「わかりやすい文章」の作り方がこの一冊で学べる:『迷わず書ける記者式文章術』

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なまずんです。

「文を書くこと」は誰にでもできます。しかし,文章を作るのは簡単そうに見えて本当に奥深い世界です。

本業編集者となって3年が経とうとしていますが,本音を言うと文章を作る難しさに日々苦労しています。わかりやすく,かつ正確に文章を作るコツは何でしょうか。

本業編集者・副業ブロガーとして文章力を上げたいと思って購入したのが本書です。

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「何かを伝える文章」の書き方にはルールがある

文章には実用文と芸術文(小説など)の2つがあります。このうちわかりやすさが求められるのは実用文です。全国紙の新聞,社内のレポート,何かを説明する個人ブログまで,世の中には実用文がたくさんあります。

「この説明はわかりやすい!」とあなたが思った実用文は,たいてい他の人が読んでもわかりやすいです。文章のわかりやすさや読みやすさには基準があるからです。

実用文の代表格といえば新聞です。多くの記者が作っているにもかかわらず,ムラなくわかりやすい文章に仕上がっています。

本書を書いた元日本経済新聞記者の松林氏によれば,新聞の文章は構造(役割を持ったパーツの組み合わせ)が決まっていて,そこに情報を入れ込んでいくスタイルなのだそうです。この本が面白いのは,そういったわかりやすい文章の構造分析をベースに文章術を解説しているところです。

平板な新聞の文章と個性豊かなブログ記事を一緒にするなんて! と感じる人もいると思いますが,レポート要素のある記事であれば,「何かを伝える」という点では一緒です。日記でさえ,未来の自分に伝えるという意味では同じでしょう。

著者によれば,文末などの表現が一部違うだけで,新聞もブログも基本的に文章構造は同じとのこと。私は本書を,「何かを伝える文章」を書く人は必読の一冊と感じています。

なお,本書に出合ったきっかけは私の職場です。ピカイチの文章力を持つ上司の机に置いてあったのを見て,「これは発見を得られるかもしれないぞ!」と思って購入しました。早速3回読み返して,付箋や折り跡でいっぱいの本書が手元にあります。

本書の情報

著者

松林薫氏。元日本経済新聞記者。京都大学経済学部を卒業し,同大学大学院修士課程修了。日本経済新聞社で経済部記者として15年間勤務し,2014年11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立した。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版),『「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方』(晶文社)など。

発売日・版元

2018年2月発行。慶應義塾大学出版会から。

本書の構成

目次

第1章 文章を書くとはどんな作業か
第2章 構想を練る
第3章 取材の方法
第4章 設計図を描く
第5章 文を書く
第6章 読みやすい文章とは
第7章 推敲する
第8章 説得力を高める
第9章 トレーニング編
終 章 本質を突く文章術

何かを伝える文章のルールの例

本書は文章を作る上での準備,文の順序,意味を伝えやすい文などを扱います。「誰に何を伝えたいかわからない」という人ではなく,「誰に何を伝えるか」がある程度見えている人向けの本です。

「誰に何を伝えるか」を私のブログで言えば,「20代の会社員に,資産運用・資産管理についての私の考えを発信する」(20歳ごろの自分に向かって語るイメージで執筆しています)。以下の個別記事であれば,「20代独身・実家暮らしの人に,実家に入れるお金の相場と事例を伝える」などに当たります。

お金をいくら家に入れるか――実家暮らし社会人に実際に聞いてみた
20代で独身の人と話してよく話題になるのは,「実家暮らしの社会人は,家にいくらお金を入れるか?」というテーマです。収入のうち,比較的自由にお金を使えるのが20代独身者のお金の事情で...

