長年にわたりインデックス投資を続けているブロガーの水瀬ケンイチさんの新刊が発売されました。
今回は著者の水瀬さんと出版社のご厚意で拝読の機会をいただきました。発売日を前に一気読み。インデックス投資の骨格となる根拠と,実践の経験にもとづく心構えをていねいに教えてくれる本でした。
理屈と実践の両方を備えて,バランスのとれた「インデックス投資観」を得られるという点で最強の1冊です。
海外のインデックス投資本ではカバーできない,日本の制度や日本で販売されている商品に合わせた実践法もわかりやすく書かれています。
目次と全体の内容
マンガ 「花沢ヒナとインデックス投資の出会い」
第1章 「インデックス投資」を今すぐ始めるべき理由
マンガ 「阿久津部長との投資バトルに!」
第2章 寝かせて増やすインデックス投資の実践法
マンガ 「投資も食事もバランスが大事!」
第3章 インデックス投資は「資産配分」が超重要!
マンガ 「金融商品はいったいどれを選べばいいの!?」
第4章 おすすめの金融機関&口座開設の手順とNISA・iDeCo入門
マンガ 「NISAやiDeCoってどこがお得なの?」
第5章 インデックス投資を支える資本主義経済の仕組み
マンガ 「花沢ヒナ,いよいよ投資家デビュー!」
第6章 プロは絶対に教えてくれない「インデックス投資を続けるコツ」
マンガ 「まさかの大暴落で大ピンチ!」
第7章 これまたプロは絶対に教えてくれない「インデックス投資の終わらせ方」
マンガ 「投資バトルの勝敗はいかに!?」 など
ふつうの投資本とは違って,本書は各章にストーリーとなるマンガが入っています。そのストーリーに基づいて,インデックス投資の魅力と継続のための要点を解説し,よくある疑問に答えていく展開です。
水瀬さんの成り代わりの後輩OLが,インデックス投資の魅力やコツを熱く語っていくストーリーは新鮮でした。
全編がマンガというわけではなく,各章はマンガ約10ページと本文15~30ページからなっています。マンガでストーリーとキーワードを知って,本文の解説で詳しく学んでいく流れです。
なお,目次構成はマンガ版ではない『お金は寝かせて増やしなさい』と似ていて,目次上は少し詳しくなっています。
基本骨格が変わらないのは,数年を経てもインデックス投資の原理・原則はもちろん不変ということでもあります。
「インデックス投資は継続が重要」という強い強いメッセージ
まず,私が本書を読んで最も強く感じたことは,「継続することがとても重要である」というメッセージです。
第2章(実践法)・第3章(資産配分)・第5章(資本主義経済の仕組み)・第6章(続けるコツ)では,切り口を変えて「いかに長く続けられる状況をつくるか」というテーマが繰り返し解説されています。
標準偏差や経済の仕組みといった理屈による説明だけでなく,心配になる気持ちへの対処法や,「下落に合ったときは安く買える」と見方を変えるような考え方のコツも書かれていて,私も納得しながら読み進めました!
得た利益がさらなる利益を生む複利の効果や,資本主義経済の発展による株価の長期的な上昇傾向に乗るには「長く続けること」が本当に大切です。
「長期・分散・低コスト」がインデックス投資の基本と言われます。いずれも重要ですが,とくに利益の源泉として効いているのは「長期投資」であろうと思います。
「不安になったら読む1冊」として持っておきたい
本書には,水瀬さんの20年にわたる長期投資の結果,投資元本約5000万円に対して評価額が1億円に達したことも書かれていて,リアルな実践をうかがえます。
その間には,リーマン・ショック,東日本大震災,コロナ・ショックといった大きな危機もありました。それを乗り越えた経験として,次の3つがあるそうです。
①最悪の事態の想定は「厳しめ」に見積もるべきだった
②相場が永遠に下がり続けることはない
③インデックス投資家の仕事は「売りたくなったときに我慢すること」
長期に投資していれば,暴落は必ず起こります。最悪の事態で退場しないためには①が大切です。②は,資本主義経済のしくみを理解していれば,将来を信じられるのではないかと思います。
このなかでは,③が最も難しかったとのこと。
暴落時には,平常時には信頼を置いていたインデックス投資に対して,心が少し揺らぐかもしれません。そんなときには,頼れる「よりどころ」があると心強いです。
この本はそんなときに,理屈と経験の両方から,インデックス投資を続けるよりどころとしても役立ってくれます。
水瀬さんはインデックス投資の名著の格言(本書でも紹介されています)を見返しながら乗り越えてきたようです。私たちもそのようにして乗り越えても良いのですが,ありがたいことに今は,この『マンガ お金は寝かせて増やしなさい』があります。これを活用しない手はありません。
現に私も,2020年のコロナ・ショック時の大暴落の際は,漫画版ではない『お金は寝かせて増やしなさい』のページを開き直したこともありました。
実際,下落した株価は反騰し,あのころは絶好の「買い時」でしたよね。
本書は投資初心者向けにわかりやすく書かれています。投資を始めようと考えている人には間違いなくおすすめです。
ただ,先行者の実践の経験談として,私を含めたインデックス投資を継続中の多くの人にとっても役立つ指南書になっています。ぜひ,インデックス投資をすでに始めている人も,インデックス投資を選ぶ理由の復習と,暴落に備え,長く続けていくなかでの予習として読んでみてはいかがでしょうか。
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