長寿化を「恩恵」に変えるには:『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』

書評

なまずんです。

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2017」で総合グランプリを受賞した話題書『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』を2018年12月に読みました。長寿化の進む社会における仕事とお金の関係だけでなく,新しい生き方を提案する良書でした。

読んでの感想は「もっと早く読めばよかった」。20代,30代と言わず,10代の後輩たちにはぜひ一読を勧めたいです。

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長寿化と仕事・お金の関係を考察した一冊

「将来の年金支給額が現在の水準を大きく下回る」と言われて久しいです。その理由は2つあります。一つは支え手の減少。もう一つは高齢者がより長く生きるようになったことです。

こういった話題では,「長寿化」はまるで災厄のように話されます。しかし,その解釈は正しいでしょうか? 「より長く生きられる」ことで,一人ひとりに与えられた人生の時間は長くなります。

長寿化は災厄ではない。知識や経験を有効活用できる生き方を設計することで,多くの人にとって長寿化を恩恵として人生を切り開くことができるのではないか,と訴えるのが本書です。

長寿化によって,教育→勤労→引退という過去数十年の人生設計は通用しなくなってきています。これまで,いうなれば年齢によって人生のステージは切り分けられていました。これからの社会を作る世代はその壁を破壊し,新たな人生設計を描き出す必要があると本書は訴えます。

本書の情報

著者・訳者

著者:リンダ・グラットン氏,アンドリュー・スコット氏

リンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の共著。

グラットン氏は英ロンドン・ビジネススクール教授で,人材論,組織論の世界的権威です。英リバプール大学で博士(心理学)を取得。経営思想家。2013年に『ワーク・シフト』(プレジデント社)が邦訳。

スコット氏はロンドン・ビジネススクール経済学教授。財政政策,債務マネジメント,金融政策など,マクロ経済への造詣が深い。

訳者:池村千秋氏

『ワーク・シフト』他,ビジネス・経済書の翻訳を数多く手掛けています。非常に読みやすい訳でした。

発売日・版元

邦訳は2016年11月発行,経済分野に強みを持つ東洋経済新報社から。

本書の構成

目次

日本語版への序文
序 章 100年ライフ
第1章 長い生涯――長寿という贈り物
第2章 過去の資金計画――教育・仕事・引退モデルの崩壊
第3章 雇用の未来――機械化・AI後の働き方
第4章 見えない「資産」――お金に換算できないもの
第5章 新しいシナリオ――可能性を広げる
第6章 新しいステージ――選択肢の多様化
第7章 新しいお金の考え方――必要な資金をどう得るか
第8章 新しい時間の使い方――自分のリ・クリエーションへ
第9章 未来の人間関係――私生活はこう変わる
終 章 変革への課題

誰を読者対象とするか

20代,30代を中心に,40代までの勤労者には一読の価値があります。50代以上の人にとっても,自分に関係ない話ではなく,組織や社会の変革についていくためには知るべき内容でしょう。実際,今の50代も80歳,90歳まで生きる人はかなり多いはずです。

また,私より若い世代の10代にもできれば読んでもらいたい。20代後半の私にとって衝撃だったので,より多くの可能性を秘めた10代の若者には多大なるインパクトがあるでしょう。

長寿化を災厄にしないために

「2007年生まれの日本人の半分は,107歳まで生きる」。衝撃的な予言で始まる本書は,決して虚言を並べた書籍ではありません。過去150年の平均寿命の延伸ペースを踏まえれば,実現不可能な数字ではないと著者らは述べています。

ここまで長寿化が進むかは多少なり怪しい気もしますが,仮に延伸ペースが落ちたとしても,健康水準や医療技術の底上げにより,100歳まで生きる人は珍しくない時代が来るのは間違いありません

そんな世界では,人はどんな人生を送るのでしょうか

「100年ライフ」で何が起こるか

本書の序章「100年ライフ」(17~38ページ)に列挙される予言は圧巻です。その多くは働き方にかかわるものです。なぜなら,長寿化によって人生の時間は増えるものの,引退後の時間だけを増やすことは不可能だからです。

  • 70代,80代まで働く
    ⇒お金の問題で,引退後の期間を延ばすことはできない
  • 新しい職種とスキルが登場する
    ⇒ロボットと人工知能(AI)の登場で,スキルに再投資しなくてはならない
  • 人生の「ステージ」が増え,変化が当たり前になる
    ⇒教育→勤労→引退という3ステージの生き方に変化が必要となる
  • 人生に新たなステージが現れる
    ⇒「選択肢を広げる」ステージが生まれ,選択肢を持つことの価値が増す
  • 若々しく,実験しながら生きる
    ⇒寿命が延びることは,若い期間が延びること。正解のない生き方探しが始まる
    ⇒余暇をレクリエーション(娯楽)から,新たな挑戦へのリ・クリエーション(再創造)に使う

