように普段は毎月自動的に積み立てていくだけで売却することがない投資家にとっては馴染みがないですよね。
後述するように、私は12月21日のお昼に楽天証券一般NISA口座から5本のファンドを売却しましたが、同じ資産に投資するものでも、ファンドによって約定日・受渡日が違うことがあります。
◆TOPIX連動では、申込日=約定日
◆同じMSCIコクサイ(日本を除く先進国株式)連動でも受渡日が異なる
◆MSCIエマージング(新興国株式)連動は先進国より受渡日が遅め
2023年の最終取引日は12月29日(金)ですので、年内に受渡日がくるようにするにはもう売却しないといけません。そして取引をするときは受渡日が年内になっているかを確認することが必須です。
逆に、購入するときも「受渡日」基準です。「新NISAを初日から使うんだ!」と考えている人は、年明けを待たずに注文を出すことになりますね。
私はそんなにガチガチに考えているわけではないので、売却代金がやってくる12月28日以降の暇なときに適当に注文を入れると思います。
適当と言っても、買う商品は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)で、購入金額は成長投資枠で240万円分ともう決まっているのですが。
一般NISAからの売却は要注意!
さて、ここまでは一般的な説明でした。ですが、特定口座の商品については、損益通算を除けば年内か翌年かの「期ズレ」が生じたからといって問題になることはありません。そう、「特定口座の商品」なら。
要注意なのは2023年末に期限を迎える、2019年買付分の一般NISAの商品です。
これは失敗するとダメージが大きいので詳しく説明します。例えば、一般NISAで次のような商品を買っているとしましょう。
2019年買付分 | 2020年買付分 | 2021年買付分 |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) 時価240万円 |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) 時価200万円 |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) 時価160万円 |
ここで、2019年買付分をすべて売却しようと、2023年の終わりに240万円分の売却注文を「受渡日が2024年になるように」出してしまった場合にどうなるか。わかりやすく結論から言えばこうなります。
2019年買付分 | 2020年買付分 | 2021年買付分 |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) 時価240万円 →特定口座に240万円払い出し(売却されない) |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) 時価200万円 →200万円全部売却 |
eMAXIS Slim全世界株式 (オール・カントリー) 時価160万円 →40万円分を売却し、120万円分が残る |
受渡日時点では、2019年に買い付けた分が特定口座に移動しているため、代わりに2020年分と2021年分が売却されてしまうんですね。これはNISA口座からの注文は、NISA口座内を優先して処理する原則があるためです。
こうなると、2020年買付分と2021年買付分の非課税期間が無駄になってしまいます……。
このような事故がおこらないように、もし年内受渡しが間に合わない場合は、いったん特定口座に払い出されてから売却しましょう。「受渡日」を早める方法はないので、間に合わないなら諦めるしかありません。
なお、そもそも特定口座で一般NISAと同じ商品を持っていなければ、払い出されてからの売却で何も問題はありません。年末までは非課税で運用できますから実質的に何の差もありません。悠長に構えていればOKです。
NISAでの年末時の取り扱いはマネックス証券のページではわかりやすく説明されていますので、合わせて見てみてください。このページでの例は株式ですが、投信も同じです。
2019年買付分は約2倍の爆益に
さて、私は冒頭に書いたように一般NISAの2019年買付分を売却しましたが、これがまた結構びっくりな金額にまで増えていました。12月21日時点では、120万円の投資金額に対して240万円超になっています。たまたまですが、成長投資枠がこれで埋められてしまうということになりました。
とくに為替の影響をもろに受けた先進国株式は5年で2倍という信じがたい伸びとなりました。約120万円の利益が全額非課税ですから、NISA口座のおかげで24万円分も支払う税金が減ったということになります。
新NISAは投資枠の上限も大きく、また運用期間も恒久的です。新NISAを活用できるのが楽しみですね。
なお、NISA口座では「◯年に購入分」という区分けがされていますが、売却時には「この年の分だけを売却」という注文方法はありません。
2019年分だけを売却したい場合は、この画像に出てくるような保有数量(「◯口」の部分)を自分で確認して、この分だけの売却注文を出すことになります(この記事冒頭の画像では同じ数量で売却していることがわかると思います)。NISA口座での売却は「先入れ先出し」なので、同じ銘柄を複数年にわたって買っている場合は、必ず古いものから売却されていきます。
少々面倒ですが、どの証券会社でも同じ仕様のようです。
SBI証券の場合はケンズさんが丁寧に説明されていました。楽天証券でも基本的には同じです。楽天証券はUIがわかりやすいので詳しく説明しませんが(わからなければ私に聞いてもらってOKです)、積立設定の操作ができた人ならたぶん大丈夫だと思います。
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