インデックス投資を推す2人の学者の共著:『投資の大原則』

書評

なまずんです。

バートン・マルキールチャールズ・エリス。インデックス投資家ならば,その名を知らない人はいないとしても過言ではありません。

その2人の共著の第2版が2018年7月に出版されたので,私の視点からレビューします。

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インデックス投資の原理と実践の書

シンプルなインデックス投資の原理と実践的な内容を知りたい人に好適書です。

インデックス投資の利点と原理をまとめた名著には『ウォール街のランダム・ウォーカー』『敗者のゲーム』などがあります。しかし両書とも分厚く,読破には予備知識も多少は必要です。それに比べ,本書は「まずは貯蓄を始めよう」など,インデックス投資を始める人の視点でより実践的に書かれています。

文体も『ウォール街のランダム・ウォーカー』は多少の冗長さを感じますが,本書はすっきりとわかりやすく書かれている印象です。斜め読みでも内容が頭に入りやすく,私はすでに3回,目を通しました!

本書の情報

著者・訳者

著者

バートン・マルキール
1932年生まれ。米国プリンストン大学名誉教授。ベストセラー『ウォール街のランダム・ウォーカー』で有名な経済学者。米国の投資会社バンガード・グループの社外重役の経歴がある。

チャールズ・エリス
1937年生まれ。機関投資家向けコンサルタント社長を務める。ベストセラー『敗者のゲーム』の他,著書多数。バンガード社外取締役も務めた。

訳者

鹿毛雄二
ユージン・パシフィック代表。投資会社トップを歴任した。『敗者のゲーム』(原著第6版)の訳者。東京大学経済学部卒。

鹿毛房子
ECC外語学院講師を26年務める。米国マーシー・カレッジ卒。

発売日・版元

2018年7月4日発売。『ウォール街のランダム・ウォーカー』,『敗者のゲーム』の訳書と同じ,日本経済新聞出版社。

本書の構成

目次

1 まず貯蓄を始めよう
2 シンプルな投資法
3 一に分散、二に分散、三に分散
4 大きな失敗を避けよう
5 私たちが勧めるKISSポートフォリオ
6 暴落期でもあてはまる大原則

誰を読者対象とするか

インデックス投資の利点をコンパクトに知りたければ,投資の未経験者・経験者とも本書は有用です。特に駆け出しの投資家にはシンプルな原理を知り,投資継続にあたって振り返るきっかけとして役立つと感じます。

冒頭にある「第2版刊行にあたって」(バンガード最高投資責任者,ガス・ソーター執筆)によれば,著者の意図は,若者には複利効果の素晴らしさを伝え,経験者には思い違いや無意識での間違った行動を伝え,投資の成功確率を上げるという趣旨が記載されています。

運用の中核はシンプルに

書中の内容はコンパクトながらいずれも素晴らしい内容です。投資を始める段階からポートフォリオを組むまで,実際の流れにのっとって書かれているのが非常に明快にまとまっていました。

何よりもまずは貯蓄

投資をするお金がないことには,リターンが2%だの,5%だの,10%だのといっても始まらない(p.19)

全てはこの言葉の通りですね。原資がないところに投資の話は始まりません。

「投資本」である本書が投資法そのものではなく,原資を作る重要性を1章を割いて説明していることが示すように,実際に難しいところだろうと感じます。

具体的な方法としては,

  • 家計簿をつける
  • 毎朝のカフェラテを普通のコーヒーにする
  • ピークを避けた行動をする

など,定番ではありながらつい忘れがちな手法を唱えています。

適度な節約は余裕資金を増やすことから,将来への不安を減らし心を穏やかにすることでしょう。「お金持ちは余裕持ち」との言葉もあるように,お金があることで心に余裕も生まれます。実際,私は学生時代は貧乏で,しばしばお金のことを考えて心が穏やかでない時もありました。適度な節約は投資資金だけでなく,心の余裕も生み出します。

この章では有名な「72の法則」(72÷投資年数=原資が2倍になる概年数)を紹介しながら複利効果の解説もしています。

9つの基本ルール

まとめに当たる「5 私たちが勧めるKISSポートフォリオ」(KISS=Keep It Simple, Sweetheart)に記載された「9つの基本ルール」はインデックス投資に限らない鉄則も一覧になっています。

9つの基本ルール
①お金は若いうちから定期的に貯めよう
②会社と国に資産形成を手伝ってもらおう
③不時の出費に備えて,現金は用意しておこう
④保険をかけているか確認する
⑤分散投資をすれば心配の種が減る
⑥クレジットカードのローンは使わない――これに尽きる
⑦短期運用への衝動を無視しよう
⑧低コストのインデックス・ファンドを使う
⑨オーソドックスな分野に注目。ベンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティ,ヘッジファンドのような「目新しい」商品は避けたほうがよい

最後の⑨は,普通株,債券,自宅用不動産の3つ以外への投資を避けるべきとの指針です。本書では詳しく記載されています。

2人の勧める年齢別ポートフォリオ

私達の資産配分の基準:
自分の年齢とその年齢による市場リスクの許容範囲に従って,賢く資産配分を変えること。(p.148)

インデックス投資の投資成績に最も影響を及ぼす点は株式と債券の投資比率と言われています。インデックス投資の権威である両名の勧めるポートフォリオはどのようなものでしょうか。

 マルキールの株式比率エリスの株式比率
20~30代75~90%100%
40代65~75%85~100%
50代65~75%75~85%
60代45~65%70~80%
70代35~50%40~60%
80代以上20~40%30~50%

2人の間で割合には多少の違いがありますが,若年層ほど株式比率が高く,徐々に債券比率を高めるという傾向は同じです。

本書では,マルキールの計画は慎重な人向けであるが,エリスの視点では少し用心深すぎると考えていると書かれています。エリスは若い人は人生で労働収入を得る機会が多いため,リスクを取れると判断しポートフォリオを組んでいますが,マルキールは失職の可能性も指摘しています。

いずれにせよ,現時点の2人の見解は株式比率が高いほど長期の期待リターンは高く,市場の変動にどの程度心理的に耐えられるかが重要という点で一致しています。

インデックス投資の要点を知りたい人にオススメ

その他,本書は「投資の大原則」を名乗るように記載が充実しています。今回のレビューでは触れませんでしたが,過去の株式・債券のリターンの実績,インデックス運用に勝てるアクティブファンドは約3分の1であること(かつ,事前に見つけるのは難しいこと),年1回程度のリバランスの効用についても数字を用いて解説されています。

一方で,注意すべきは3点。
1つはどのように投資を終えるかが記載されていないことです。『ウォール街のランダム・ウォーカー』では「年率4.5%で取り崩す」など具体的に書いてありますので,「投資の大原則」と銘打つならこの点も詳しく記載してほしかったです。

2つめは両名ともバンガード・グループの役員を務めたことがあり,書中のおすすめ投資先はバンガードの商品が過半を占めています。優良商品が多いのは確かですが,利益相反がないとは言えません。

3つ目は日米の差です。米国の401kなどの制度面や,信託報酬の例示が米国の商品である点は少しイメージしづらいかもしれません。

とはいえ,投資信託による資産運用は,なるべくシンプルで低コストという通底した理念には膝を打つものです。インデックス投資の要点を概観するには間違いなく良書でした。

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