……衝撃的でした。何となく,人生は80年,60代まで何らかの仕事をして,その後に引退生活を送る旧来の人生設計が私の頭の中にあったからです。論理的かつ一気呵成にそのイメージを崩されました。

ただ,確かに著者らの指摘する通りだと思います。私も含めて今の20代はスキル・知識への再投資や転職の選択肢の確保に,これまでの世代より無意識に気を配り始めているように感じます。

お金の問題を解決するために,私達は長く働く必要がある

100年ライフを満喫するにはこれまでの考え方では不十分です。その代表的な理由は,老後資金が厳しくなるから。書籍では1945年,1971年,1998年生まれの3人の人物を登場させ,現在の社会が続くと次第に老後資金の確保が難しくなるとシミュレーションしています。

今と同じく,引退年齢65歳の場合,老後資金はどのように準備すればよいでしょうか。老後の生活費=最終所得の50%,長期の投資利益率=3%,所得上昇のペース=4%として,以下のように試算しています。

生まれ年1945年1971年1998年
平均寿命70歳85歳100歳
勤労期間42年44年44年
引退期間8年20年35年
毎年の貯蓄4.3%17.2%25%

はっきり言って,44年にわたって年間の収入の25%を貯蓄し続けることは無理です。17.2%でも不可能でしょう

ではどうするか。働く期間を延ばし,引退期間を短くするしかありません。長寿化により延びるのは引退期間だけではないのです。実現可能な10%程度の年間貯蓄率に抑えるには,1971年生まれの人は70代前半まで,1998年生まれの人は80代半ばまで働く必要があるというのが著者らの見方です。

しかし,これまでの働き方が単に続くわけではないと本書では警鐘を鳴らしています。就職前や勤労期間中に身につけたスキルや経験は,徐々に古びてしまうからです。変化の多い時代です。20代から80代まで,60年間にわたって同じスキルが通用するわけがありません。

長寿を災厄から贈り物に変える「資産」を知る

本書が画期的なのは,長寿化を恩恵として活用するために,「有形の資産(お金や有価証券,不動産など)」だけでなく,充実した勤労生活を送るための「無形の資産」を評価していることです。「無形の資産」には以下の3つのクラスがあると説いています(第4章「見えない『資産』」127ページ)。

  • 生産性資産
    ⇒所得を増やすのに欠かせない,労働生産性を高める知識・スキル
  • 活力資産
    ⇒肉体的健康・精神的健康と幸福。友人関係,パートナーとの関係も含む
  • 変身資産
    ⇒人生の転機を活かす姿勢と多様性に富んだ人的ネットワーク

いずれも,有形の資産を作り出す上でも重要です。

特に著者が指摘するのは,3つ目の「変身資産」が100年ライフでは新たに重要になるとのこと。20代から70代,80代まで働くには1つのスキルを使い続けることは困難です。人生の長きにわたり,充実した勤労生活を送るには,人生のステージにおいて働き方を変える必要性が高まります。新たな道に進む上で必要なネットワークと,変化を楽しむ姿勢が必要とされてきます。

気になるところから読んでほしい

一言,注文をつけるとすれば,後半は冗長な印象を受けます。同じ主張を違う切り口から繰り返すだけだからです。本書は特に前半が重要で,私が衝撃を受けたのは序章から第7章でした。後半は目次を見て,気になるところを読む程度でもよいかもしれません。

今後の社会の変化の一例を知りたい人にオススメ

現在の平均寿命の延伸のペースが続けば,1990年代前半に生まれた世代の半分はちょうど100歳まで生きる計算になります(私です)。

これまでは何となく,「人生は80年」と考えていました。1980年代生まれの人は,「人生70~75年」と考えていたかもしれません。

ですから,「人生100年」に備えられている人は少ないはずです。

100年の人生を展望すれば,20代後半の私にとってはあと70年の人生があります。この20~30年をどう生きるか,事前に考えながら生きるのとそうでないとでは,人生の充実感は全く違うものになるでしょう。

長寿化によって増える20年,30年が耐え難い災厄になるか,何事にも代えがたい福音となるか。本書はその岐路における指針になるでしょう。人生を歩んでいく上で,心に留めておきたいと思います。

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