8月3日の日経電子版コラムに,ふるさと納税の利用とよくある誤解について簡潔にまとめた記事が載りました。
記事によれば,2020年のふるさと納税の利用者は552万人。国内には住民税を支払う納税義務者が約5900万人いることから,制度を活用している人は10人に1人未満にとどまるという計算になります。
簡単に言えば,ふるさと納税は,普通なら自分の住む自治体へ納める住民税の一部を,他の自治体に支払先を変えることで,返礼品がもらえるようなしくみです。自己負担として1年に2000円がかかるので,実質としては2000円で返礼品をいただくような形になります。
やるかどうかは個人の考え方にもよりますが,実質的にはかなりお得なこのしくみを活用していない人が多いのはもったいないです。
詳しく知らないという人が周りにいたら,ぜひ情報共有してあげてください。
2020年のふるさと納税受入額は5年前の4倍
7月30日に総務省が公表した資料によれば,ふるさと納税の受入額は2020(令和2)年に大きく伸びました。
2020(令和2)年には,2015(平成29)年比で4倍以上になっています。
2019年には受入額が減少したものの,活用する人は増加傾向にあります。
なお,最も受入金額が大きい都道府県は北海道の975億円,次いで鹿児島県の398億円,宮崎県の365億円と続きます。最も少なかった徳島県の15億円とは大きな差が出ています。北海道は単純に市町村が多いという面もありますが,人気の街に多くの寄付金が集まる傾向があるため,自治体の取り組みの差が大きいのでしょう。
それでも控除を受けている人は10人に1人
先ほどのグラフは受け入れる自治体側からみた統計でした。次は納税者の側からみた統計を見てみましょう。棒グラフは住民税を控除された金額の総計,折れ線グラフは控除を受けた人数です。
寄附の時期と控除の時期が1年ずれるので,読み方には少し注意が必要です。たとえば,右端の2021(令和3)年度の控除額は,2020(令和2)年の寄附に対する控除金額です。
これを見ると,ふるさと納税は毎年,控除件数・利用者数とも増えていることがわかります。
しかし,住民税の支払い義務者が5900万人に及ぶようななかで,活用しているのは552万人と10分の1未満にとどまるというのはまだ少ないように感じます。
なお,先ほどのグラフでは,2020(令和2)年の自治体の受入金額は6725億円だったのに対して,2021(令和3)年の控除額は4311億円と少ないようにも見えます。
この差には,①ふるさと納税は住民税だけでなく所得税からも一部控除されていること,②控除の上限以上に寄附をした人がいること,③控除の対象とならない自己負担分(一人あたり2000円,552万人では110億円超)があること,④手続きの不備などがあると思われます。
また,縁起でもありませんが,住民税の納税義務が発生するのは次の年の1月1日なので,年内に亡くなってしまった場合は住民税の支払い義務がなくなるために控除の対象とはなりません。
「誤解」で手続きの不備にならないように要注意
さて,日経の記事に戻ってみると,ふるさと納税に関する「誤解」の例を3つあげています。詳しくは記事をご覧いただくとして,その3つは次のとおりです。
- 自動的に手続きが完了する?
- 居住地の自治体が財政破綻する?
- 寄付額は全額自治体の収入になる?
いずれも「誤解」ではあるのですが,個人で気をつけたほうがよいのは1つ目の手続きの不備です。例にあげられているように,確定申告かワンストップ特例制度を利用して申請をしなければならないほか,カード払いをするときは必ず納税義務者の名義で行う必要があります。
このように手続きの不備があると,自治体へ単に寄附しただけになります。寄附は良いことではありますが,せっかくならば控除を受けましょう。
申請手続きは,ワンストップ特例制度を使えば書類を自治体へ送り返すだけで済みます(ふるさとチョイスの記事も参照)。ほとんど手間がかからず,簡単なしくみになっているので,まだ始めてない人はぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
返礼品の「お得度」の話題ばかりに着目するような動きが嫌だという方には,生まれ育った地域や災害の被害を受けた地域を選んだり,変わり種ではクラウドファンディング型のふるさと納税を行っている自治体を選ぶこともできます。
私もこの制度はいつも前向きに活用しています! 今年は,「お得度」だけにとらわれず,これらの自治体への寄附をすることを考えています。
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