バンガードの日本支社が撤退しても,その投資理念を実践していく

証券会社・運用会社
この記事は約7分で読めます。

2020年8月27日,米国バンガードの日本支社であるバンガード・インベストメンツ・ジャパンから寂しいお知らせがありました。

近いうちに,日本支社の営業活動を終了するという決定がなされました。

1975年に設立されたバンガードは,2020年3月時点で572兆円もの運用総資産を持つ世界最大級の運用会社です。バンガードが提供する運用商品は業界平均をはるかに下回る低コストが特徴で,それが広く支持されてきたことで,現在のような規模まで成長してきました。

全世界に投資するVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)や米国に投資するVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)VOO(バンガード・S&P500ETF)などのインデックス商品を極めて低いコストで提供してきたことから,日本ではインデックス投資家から厚い支持を集めています。

スポンサーリンク

バンガード・インベストメンツ・ジャパンの閉鎖で変わる2つのこと

他の媒体でも速報・解説されていますので,この記事では要点を簡単にまとめます。バンガードの日本支社が閉鎖になってどのような変化があるかについては上記のリリースに明示されている2点が重要です。

①バンガードのETFや共同ブランドファンドに及ぼす影響はない。

VT・VTI・VOOのようなバンガードの米国籍ETFや,楽天・バンガード・ファンド(楽天VTや楽天VTIなど),SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド,セゾングローバルバランスファンドなどはこれまでと同じように売買できますし,保有し続けることもできます。

リリースにあるように香港籍のETFは別ですが,大半の日本の投資家には影響がないでしょう。

②日本語の情報発信は今後,行われなくなる。

日本語のウェブサイト・Twitter・ニュースレターは数か月で閉鎖されていくとのことです。運用会社や販売会社からの良質な情報発信が少ない日本において,特にニュースレターは良質な情報源であったことから非常に残念です。この影響は大きいです。

バンガードはコロナ・ショックのさなかでも長期目線に徹し,規律を保つことをデータを出しながら当然のように主張していました。

そして,私事ながらTwitterにて相互フォローしていただきましたこと,1人のインデックス投資家として本当に光栄なことでした。

◆広く一般に向けた情報発信というわけではありませんが,ブロガーを対象とした交流会に参加させていただいたこともありました。

世界最大級の運用会社・バンガードが投資家の支持を得つづける理由とは――バンガードの第3回ブロガー交流会に参加して
2019年11月1日,世界最大級の運用会社であるバンガードの日本法人バンガード・インベストメンツ・ジャパンが主催する「第3回ブロガー交流会」に参加しました。運用の知識の限られた素人...

バンガードの投資理念と私の投資方針

私のとっている運用方法はバンガードの示す指針を地で行くもので,幅広く分散された低コストなインデックスファンドをルールにのっとって購入し,長期視点で保有するという方法です。この点で私はバンガードの理念にも大きな影響を受け,そして実践してきました。

私自身に投資の才能や知識・時間が限られているという理由もありますが,この方法は,いま使わない余剰資金を,なるべく手間を掛けずに,かつ効率的に将来に送ることをめざす私の運用目的にもよく合致したものでした。

リリースに明記されている通り,今回の撤退はビジネス上の理由であり,バンガードの投資理念が誤っていたというものではありません。

そこで,ウェブサイトが閉鎖される前に,「日本の投資家の皆さまが成功する投資家になるためのバンガードの4つの基本原則」をダウンロードしておくことを私はおすすめします。これは必読です。

バンガードの情報提供は時宜を得ていて非常に有用なものが多いのですが,このような理念を全面に出した資料はとても参考になります。

基本原則として挙げられているのは次のとおりです。

  • 目標
    明確で適切な投資目標の設定
  • バランス
    幅広く分散しているファンドに投資し,適切な資産配分を
  • コスト
    コストの最小化
  • 規律
    規律ある長期的な視点を

具体的には上記のリンクからPDFファイルをご覧ください。

これらの原則が重要と私が考える理由には,投資する自分自身が,いずれもコントロールできる要素であることがあります。

経済や市場の動きや個々の株式のパフォーマンスなどは,知識がある人でも見極めが難しく,マーケットは大きな理由がないのに変動することもあります。投資に使える時間と知識が限られた私のような「弱者」にとっては,このようなコントロールできない要素ではなく,制御可能なことを指針として,長期的に利益を得ていくことが現実的な戦略です。

