モノを持たない選択の利点と弱点について

191007モノを持たない選択の利点と弱点について その他家計管理
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今回は「モノを持たない選択」をテーマにざっくばらんに書きたいと思います。

通信技術をはじめ,各種のインフラ整備が進んだことで,時代は「物を保有すること」から「物やサービスを共有すること」に変化しています。

かつては,一部の物についてレンタルサービスがある他は,親しい間柄の人と個人的に貸し借りする程度だった「物の共同利用」ですが,最近は見知らぬ人を含んだ広いコミュニティで,低コストに便利に貸し借りできるようになってきました。これまでは「物を持って使う」「物を持たずに使わない」を選ばなければならなかったところに,「物を持たずに使う」という新たな選択肢ができています。

交通手段がわかりやすい例です。海外ではUBERやLyftなどが大流行しています。2019年夏にロサンゼルスに行ったときは,街じゅうがシェアリング電動キックボードだらけで驚きました。

ロサンゼルスの交通事情に驚いた――UberとGoogleとBIRDに感じたこと
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交通手段については,日本でもシェアサイクル,カーシェアリングは無人のシステムで広まっていますし,その他にも服や時計,バッグのレンタルなども利用者を伸ばしています。特に私と同世代の20代にはどんどん浸透しています。経済成長が伸び悩んでいる日本だからというわけではなく,米国をはじめ世界中でシェアリングサービスが進んでいるので,どこでも同じ傾向があるのでしょう。

この記事は消費者目線からみた内容ですが,消費者向けサービスだけでなく,UBER Eatsなど業者側に新たなシェアリングサービスを提供している例もありますね。

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利便性の向上と保有コストからの解放

これほど普及が進んだ背景には,シェアできることで生まれる利便性と,保有コストからの解放という2つの理由があると私は思います。

シェアできる利便性は,必要なとき,必要な場所で,必要な量だけ物やサービスを使えるところ。そして使った分だけ対価を支払うという同時性とわかりやすさが特徴です。これまでは保有し,継続的に保有コストを支払うのが当然だった物やサービスも,他の手段が増えるにつれてシェアリングで代替できるようになってきています。

たとえば,公共交通が発達し,レンタカーやカーシェアリングサービス(そして米国では電動キックボード)が浸透した現代の都市部において自動車を持つことは,コスト・パフォーマンスに見合いません。

自動車を運転するのが好きな私であっても全く買う気にならないので,コスト・パフォーマンスに厳しい節約家の目には「無駄な出費」に映るのだと思います。そして「車を保有するのはもったいない」という主張に納得することになります。

私は自動車どころか,自転車でさえ持っていません。いま住んでいる物件に無料駐輪場がなく,借りると費用がかかるので,引っ越しに伴って友人にあげました。都心部では自転車すらコスト・パフォーマンスに見合わないことだってあるのです。普段の生活においては,公共交通機関,カーシェアリングサービス,シェアサイクル,タクシーといったシステムがあれば対応可能です。気分に応じて好きに使っていても,交通関連の費用は年間20万円程度です。

シェアリングサービスは「モノを持たない」ことが最大の利点であり,効率よくモノやサービスを分配することで,一人あたりが支払う金額を減らすことができます。

モノを共有する弱点

さて,ここまではSNSやウェブ記事でもよく見る利点です。では,こういったやり方の弱点は何でしょうか。

私が思うのは,「他者への依存度が高まること」です。この点を書いている人は少ないかもしれません。

わかりやすいので,交通関連で思いつく例を2つ挙げておきます。他にもたくさんあるでしょう。

  • 価格やサービスの変更に対抗する手段が少ない
  • システムが崩壊すると無力化

サービス提供者による価格やサービスの変更に対抗する手段が少ない

私はカーシェアリングサービス最大手のタイムズカーシェアを利用していますが,10月1日から価格体系が一部変わり,全体的には値上げ傾向となりました(タイムズ24,消費増税とは別)。サービス内容も徐々に変わるようです。また,同サービスは全体的には毎月のように貸出拠点が増えていますが,中には閉鎖された拠点もあります。

個人的には,これまで通りのシステムがありがたかったのですが。変更が気に入らなければ類似サービスへの乗り換えは唯一の対抗手段ですが,それにも限界がありますね。

そもそも,こういった情報を追わなければならないことが少し負担でもあります。

外部要因や他の利用者によってシステムが崩壊すると無力化

わかりやすい例は災害時です。私の場合,災害が起きればすべての交通手段を失う可能性があります。支援物資を取りに行ったり,誰かを助けに行ったりすることができません(たとえ大規模災害でなくとも,付近一帯が停電する程度でかなり危うくなります)。退路も補給路もしばらく絶たれてしまうことを想定して,念のため自宅には水や食料を相当に備蓄していますが,それでも十分かどうかは起こってみないとわかりません。

また,そういった状況だけでなく,他の利用者が問題を起こしてその影響を受ける可能性もあります。かつてレンタカーでは直前の利用者が事故を起こして,希望外の車両があてがわれたこともありました。

共有は素晴らしいが,ときに難しい

シェアリングサービスはとても画期的で,便利で節約になる方式です。しかし,誰かと何かを共有するという行為には,自分の負担するコストを減らせる代わりに,他者への依存度が上がり,その影響を受けやすくなるは心に留めておくべきでしょう。

たとえ,よく見知った2人での生活でも何かをうまく共有するのは難しいです。私が仕事で帰宅が23時になり,はやくお風呂に入って眠りたいのに,なぜかもうひとりがお風呂に入っているために順番待ちとなって寝不足になることもしばしばあります(少なくとも私の家では。帰宅時間を事前にお知らせしてるはずなのに)。だからといって「所有」に走り,お風呂が2つある家に引っ越すというのはほとんど無駄です。

風呂に限らず,家族とでさえうまく分配・共有するシステムづくりが難しいのは多くの方はすでに経験するとおりです。共有サービスはそれが使えなかったときに危機的状況に陥る可能性をなるべく減らせるように利用し,どうしても譲れない部分については保有する選択を残しておくのが賢い方法だと思います。

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