「SOMPO123 先進国株式」は先進国株式で最安の信託報酬0.077%の「アクティブ」ファンド

211203 「SOMPO123 先進国株式」は先進国株式で最安の信託報酬0.077%の「アクティブ」ファンド 証券会社・運用会社
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2021年12月1日の日経電子版に,SOMPOアセットマネジメントが新たに先進国株式を投資対象にするファンドを設定することが報じられました。

投信の手数料競争が再燃、SOMPOが最安へ - 日本経済新聞
個人向け投資信託の運用手数料の引き下げ競争が再び激化している。SOMPOアセットマネジメントは外国株に投資する業界最安の投信を投入する。ネット系運用会社も低コスト投信を武器に経済圏...

12月3日にはSOMPOアセットマネジメントからもプレスリリースが出ています。「SOMPO123 先進国株式」というファンド名で,12月21日に新規設定されるとのこと。

その信託報酬は業界最低の税込0.077%。2030年まで信託報酬ゼロの「野村スリーゼロ」を除けば,先進国株式を投資対象にするファンドのなかでは最安です。

次に信託報酬が安い「eMAXIS Slim先進国株式」は税込で約0.1%ですからね。安さが際立ちます。

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指数への連動をめざすのか?

日経電子版の記事によれば,このファンドは先進国株式インデックスの「MSCIコクサイ」に近い動きをすることをめざすようです。以下のように,MSCIコクサイインデックスに,上下2%程度の変動幅に収まるような運用をめざすとのこと。

SOMPOアセットは近く,日本を除く先進国株を対象とする株価指数「MSCI KOKUSAI」と比べた変動幅が上下2%程度に収まるように運用する投信の設定を関東財務局に届け出る。(中略)

ファンドマネジャーが投資適格級のトリプルB格以上の123社を選び,銘柄入れ替えの頻度を半年に1回程度にとどめて運用コストを抑える。MSCIに代表される指数算出会社に支払う費用を節約し,手数料引き下げの原資とする。

これをこの通りに読めば,「指数への連動をめざすアクティブファンド」です。インデックスファンドに近い存在ですが,123銘柄しか組み入れないので,組成は指数と一致しません。

ニッセイアセットマネジメントの用語集によれば,MSCIコクサイインデックスには約1300銘柄が採用されています。123銘柄では1割にも届きません。

時価総額が大きい企業を中心に構成すれば,銘柄数が少なくても時価総額でのカバー率は高くなります。しかし,投信ブロガーのしんたろうさんの分析によれば,カバー率は56%程度とのこと。直観的には,これで「上下2%程度に収める」ことができるかは少し難しいのではないかと感じます。

なお,SOMPOアセットマネジメントのプレスリリースには「MSCIコクサイインデックスと比べた変動幅が上下2%程度に収まるように運用する」とは,一切書いていません。

ただ,これほどの低コストを実現するには,売買頻度を低くし,かつ調査費用も低く抑えることになります。現時点では実態不明ですが,MSCIコクサイインデックスに近い運用をめざすのではないかと思います。

インデックスファンドはその組成をするにあたって,連動する指数を算出する企業に使用料を支払います。後に書くように,近年はインデックスファンドの低コスト化が進んできました。そうなると,運用会社の収益は減少します。原価の圧縮のための対策とも言えそうです。

投資対象としてどう考えるか

インデックスファンドに近い運用をめざすとしても,情報として出ている「上下に2%程度の変動幅」というのは小さくありません。信託報酬が安いのはうれしいのですが,まずは運用がどのように行われるのか様子を見てからのほうがよいでしょう。

インデックス投資家としては指数の組成を利用しないことに抵抗感もあります。銘柄数が少ないのも,あまり指数に近づけすぎると問題になってしまうからなのかもしれません。

そもそも,「アクティブファンドの平均的なリターンは,インデックスファンドに負ける」という通説の主な根拠は,一般的にアクティブファンドのほうがコストが高いからです。

今回のファンドは信託報酬だけでなく,最終的な総コストでみても,インデックスファンドよりも低コストになるかもしれません

ただし,高い水準に指数に連動しなければ,結局その当たり外れのほうが大きな影響を及ぼしてしまうのですが。

SOMPOアセットマネジメントは公言していませんが,指数への連動をめざして組成する場合には,一度生じた乖離はその後に戻ってくるとは限りません。

たとえば,指数から2%下方に乖離してしまったところで,銘柄の入れ替えのタイミングがきた場合,その時時点から,指数と同じ程度のリターンを狙った組成にすることになります。

もちろん,逆に上がった場合は,その上がった基準価額をもとに,その時点から連動をめざすことにはなるので,有利・不利がある問題ではありませんが……。

なお,実際には指数とかなり近い内容でありながら,「アクティブファンド」として高い信託報酬を取るファンドもあると聞いたことがあります。それに比べれば,信託報酬が激安であるぶん良心的なファンドとも言えます。

あえてインデックスファンドから乗り換える必要はないように思います。様子見の方向です。

低コストのせいで運用の質が落ちる?

2018年につみたてNISAが始まった前後から,インデックスファンドは急激に価格競争が進みました。

今回のような「指数への連動をめざす(かもしれない)アクティブファンド」が登場したことで,記事には次のような言葉も書かれています。

若年層の積み立て投資など長期運用の追い風になるが、運用業界の苦境は深まる。低収益が運用会社の経営体力を奪い,課題の運用力強化が遠のくリスクもある。

しかしこれはやや言い過ぎで,確かに,新たに買われているファンドは低コストなものが優勢です。しかしながら,旧来の高コストな商品の運用残高が急減したり,高コストな商品の信託報酬が大きく下がったわけではありません。徐々に影響は起こり得るものの,いま運用収益が大きく減少してしまった状況ではないと思います。

また,これまでの運用の質が高かったのかといえばそうでもないでしょう。一方で,このようなファンドが多く出てくれば,それは「インデックスファンドの運用の質が落ちること」とも言えるのかもしれません。

私としては,現時点では指数使用料を支払ってでも,指数にしっかり連動するファンドを買うのがよいと考えています。

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