『経済評論家の父から息子への手紙』:山崎元さんの最後の1冊

240514 経済評論家の父から息子への手紙レビュー 投資の参考書
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発行からしばらく経ってしまいましたが、2024年2月に発行された経済評論家の山崎元さんの最後の1冊『経済評論家の父から息子への手紙――お金と人生と幸せについて』を読み切りました。

ご存知の方も多いと思いますが、山崎さんは2024年1月に病気のため亡くなってしまいました。

歯切れの良いメッセージはいつもの山崎さんと変わりません。今回の本は投資家向けというよりも、どのような信念を持って生きていくかという軸でまとめられています。

これが最後の執筆だと思うと残念な気持ちもあるのですが……人生や幸せについての考えは、この状況だったからズバリと書けたのでしょうね。

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目次とおもな内容

まえがき
第一章 働き方・稼ぎ方
第二章 お金の増やし方と資本主義経済の仕組み
第三章 もう少し話しておきたいこと
終章  小さな幸福論
付記  大人になった息子へ――息子への手紙全文
あとがき

目次からもわかると思いますが、投資法について詳しく論じていくのではなく、もっと広い枠組みの指針という感じですね。

第一章「働き方・稼ぎ方」と第二章「お金の増やし方と資本主義経済の仕組み」は、どちらも株式がキーワードになっています。どちらも株式の性質を利用して、経済的に豊かになるまでの流れを説明しています。

第三章以降は山崎さんの信念が語られています。といっても重たいものではなく、私は山崎さんと話したことが数回あるのですが、そのときの話しぶりを思い出すような親しみのある調子でした。

株式が将来の利益まで織り込むことを利用する

第一章で示されている「株式で稼ぐ働き方」は次の4つです。

  • 自分で起業する
  • 早い段階で企業に参加する
  • 報酬の大きな部分を自社株ないし自社株のストックオプションで支払ってくれる会社で働く
  • 企業の初期段階で出資させてもらう

株式の魅力は、将来の利益が現在の株価に織り込まれることです。つまり、現在は小さい会社であっても、将来性の評価が反映された価格で売却することができ、短期間で稼げるというわけですね。

ちなみに私は会社を立ち上げたことはないのですが、創業段階の会社に出資したことがあります。軌道に乗らなかったりしたものが多かったですが、1社はまだ生き残っていますよ。出資額はごく少ないのですが、夢はありますね。

起業した本人はもちろん、役員の形で参加した人はストックオプションを得ていたりしていました。ただ、自分で起業するならさておき、誰かの起業に乗っかるには普段からそういった人との付き合いが必要です。ハードルは高いかもしれないですね。

とりあえず「起業っておもしろそう」とか「独立のための勉強もしていた」とか、ときどき周りの人に言っておくと、意外にそういった話が舞い込んできたりします。私は出資したいだけですが、言ってるとたまにありますよ。

資本家・労働者として資本主義経済で生きるには?

誰でもできるのは第二章で解説されている「増やし方」のほうです。

運用については山崎さんは「長期・分散・低コスト」で、インデックスファンドを保有することが正解だと繰り返し言っており、近年は全世界株式インデックスファンド1本で良いと訴えています。本書でもそれは変わりません。

割とあっさり書かれているので、インデックス投資の解説をもっと詳しく知りたい人は山崎さんと水瀬ケンイチさんの共著『ほったらかし投資術 第3版』あたりを読むとスッキリすると思います。

一方で、これが本書の最も秀逸な部分だと思うのですが、「資本主義とはどのような構造か」を踏まえた視点からの立ち回りについての解説はとても充実していました。

資本主義経済では、「資本」と「労働力」の両方が生産のために必要です。それを提供しているのは「資本家」と「労働者」。そして生産による利益が資本家と労働者に分配されますが(労働者への分配は生産コストとも言えますが)、最終的には資本家に利益が多く残りやすい。

ここまではよく説明されると思うのですが、本書では実際の資本家と労働者の関係はさまざまであり、資本家同士の力関係や労働者同士の力関係にも注目しているところが面白いです。

力関係によっては、「一部の労働者が、資本家と他の労働者をカモにする」なんてことも。ただ、山崎さんは突飛なことを言っているのではなく、他の人とは異なるスキルを持っている人はそうなりやすいでしょう。労働者としてはどのような存在をめざすのか、とても参考になると思います。

最後の1冊の終わりに「息子への手紙」

第三章以降は、すぐに役立つというハウツーものではなく、山崎さんなりの物の見方や考え方が語られています。山崎さんがこれまで書いてきた投資本とは違い、幸せや価値観にも踏み込んでいますが、運用と違って「これが絶対の正解」といったものではなく、信念の世界ですね。

読みながら「これは同感」「これはちょっと違うかな」みたいに自分の気持ちと向きあうこともでき、思考を整理していくことはできましたよ。最後の1冊だからなのか、「モテ」のような話にここまで踏み込んで良いの?というところまで書かれています。

最後の「息子への手紙」も山崎さんの信念が強く出ています。本書をぜひ手にとって読んでみてください。

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