東京をはじめとした都市部で働く人であれば、日々の移動は鉄道という人は多いでしょう。この記事は定期券を購入する人向けに、節約にもなる定期券の区間の決め方を紹介する内容です。
さて、お持ちの定期券はどのような区間で作っていますか?
なんとなく、「自宅最寄駅⇔会社最寄駅」で作っているようでしたら、定期区間を少し伸ばすと節約になるかもしれません。定期券を買う前に調べてみてはいかがでしょうか。
定期券の区間を伸ばそう
定期券とは、「ある期間内、ある区間内の交通機関に使用できる割引乗車券」です(出典:三省堂大辞林)。
JRや東京の地下鉄などでは、おもに通勤者の需要に応える「通勤定期券」が販売されています。このような名称ですが、通勤に用途を限ったものではなく、誰でも好きな区間で買うことができます。
定期券を買えば、その区間は乗り放題です。また、区間外にまたがる乗車でも、一部に定期区間があれば、その区間の追加料金で乗車できます。
そこで、その乗り放題区間を「自宅最寄駅⇔会社最寄駅」からうまく伸ばしていこうというのが本記事の趣旨です。この方法をこの記事では「買い足し」としておすすめしたいと思います。
定期券の区間をうまく伸ばすことができれば、今までと同じ列車に少し安く乗ることができます。
就業規則等によって通勤手当が支給される場合、通勤手当の支給要件に抵触しないことを確認しましょう。なお、通勤者に用途を限る鉄道会社や、自宅と学校を結ぶ最短経路でしか購入できない通学定期券ではこの方法は使えませんので、ご注意を。
「買い足し」を勧めたい条件
買い足しを勧めたいのは以下のような2つの場合です。
- 区間を延長しても販売価格が変わらない
- 区間の延長線上によく訪れる場所がある
具体例を挙げながら紹介していきます。
区間を延長しても販売価格が変わらない
中野駅に自宅があり、新宿駅までJRで通勤している場合で説明します。赤線の区間です(地図は東京有能道具店より、他も)。
中野→新宿の定期券運賃は6か月で2万5460円。では、一駅先の代々木駅までの定期券(赤線+青線)を購入した場合はいくらになるでしょうか。
中野から | 新宿まで | 代々木まで |
定期券代 | 25,460円 | 25,460円 |
全く同じです。多くの鉄道会社では、定期券価格は1kmごとに決まっているので、駅間の短い区間は延長しても価格が変わらない場合があります。
区間外への乗車の際のメリット
上記の場合、代々木駅に行く機会がまったくない人には特にメリットがないようにも見えます。ところが、そうではありません。
定期区間を伸ばせばその区間が乗り放題となるだけでなく、定期区間外まで乗ったときの運賃計算の起点が変わるため有利です。
たとえば東京駅まで行く場合、新宿→東京は片道208円に対して、代々木→東京は片道178円です(ICカード運賃)。したがって、たとえ代々木駅に行くことがなくても、一駅伸ばして購入することで、定期外の運賃が変わる可能性があります。
定期券運賃が変わらない範囲で、なるべく長い区間で購入しましょう。
区間の延長線上によく訪れる場所がある
さきほどと同様に、中野駅に自宅があり、新宿駅まで通勤する場合(赤線)です。月に1回、渋谷駅に習い事などで訪れる(青線)ようなときは、どのように買うのがよいでしょうか?
中野→新宿と、中野→渋谷で、6か月の定期券運賃を比べてみます。
中野から | 新宿まで | 渋谷まで |
定期券代 | 25,460円 | 27,060円 |
差は1,600円。新宿→渋谷は片道167円ですから、6か月で5往復(10回乗車)すれば元が取れる計算になります。月に1回でも行くなら定期券を作る一択でしょう。
交通費を追加で支払わずに移動できるので、行動範囲も広がりますね。
また、さきほどと同様に定期区間外の運賃も安くなる駅が増えます。
他社線と交わる駅まで伸ばすのもコツ
ほかにも、東京メトロ雑司が谷駅に自宅があり、東京メトロ新宿三丁目駅まで通勤するような場合にも工夫ができます。
新宿三丁目駅から新宿駅まで定期区間が伸びれば便利そうですね。繁華街がありますし、JRや私鉄に乗り換えられます。
雑司が谷から | 新宿三丁目まで | 新宿まで |
定期券代 | 38,560円 | 38,560円 |
料金は全く同じですので、これは伸ばしたほうがよいですね。
また、自宅側を伸ばせば、同じく繁華街があり、JRや私鉄のターミナルである池袋駅です。
池袋から | 新宿三丁目まで | 新宿まで |
定期券代 | 40,450円 | 40,450円 |
池袋→新宿(新宿三丁目経由)の定期券は、雑司が谷→新宿三丁目の場合より1890円高くなりました。雑司が谷→池袋、新宿三丁目→新宿の片道運賃は178円ですので、池袋まで6か月で5.5往復(11回乗車)すれば元が取れます。
たとえ目的地ではなくても、乗り換えでの利用が月に1回あるなら、定期券区間を延長したほうが便利です。
ただし、伸ばして有利になる距離は数駅程度
ただし、この方法が便利なのは、自宅や職場の最寄り駅から数駅先までの延長です。延長する区間が長くなればなるほど、有利さが減っていきます。
その理由は、定期外の鉄道運賃は初乗りが高く、距離に応じてkm単価が漸減するからです。ですので、定期券区間を延長する区間が長くなるほど、魅力的でなくなります。
たとえば、中野→新宿の6か月定期区間を、中野→東京に延長した場合は次の通り。
中野から | 新宿まで | 東京まで |
定期券代 | 25,460円 | 33,480円 |
差は8,020円です。新宿→東京の片道運賃は208円ですので、元を取るまで19.5往復(39回乗車)かかります。
もっと延長して、千葉駅までの定期を買うと6か月で129,390円になります。元を取るには6か月で57.5往復(115回乗車)。
目的地や乗り換えでよく訪れる場所が定期区間の少し先にあるようなときはこの方法が活かせます。定期券の購入前に、一度検討することをおすすめします。
(2020/03/14追記)鉄道運賃の改定を反映しました。
(2024/05/06追記)鉄道運賃の改定を反映しました。
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