【書評】迷走した平成30年間の金融行政の舞台裏:『平成金融史』

190613【書評】迷走した平成30年間の金融行政の舞台裏:『平成金融史』 書評

なまずんです。

この本に『平成金融史』という名前が付いたのは奇跡的です。理由は本書が,10年以上の取材期間を掛けて書かれた本だから。たまたま平成が終わるタイミングと重なって,発行時期とタイトルを合わせたのでしょう。

ゆえに,「平成最後の〇〇」「平成30年の〇〇」と,ただ節目を冠しただけの薄っぺらい企画とは情報量が何桁も違います。書店で手に取ってパラパラと読んでみて,史実の裏の裏まであぶり出すような筆致に即買い,そのまま読破しました。平成の金融政策の迷走の舞台裏を詳説した本書が1000円未満で買えるのですから,この本は買いだと思います。

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「平成金融史は『失敗と実験』の連続」

バブル経済に始まり,崩壊後の不良債権処理に追われ,リーマン・ショックの打撃を受け,アベノミクスで終わった平成時代。右肩上がりだった戦後の日本経済が停滞に転じたこの時代に,行政は「何もしなかった」かというと,そうではありませんでした。著者の見方によれば,「失敗と実験」の連続だったというのです。

本書では平成を4つのフェーズに分け,大蔵省とその後継の財務省・金融庁の動きを軸に,時系列で金融関連の事件を追跡します。4つのフェーズとは,

バブル崩壊の衝撃に怯えつつも,地価の復活をひたすら信じ,問題の先送りを繰り返した1989年からの7年間。恐れていた金融危機が勃発し,大型連鎖破綻によって公的資金やゼロ金利を決断せざるを得なくなった95年央からの6年間。デフレの発生と不良債権の累増で大規模な量的緩和と竹中プランが出動した2002年からの6年間。そしてリーマン危機や東日本大震災後の円高でデフレが慢性化し,政治主導の異次元緩和に追い込まれた最後の10年余。(本書297ページ)

日本の金融政策が置かれた環境はフェーズごとに異なりますが,共通するのは,どの時代も前代未聞で,かつその場しのぎな施策を打ち続けてきたこと。銀行や証券会社の破綻防止だけを目的に,大蔵省が金融システムに対してどのように懐柔し,時に圧力を掛けてきたのか。後追いの対応が限界を迎え,北海道拓殖銀行,山一證券などが経営破綻するまでの鍵は何だったのか。「メガバンク」が誕生するまでに都市銀行は当局からどのような圧力を掛け,合併を誘導したのか。

そしてリーマン・ショック後の日銀の異次元の量的緩和政策に対する積極派と慎重派のせめぎ合いと,政治の力による決着に至る経緯など,激動の平成金融史における当局の「『失敗と実験』の連続」が,いずれの時代も緻密な取材による証言を余すことなく盛り込んで展開されていました。

なまずん
なまずん

秘話と交錯する関係者の思いが随所に綴られ,300ページの新書とはとても思えない圧巻の情報量でした。結果的に常に後手に回る対応を続けてきた点は残念ですが,今に至るまでの金融の歴史とその裏側は興味深い!

令和時代の金融行政はどう進むか

あとがきの一文が令和時代の今にも突き刺さります。

事前の問題の所在と大きさを認識することが難しく,予防的に手を打とうとすると,それがかえって社会的反発を招き,危機を増幅させ,時に政争の具にもなった(300ページ)

平成の金融の過ちと,直近で起こっている年金問題の構造は共通しています。令和時代に早速起こった「迷走」に,このままでは令和日本の未来は大丈夫ではないだろうと,今の金融行政を見て思います。

平成生まれの私は「失われた30年」と重なる平成時代の大半をほとんど知りません。しかし,このような本を通じて過去を追体験し,教訓を得ることはできます。

本書の情報

著者

西野智彦氏。元時事通信社記者,元放送プロデューサーでTBSホールディングス総務局長を務める。『検証 経済失政――誰が,何を,なぜ間違えたか』(時事通信社),『検証 経済迷走――なぜ危機が続くのか』,『検証 経済暗雲――なぜ先送りするのか』(いずれも岩波書店)などの著書がある。本書はこれらの著書をもとに再取材したもの。

発売日・版元

2019年4月25日発行。中央公論新社。

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