言い換えれば,投資方針は市場や商品にあるわけではなく,自分の目的や経済環境にあるのです。私がコロナ・ショックのような暴落にも一切動じることなく,長い運用期間を見据えて冷静に立ち回れる理由はそこにあります。投資商品がどのような値動きをしているかは直接的には投資方針を変える理由にならず,自分がどのような計画で商品を購入し,そして将来売却するかに考えを集中することが重要だと考えています。

バンガードが法人としては日本から撤退してしまうことは,日本に住む人にとって投資機会は減らないものの,情報の面では非常に大きな損失です。しばらくはバンガード“ロス”が続きそうです。

バンガードと日本の20年間

以降は勝手な憶測も含む,いち投資家の感想です。

バンガードが日本に進出した20年前は,今のような低コストなファンドはおろか,インデックスファンドでさえ国内には満足な選択肢がなかった時代でした。バンガードが投資家向けに掲げる「4つの基本原則」のような考え方は日本にほとんどなかったことでしょう。

私は以下の記事でつみたてNISAの対象となっているインデックスファンドについて情報を集めていますが,大半が近年設定されたファンドです。裏を返せば,2000年代前半から現在まで運用されているまともなインデックスファンドはありません。

【2020年9月・つみたてNISA対象】インデックスファンド比較・一覧【過去リターン・信託報酬,実質コスト,純資産総額など】
この記事では,つみたてNISAで購入できるインデックスファンドのリターン・信託報酬・実質コスト・純資産総額・運用期間などの情報を比較します。 つみたてNISAの対象商品は金融...

そのような時代にバンガードが日本に進出し,新たな風を吹き込んだことは,少なからず今の投資環境につながっているはずです。

2000年代後半になって,ようやく投資対象となるようなファンドが揃ってきたものの,当時を知る投資家によれば,「投資信託を積み立てていき,ある程度の残高になったところで売却し,ETFに乗り換える『リレー投資』をする」という方法も取られていたようです。

その理由は投資信託の信託報酬がETFに比べて高かったからです。全世界株式に連動するVTが設定され,「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」に名を連ねるようになったのが2009年のことでした。

以来,バンガードのETFは日本において重要な地位を占めてきたと考えられます。しかし,国内では2018年から,金融庁が指定した国内ファンドを対象とした非課税投資制度であるつみたてNISAが始まりました。これを機に,国内の投資信託の信託報酬は数年で0.1%前後まで下がることとなりました。

これはバンガードの理念には合致する点もあったと思いますが,残念ながらバンガードETFはつみたてNISAの対象商品にはなりませんでした。ただでさえ投資信託の低コスト化が進んでこれまでのようなETFへのリレー投資を行うコストメリットがなくなっただけでなく,非課税投資のメリットの恩恵を受けることもできなくなりました。バンガードのETFを買う層は,一般NISA口座や特定口座でインデックス投資を行う人の一部に限られてしまったことでしょう。

国内の低コスト投資信託とつみたてNISAがかなり定着してきた状況では,バンガードが日本支社を置くコストを掛けても,効果的に純資産総額を積み上げるのは難しいと判断したのかもしれません。また,日本の運用会社と連携した共同ブランドファンドも順次登場しています。そうなれば,拡大が見込まれる中国本土などの市場へ注力するような方向性にはうなずけます。

インデックス投資家の私の指針は今後も変わりない

バンガードが日本から撤退してしまうというニュースは衝撃的であり,日本の投資家としては寂しい限りです。

しかしながら,私の採用する投資方法は,これまでやってきたように「4つの基本原則」を忠実に実践していくことから変わりません。好況や不況といった市場に惑わされずに,“航路”を長期に守り,自分の環境変化に対応して見直すこと。幅広く分散された低コストのファンドを購入し,長期視点で保有し続けることです。

投資方法はたくさんありますが,私の投資目的にはこの方法が最適と考えています。今後も実践していきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました