とある「有料note」を発端に小さな騒動がありました。無料でも大量に転がっている情報を安くない値付けで,買い煽りながら販売するのはいかがなものかという意見が多く上がった案件でした。「有料の情報」は必ずしも「優良な情報」ではないという一例でしょう。
詳しくはブロガーのねこまにあさんが書いています。
賛否はあるにせよ,誰もが簡単に情報を発信できるようになった今でも,世の中には有料の情報があります。問題は有料であるかどうかではなく,それが「優良な情報」,すなわちほかと比べて優れた情報であるかどうかにあります。情報を有料で購入するかどうかは個人の判断ですが,それで損をこうむる人が出るのは気の毒ですから,批判の声が上がるのは当然のことです。
しかしながら,私自身も有料の情報をたくさん参考にしています。情報は有料・無料ではなく中身が重要です。すなわち,その選び方が大切です。
そこで,この記事では投資をするうえで私が購入してきた情報や,情報を選ぶうえで重視していることをまとめました。
私が有料で購入した情報は本が多い
私が有料で得た情報のほとんどは書籍で,雑誌も数冊を購入しました。取り組んでいるインデックス投資を中心に,次のような情報を購入しました。
- ウォール街のランダム・ウォーカー(バートン・マルキール)
- 敗者のゲーム(チャールズ・エリス)
- 株式投資の未来(ジェレミー・シーゲル)
- お金は寝かせて増やしなさい(水瀬ケンイチ)
- 投資の大原則(バートン・マルキール,チャールズ・エリス)
- お金で損しないシンプルな真実(山崎元)
- 金持ち父さん貧乏父さん(ロバート・キヨサキ)
- 人生100年時代の年金戦略(田村正之)
- ちょっと気になる社会保障V3(権丈善一)
- ファイナンス理論全史(田渕直也)
- 会計の世界史(田中靖浩)
- 金利と経済(翁邦雄)
- FP2級,3級の参考書と問題集 など
ここで挙げたのはごく一部で,実際はこの倍以上あります。また,物件を買う前にも不動産投資などに関する本を10冊ほどは読みました。
「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン)や「雇用,利子および貨幣の一般理論」(ジョン・メイナード・ケインズ)などの関連領域も定番書はいくつか持っています。少数ですが,株のファンダメンタルズ分析やチャート分析に関する本やFX(外国為替証拠金取引)の実践者が書いた本も目を通しました。
いわゆる研究者による「理論書」と,それを実践する方法をまとめた「実践書」を持っています。その理由は,その後に自分で判断するときに必要な知識になるからです。単に「情報をコンパクトにまとめました!」というような本は買うに値しないと考えています。
同様の理由で,個人がただ書き連ねただけの「note」などは購入したことはありません。重要なことは,冒頭にも書いたように「有料の情報」が必ずしも「優良な情報」であるとは限らないことです。
優良な情報を選ぶうえでの考え方
さて,私は有料で提供される情報を買うかどうかを判断するときには次の3つに注目することにしています。
書くべき人が書いていること
1つ目は「書くべき人が書いていること」です。
- 深い見識のある人かどうか
- 読者との間に不当な利害関係がないかどうか
深い見識というのは「ちょっと情報をまとめてみた」という程度ではなく,その分野を探求してきた人です。
たとえば,「GAFA勤務の私が勧めるつみたてNISA」や「東大卒の僕が解説する投資理論」などといわれても,GAFAや東大と説明しているテーマの間には関連がないことに気づいていますか?
当たり前のことですが,重要なことはすごそうな肩書ではありません。つみたてNISAについて書くならばその人がつみたてNISAを正しく理解しているかどうかです。投資理論を説明するならばその人が理論を正しく理解しているかどうかに尽きます。
なお,読者との間に大きな利害関係がないことも重要です。信用できそうな雰囲気につられてついていくだけでは痛い目にあいます。単に商品を売りつけたいだけのアフィリエイターや信者ビジネスに巻き込まれても得るものは何もありません。
中立的な研究機関や公的機関とつながりのある発信者や,3つ目で述べるように「同じ分野の専門家」がきちんと評価している情報源を選びましょう。
自分に必要な内容が書いてあること
2つ目は「自分に必要な内容が書いてあること」です。
たとえば,イヌを飼うときにネコを飼っている人の説明ばかりを聞いてもうまくいきません。イヌを飼っている人の話を聞きましょう。
投資の環境は国によって違います。投資制度や税制,投資できる商品が異なるからです。
インデックス投資をするうえでは米国の研究者が書いた本だけを読んでもうまくやることは難しいでしょう。重要なことは自分にとってその内容を実践に落とし込むことなので,立場の近い日本の実践者の情報を得ることも必要です。世代が異なると運用の指針がかわることもあるので,同世代の人ともつながりをつくるほうがよいでしょう。
また,基礎からしっかり学びたいようなときは,本などはそれ一つでもれやぬけの少ない体系的な理解につながるという面もあります。これは適切な知見を得る上で大切です。
ほかの詳しい人から一定の評価を得ていること
3つ目は,「ほかの詳しい人から一定の評価を得ていること」です。
科学の領域では,研究成果を論文として世に出す際に,同業の研究者があらかじめ読んで精査します。いわば,専門家の「お墨付き」は,それを読む人たちにとって重要な評価軸です。
これはブログやnoteも同じです。無料のブログやツイートであれば,同じ分野の見識のある人からの評価はその内容の指標になります。
ここで重要なことは,「多くの人が賛同していること」ではなく,「詳しい人の多くが賛同していること」です。大して詳しくもない人の賛同はあってもなくても同じです。
本であれば,わかりやすい評価軸は改訂や重版を重ねているかどうかや,似たようなテーマで著書・執筆が多いこと,詳しい人の推薦があるかどうかです。いっときのブームで終わらず,多くの読者に支持され続けることは,内容が優れていることの証左です。
また,考え方の異なる人からの内容に関する批判があったときは「アンチは無視」などといわずに,正対して答えられるかどうかも重要ですね。
有料情報に限らず,無料でも同じ
繰り返しになりますが,「有料の情報」と「優良な情報」は別物です。ほかと比べてあまり優れていない情報にお金を投じるのはあまり得策とは言えません。また,無料であっても無益な情報に触れては時間の無駄です。
ここまでは有料の情報に着目してきましたが,無料の情報であってもこれらの3つの考え方は重要です。
金融庁の公開データによれば一般NISA・つみたてNISAの口座開設数は2020年6月時点で1445万を超えています。日常会話で投資について話題にすることは少ないにしても,投資について詳しい人は相当な人数にのぼります。
そのような人たちの中には優れた情報を発信している人もたくさんいます。情報を判断する精度を上げていきましょう!
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