将来予測をもとに人口減少社会の変化を描き出した本:『未来の年表』シリーズ(河合雅司,講談社現代新書)

書評

人生の第二コーナーを激走中のなまずんです。

あらゆる社会経済予測の中で,人口予測ほど当たるものはありません。
経済指標の将来予測などに比べ,現在の人口構造と出生率,死亡率などから予測できる人口は単純だからです。

人口減少社会に突入して早10年,日本のこの先はどうなるのでしょうか?

日本に投資する投資家の一人として,そして日本人の一人として,当事者意識を持って本書シリーズを手に取りました。

  

この項目では特に衝撃を受けた1冊目を中心に紹介します。

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人口減少社会で,何が起こるか知っているか?

そこかしこで語られる「少子高齢化」。私にとっては物心ついた頃から使われている言葉です。
この10年くらいの間にも,街中に高齢者の姿が増えましたね。地方に行けば若者を見ることも珍しくなっている気もしますから,少子高齢化が進んだ実感はあります。

ただ,その実態がどのようなもので,この先少子化・高齢化だけでなく,本格的な「人口減少社会」が到来したらどうなるか。
割合が変化するのではなく,人の実数が激減していく。このインパクトは相当なものであるはずです。

その一方で,そこまでを具体的に考えたことがある人は少ないのではないでしょうか?

著者について

著者:河合雅司氏

1963年生まれ。産経新聞社論説委員,大正大学客員教授。中央大学を卒業後,産経新聞社に入社。内閣官房有識者会議委員,厚労省検討会委員,農水省第三者委員会委員,拓殖大学客員教授などを務めた。
他の著書に『日本の少子化 百年の迷走』(新潮社),『地方消滅と東京老化』(共著,ビジネス社),『医療百論』(共著,東京法規出版)などがある。
2011年6月から産経新聞に,「日曜講座 少子高齢時代」と題する連載を開始。この連載が本書のもとになった。

本書の構成

目次

『未来の年表――人口減少日本でこれから起きること』

●第1部 人口減少カレンダー
2017年 「おばあちゃん大国」に変化
2018年 国立大学が倒産の危機へ
2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
2021年 介護離職が大量発生する
2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
2025年 ついに東京都も人口減少へ
……ほか

●第2部 日本を救う10の処方箋 ――次世代のために、いま取り組むこと
「高齢者」を削減
24時間社会からの脱却
非居住エリアを明確化
中高年の地方移住推進
第3子以降に1000万円給付
……ほか

1冊目は「これから起きること」と題して,国・自治体レベルの社会に起こることをまとめています。
年表形式の「人口減少カレンダー」で2027年までは1年ごと,それ以降は数年ごとに起こり得る現実を列挙。第2部はそれに対する「処方箋」として筆者の提言がなされます。

『未来の年表2――人口減少日本であなたに起きること』

●第1部 人口減少カタログ
序 国民の5人に1人が、古希を超えている
伴侶に先立たれると、自宅が凶器と化す
亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる
東京や大阪の繁華街に、「幽霊屋敷」が出現する
高級タワマンが、「天空の老人ホーム」に変わる
80代が街を闊歩し、窓口・売り場は大混乱する
老後資金が貯まらず、「貧乏定年」が増大
オフィスが高年齢化し、若手の労働意欲が下がる
親が亡くなると、地方銀行がなくなる
若者が減ると、民主主義が崩壊する
ネット通販が普及し、商品が届かなくなる
……ほか

●第2部 今からあなたにできること
序 「戦略的に縮む」ほど、ポジティブな考えはない
1人で2つ以上の仕事をこなす
家の中をコンパクト化する
年金受給開始年齢を繰り下げ、起業する
……ほか

2冊目では「あなたに起きること」と題して,個人レベルに起こることをまとめています。
一覧となった「人口減少カタログ」で,18の起こり得る現実を列挙。第2部はそれに対して個人として何ができるか提言されています。

人口減少が進む日本に何が起こるか

人口構造と人数が変化する中で,現状のままだと起こること

すべてが衝撃的な内容ではありますが,本ブログの趣旨にのっとり,投資に関連しそうなテーマについて簡単にまとめます。

2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
独居世帯は3分の1超。ひとり暮らしをする貧しい高齢者の急増が大問題に(p55)

