NISAの拡充と恒久化に向けた「検討」は着実に進んでいる――資産所得倍増プラン

221130NISAの拡充と恒久化に向けた「検討」は着実に進んでいる――資産所得倍増プラン NISA・つみたてNISA
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2022年11月28日の「新しい資本主義実現会議」にて、「NISAの抜本的拡充と恒久化」などの必要性がはっきりと書かれた「資産所得倍増プラン」が取りまとめられました。

全17ページの分量のプランですが、5年間でNISA口座での買付額を倍増させ、投資額全体の倍増を経て、長期的には国民の資産所得の倍増という野心的な目標を描いている良い案だと思います。

過去にも書きましたが、この国は世界に先駆けて豊かになり、資本を蓄積してきました。それを投資に回して、これから続々と発展する国の経済成長の分け前にあずかるのは、日本がより豊かな国になっていくうえでも重要です。これができるのは先に豊かになった国の「先行者利益」なのですから。

さて、ここからは「資産所得倍増プラン」について、とくにNISA制度に関する方向性を見ていきます!

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資産所得倍増プランはNISAの強化をはかる

まず、今回の取りまとめで決定された「資産所得倍増プラン」は次の7つの取り組みからなっています。

① 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる NISA の抜本的拡充や恒久化
② 加入可能年齢の引上げなど iDeCo 制度の改革
③ 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
④ 雇用者に対する資産形成の強化
⑤ 安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
⑥ 世界に開かれた国際金融センターの実現
⑦ 顧客本位の業務運営の確保

NISAとiDeCoは冒頭に掲げられ、とくにNISAについては3.5ページも使っているという力の入れようです。

NISAは7人に1人が使っていて、年収500万円未満が利用者の7割

「資産所得倍増プラン」でNISAが注目されているのは、2014年の開始以来、その利用者が着実に増加し、現在では国民の7人に1人にあたる1790万ものNISA口座が開設されていること。そしてNISA利用者の7割は年収500万円未満であり、経済的に豊かな層だけでなく、いわゆる庶民の資産形成に使われている現実があるからです。

「利用されている」という事実がさらなる拡充に重要だということもこれまでに書きましたが、実際に周りに使っている人も増えていますし、庶民にも必要不可欠なインフラになってきていますね。

プランでも、「NISAは中間層を中心とする層に対して、資産形成の入り口として定着しつつある」と分析されています。もともと増税(軽減税率の廃止)の緩和措置として導入されたNISAですが、つみたてNISAの開始などの拡充を経て、国民や経済のための必要不可欠なツールとしての強烈な意義が強調されるようになりました。

そして、現在は次元措置で、かつ投資金額の制約も多いことから、今回の「恒久化」と「拡充」の必要性が強く訴えられることになっています!

◆NISA制度を含む証券税制の変遷についてはこちらもどうぞ。結構変わっているのです。

証券税制の変遷とNISA
2020(令和2)年度の税制改正の議論が進む中,非課税投資口座であるNISAの恒久化は今年も見送られる方向となりました(共同通信,NISAの恒久化を見送りへ)。NISAの恒久化につ...

NISA制度の恒久化と非課税保有期間の無期限化

NISA制度に関する施策のなかでも、最初に掲げられているのが次の2つです。

一般 NISA とつみたて NISA のいずれも重要な意義を有するものであり、そこで、NISA 制度を恒久化することによって、中間層を中心とする層が将来にわたって安定的に資産形成を行う環境を整備する

NISA の投資に関する適切な生涯の上限枠を設けることを前提として、NISA の口座において購入した金融商品について、金融商品から得た利益(配当金、譲渡益等)が非課税となる期間について無期限とし、金融商品の長期保有へのインセンティブを抜本的に強化する。

NISA制度、とくに一般NISAの使いづらいところは、非課税投資期間が5年と短いことでした。また、一般NISAもつみたてNISAも次元措置で、「延長されなければ終わってしまう」という心配が常にありました。

短期的な投資刺激策ではなく、人生を見通して投資プランを作れるしくみとしてのNISA制度に生まれ変わると期待してよいのではないでしょうか?

投資上限額の増加

現在は年間の投資上限額が、一般NISAで120万円、つみたてNISAで40万円ですが、これについては以下のように上限アップの方向が提示されています。

NISA における非課税での投資の上限額に関して、一般 NISA 及びつみたて NISA それぞれの投資上限額の増加を図ることで、資産所得の倍増の目標の達成に向けて、家計の投資環境を整備する

(つみたてNISAは)現在の年間 40 万円の上限額では毎月の投資上限額が 3万 3,333 円と 12 カ月で均等に割り切れる額ではないことから、毎月均等額で積立投資が可能となる金額とすることも必要である

生涯の上限のほうが気になりますが、こちらの改革もどう動くか注目しています。

「検討」だけでなくいち早く実現を!

これらの施策はどれも、「オルカン」を長期的に積み立てていくような長期投資家には最大限の恩恵を受けられて、相性の良い改革案です。私も投資信託の長期保有を基本方針に実践しているので、この方向性には大いに期待しています。

なお、2024年からの「新NISA」については、複雑でわかりにくいという意見を踏まえて、「施行を見直し、現在検討中のNISAの制度の拡充を行う」という方向性です。複雑な一方で、投資家にとってメリットが少ない新NISAの見送りの方向はよいのではないかと思います。

冒頭でも紹介したこのプランの「NISA口座開設数の倍増」と「NISA買付額の倍増」という目標については、「その数値目標だけでは意味がない」という批判も出ていましたが、これは段階的な目標であって、そのような基盤がなければ資産運用収入も増えません。最終的な「資産運用収入そのものの倍増をはかる」という長期的な展望さえ忘れなければ、よい方向性ではないでしょうか。

さらに、ここでは紹介しきれていませんが、iDeCoも毎月の掛金の上限額の引き上げが検討される見通しです。時間があれば、ぜひ冒頭のリンクから「資産所得倍増プラン」を読んでみてください。

現状、投資家にとっては岸田政権の唯一のまともな策といえるもので、NISAの拡充・恒久化は検討だけでなく実現してほしいですね。

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