新聞記者は正しい情報をわかりやすく,厳しい締切までに書くプロフェッショナルです。その他,取材記事を書いてきた著者の視点から,読者のために何を書くかの選択基準が記されています。

本書の大きな流れを解説すると次のようになります。

①書くべき内容を明確にする(⇒2,3章),②適切な構成のパターンを選ぶ(4章),③とりあえず全体を書く(⇒5,6章),④推敲して文を整える(⇒7章)。私が本書を読んで勉強になった点を一つ紹介します。

①と②は文章の「構造」にかかわる部分,③と④が日本語としての「洗練」にかかわる部分です。全編にわたって文章術が見事に整理されていて参考になりました。本当は全てを紹介したいのですがそれは難しいので,「構造」にかかわる部分で簡単に紹介できるポイントを2つ紹介します。

文章を作る前に,仕様を決める

書くべきテーマを決め,内容がイメージできたらまず行うべきことは,文章の仕様を決めることです(本書62ページから)。想定すべきなのは以下の4つです。

  1. 読者
    良い文章かどうかは読み手が判断する
  2. 目的
    読者を楽しませるのか,自分の主張をまとめるか
  3. 分量
    大まかな字数と情報の取捨選択
  4. 締切
    限られた時間で書く

1はかなり重要な指摘と私は思います。マーケティング手法で「ペルソナ」と呼ばれる具体的な一人のモデルを想定して戦略を作ります。同様に執筆のときも特定の一人を想定して書くほうが伝えたいことが明確になり,良い文章になりやすいです。家族や友人,Twitterの特定のフォロワーなど,私は記事を届けたい代表的な1人を想定して書いています。

2~4は締まった文章を作るために必要な準備です。というのも,「何を書くか」と同じくらい「何を書かないか」が記事の執筆には大事な視点だからです。目的,分量,締切が不明瞭なまま書き始めてしまうと,主張に一貫性のない乱文になってしまいかねません。

読ませどころの設定

誰にを伝えるかというテーマは決まっても,意外に難しいのが読ませどころです。言い換えれば,「面白いと読者に感じさせる見せ方」に当たります。私も執筆に当たり,この見せ方の構想に最も時間を使います。著者の分析によれば,以下のパターンがあるようです。

  • 知らなかった知識を得る
    ⇒「知ってるつもりだったけど,記事で初めてデータを知った」など
  • 予想や常識を覆される
    ⇒自分の常識と違うことには意外性を感じて記事に引き込まれます
  • 別々の要素がつながる
    ⇒すでに知っている2つの知識の関連が明らかになると知る

切り口の発想法としてなるほどと思いました。当記事では割愛しますが,読ませどころの前提となる,「テーマの選び方」も3パターンに集約されていてとても興味深かったです。

文章を洗練させる着眼点も満載

他にも,以下のような具体的な技術指南も満載です。

◆読みやすい文の三原則(97ページ)

  • 1文は40字以内。長くても60字
  • 主張や説明は1文につき1つ
  • 受身形を使わない

◆推敲時,不要語の削り方(146ページ)

  • 意味がダブっているところ
    例:「そのまま直結する」→そのまま結びつくor直結する
  • わかりきった主語・修飾語
  • なくても意味が通じる接続詞

その他,このツイートで指摘したような点も載っています。

元記事はテレビ番組の書き起こしです。「話し言葉」としては違和感がなくても「書き言葉」としては違和感がかなりあります。傲慢な言い方ですが,これでGoサインを出した編集者には本書を読ませたいです。

ブログを書くだけでなく,編集者として本業でも参考になる内容でした。とても納得です。

独自性を出すべきなのは,文章術ではなく内容

本書は文章術を分析し,一般化したした本です。読んでの最大の気付きは,「文章『術』に独自性は不要」ということでした。つまり,書く内容に独自性は必要ですが,書き方に独自性はいらないのです。文章術は書き手の伝えたいことを読者に余すことなく伝えるための手段に過ぎません。

テレビに例えれば,番組の内容は面白くなければなりませんが,放送のための電波や言語は標準化されていないと広く発信できないようなものです。多くの読者に届けたければ届けたいほど,文章そのものは規格化したほうが良いかもしれません。

多くの人になるべく正確に,そしてダイレクトに思いを伝える文章術を身につけたい方にはおすすめの一冊です。

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