なぜ物価高なのに「年金が減額」されているのか

年金制度
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「年金は物価変動に連動する」というという話を聞いたことがあるでしょうか。

年金は、原則として物価に連動して支給額が決まります。そのため、老後のインフレにもかなり備えられるとも言われます。

この数か月、物の価格が上がるニュースが続いています。実際に、2022年4月は前年同月比で+2.5%になったようです。一方で、今年4月からの年金は前年比-0.4%と減額されての支給になりました。

物価に連動するはずの年金が、なぜ減額されているのでしょうか? この状況はニュースにもなっていて、給付金を支払うだとかなんとかという政策案もあったようですね。

これは年金の改定のしくみに答えがあります。わかりやすく解説されている記事があったので紹介します。

物価高なのに、なぜ年金減額?-シリーズ 年金問題のタテとヨコ:ザックリつかんでスッキリ整理!?
物価上昇が続く中で、2022年度の年金額は0.4%の減額となった。この背景は、物価変動の反映が約1年遅れることに加え、現役世代や将来世代とのバランスに配慮しているためである。

詳しくは記事を参照していただくとして、ここではその要点をまとめておきます。

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年金の改定は「前年の物価の変動」が基準になっている

「最も大きな答え」からいえば、年金の改定はその年の物価の動向ではなく、「前年の物価の変動」が基準になっているからです。2021年は物価の変動率が-0.2%でした。ニッセイ基礎研究所による記事中の図がわかりやすかったので引用します。

ニッセイ基礎研究所の解説

このように、物価の反映にはタイムラグがあるのですね。

なお、2021年は現役世代の賃金の変動率は-0.4%でした。年金の改定は、現役世代との負担の公平のために、「物価の変動」と「賃金の変動」のより低いほうが年金に反映されることになっています。2021年は賃金の下落が大きかったので、2022年には賃金変動率の-0.4%が反映されることになりました。

物価の変動についていければ同水準の生活はできるわけなので、基本は物価に連動する方針がとられています。ただし、賃金が物価の上昇を下回った場合は現役世代も厳しい状況ということで、その場合は賃金の変動に合わせる改定を行って受給者と「痛み分け」をするというしくみです。

逆に、物価が上がった年の翌年に物価が下がれば、「物価が下がったのに年金は増額」という改定になることもあります。2020年はそうだったようです。

年金で本当にギリギリの生活をしている人にとっては厳しい1年になりますが、現在の受給者と将来の世代のバランス上、そのようなしくみになっています。そもそも、減額改定となるようなときは現役世代にも余裕がないわけです。

少子高齢化と長寿化の影響は「マクロ経済スライド」で対応

年金には、支給金額への影響を与えるしくみがもう1つあります。それが「マクロ経済スライド」です。

年金のしくみは大まかにいえば「現役世代が納めた保険料を受給者に配分する方式(賦課方式)」です。これは少子高齢化の影響を受けます。また、1人の寿命が延びればその分受給額も増えるので、長寿化の影響も受けます。

そうなると、原則として負担を増やすか受給を減らすかのどちらかしかありません。そして、受給額を調整するのがマクロ経済スライドです。

なお、これは年金が増額改定になったときにのみ発動され、減額となったときは繰り越すしくみになっています。今回は減額改定だったので発動されませんでしたが、今年は物価上昇がほぼ確実なので、賃金が上昇すれば増額改定になるでしょう。そうするとこの「マクロ経済スライド」の減額分も年金に反映されてきます。

このような方法がとられているのも、現役世代と受給者の長期的な公平性のためです。これを機会に、年金制度について解説している本を読んでみるのがよいと思います。以下の2冊がオススメです。

◆年金保険を始めとした社会保険の仕組みを理解することにも役立ちます。

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