人口は2008年にピークを迎えたのに対し,世帯数は増加しています。世帯数は2019年の5307万世帯まで増えると予測されています。
その理由はひとり暮らし世帯が増えるから。特に,高齢者のひとり暮らしが増えていくでしょう。

2023年 企業の人件費がピークを迎え,経営を苦しめる
労働力人口が5年間で約300万人も減る一方,団塊ジュニア世代が高賃金をもらう50代に突入(p60)

労働力人口は2010年から2015年で295万人も減少しています。購買力があり,社会を支える層である労働力人口の減少は①消費が総額として減少し,税収などが減少する②採用不足となり,サービスの提供量や製品の製造量が減少するという2つの点から社会に悪影響を及ぼします。
労働力人口そのものも高齢化し,50代が最も多くなる時代が来るでしょう。

2025年 ついに東京都も人口減少へ
息子や娘を頼る高齢者が,若者の代わりに地方から東京に流入し始めると(p.75)

23区のピークは2030年の979万人,多摩・島嶼地域は2020年の426万人でピークを迎えると推計されている。高齢者は一貫して増え続け,特に75歳以上の後期高齢者が増加する。

2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
増大する「老いる家」のせいで街の景観は崩れ,治安も悪化してゆく(p.93)

2013年時点で全国の空き家は820万戸(13.5%)。すでに地方だけでなく,都市部でも駅から遠いエリアなどは空き家が増える現象が起こっています。空き家が増えると,ことに管理の複雑なマンションの空き家が増えることが問題になり得ます。

2040年 自治体の半数が消滅の危機に
青森市・秋田市などの県庁所在地ですら,消える可能性がある(p.109)

地方は一貫して人口が減り,東京は一貫して増えるわけではありません。自治体レベルで足立区(21.3%減),葛飾区(19.2%減),杉並区(15.5%減)などが大きく人口を減らし,中央区(14.4%増),江東区(8.5%増)など大きなばらつきが予測されています。

例えば,どんな対策があるか

1冊目の第2部には10の「処方箋」があります。一つを紹介します。

「高齢者」を削減
高齢者の線引きを「75歳以上」へと引き上げてみよう。すると,2065年の高齢者の割合は25.5%にまで下がる。同時に現行14歳以下となっている「子供」の定義も「19歳以下」とする。いまや15歳で就職する人はごく少ないからだ。(p.162~164)

「高齢者」の線引きの変更は根拠のない暴論ではありません。「高齢者」の線引きを引き上げようと提言したのは日本老年医学会などのワーキンググループ(2017年1月)。一昔前の65歳より,今の65歳の身体能力・知的能力は5~10歳ほど若くなっているというのです。有名な例を引用すれば,「サザエさん」の波平は今の70代のような見た目をしていますが,実は54歳。昭和時代の50代と今の70代のイメージが一緒です。

社会保障に頼るであろう全員におすすめする本

絶望的とも言える内容が羅列されている本書。正直なところ,本書の内容は70代までの人全員が読めば衝撃を受けるはずです。

切実な将来として受け止めている20~30代の若者だけでなく,高齢者の人数がピークを迎える2040年代に高齢者となる40~50代の人が現在と同じイメージを持っていては,社会の変革に飲み込まれるでしょう。

また,人口減少社会を見据えて現在のサービスは10年後にも変わっているでしょうから,社会保障に身を預けている60~70代にとって,現実から目をそむけることは死活問題を導きかねません。

社会の変化速度は増す

冒頭の「あらゆる社会経済予測の中で,人口予測ほど当たるものはありません」を覆すようですが,本書の内容がそのまま現実に起こるわけではありません。

かなりの人口減少は確かに起こるでしょう。そして私たちはその目撃者になるわけです。
減少の速度が多少緩やかになるか,さらに激しさを増すかといった程度の誤差はあるにしても,もはや人口減少は避けることができません。

一方で,私たちの生活スタイルは急激に変化してきました。
この10年の技術の進歩を考えれば,例えばスマホの浸透,ネットショッピングなど私たちの生活は常に変化の渦中にあります。

最近でもセルフレジを導入した店が増えるなど,社会構造の変化と技術革新による生活スタイルは変わってきましたね。

これまでは高齢者が増え,子どもが減るだけでしたが,この先は「人口減少」というインパクトが加わることで,社会の変化速度は増すでしょう。
そのときに柔軟に自分も変化し,社会の中でうまく立ち回る。そういった生き方が今後求められると考えています。

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