20代の老後資金の準備はつみたてNISAとiDeCoでほぼ十分

私の投資戦略
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20代で投資を実践している私のまわりでは,投資家が次々に増えています。私がFP2級を取ったことや,余剰資金を運用していることを人づてに聞いて相談してくる人もいます。

そのような資産運用に関する相談を持ちかけられたときに私が必ず尋ねるのが,「何を目的に資産運用したいのか」ということです。多い回答の一つが,今回のテーマである「老後資金の準備」で,将来に向けた備えを少しずつしていきたいが,その目安がわからないという疑問です。

退職金をあてに老後を設計できた時代であれば,20~30代のうちからこのような悩みを持つことは少なかったでしょう。社会の変化によって,「老後が見えてきたころから準備をするのでは間に合わない」という認識が広まってきたのかもしれません。

そこでこの記事では,遠い将来の漠然とした不安となる「老後資金」に対する私の考えをまとめました。その結論は次のとおりです。

  • 数年~10年ごとに見直すつもりで始める
  • そのうえで,準備は早ければ早いほうがよい
  • 20代であればつみたてNISAとiDeCoで拠出できる範囲で十分

それぞれを以下で説明していきます。

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数年~10年ごとに見直すつもりで始める

この項目を最初に挙げた理由は,20代の人が自身の老後を確実に想定するのはそもそも無理があるからです。

25歳の人が65歳で退職し,95歳で亡くなるとして,老後期間は40年後から70年後の30年間におよびます。この期間がどれほど長く,社会が変化していくかは次の例をみてください。

40年間:今から約40年前の1980年ごろは,白黒テレビがカラーテレビにほぼ置き換わり,エアコンも普及していきました。普通預金の金利が2~4%,大卒初任給は約11.5万円の時代でした。現在は普通預金の金利はほぼゼロで,大卒初任給は約20.6万円です。
30年間:これは平成時代とほぼ同じ長さです。平成初期はごく限られた人しか触れなかったコンピュータは,高機能化・軽量化・低価格化が進み,いまではスマートフォンを多くの国民が持つようになりました。

このような例は無数にあり,20代の人が迎える老後の世界には不確実性がありすぎます。老後にいくら必要で,どのような生活ができるのかをいま確実に予測することは困難です。

また,老後資金の準備を考える上でとても重要な次のような要因も,近くなってみないと推定が難しいものです。

  • 退職金の有無と,ある場合の金額
  • 教育費がかさむ壮年期の収入・支出の状況
  • 老後資金の運用の成果

たとえば,退職金については制度が変わる可能性があるとともに,キャリアのなかで転職することも普通になりました。また,壮年期は収入に差がつきやすく,支出は家族構成や教育課程などによっても変わります。運用の成果については予測通りにいくほうが珍しいと考えておいたほうがよいかもしれません。

「老後資金には〇〇円必要」という話題は平均をもとに算出したものが多いです。平均的な年金受給額などの大きな話につられがちですが,実際には人によって異なる事情が大きな影響を与えます。

共働きか片働きか,収入が多いか少ないかによって老後の年金収入には大きな差が出てきます。また,生活スタイルや健康状態によって支出も人それぞれです。

つまり,いま集められる情報をもとに計画を立てる必要はあるものの,立てた計画を見直さないままでいれば,いざ老後を迎えたときに,必要な金額が足りなくなったり,逆に必要以上にためこんでお金を使う機会を失ったりすることになりかねません。

数年~10年おきを目安に,計画を見直していくつもりで始めていきましょう。

準備は早ければ早いほうがよい

老後資金の準備には不確実性が多いからといって,放置するのはおすすめできません。準備を先送りすることは確実なデメリットです。それは,準備期間が短くなればなるほど1年当たりで積み立てなければならない金額が増えていくからです。

たとえば,65歳からの老後資金として2000万円を貯蓄すると決めた場合を考えていきましょう。

運用せずに利回りを0%と考えたときに,25歳,35歳,45歳,55歳から始めた場合の1年当たりの必要金額はいくらになるでしょうか?

準備開始年齢25歳35歳45歳55歳
準備期間40年30年20年10年
1年当たりの金額50万円67万円100万円200万円
積み立てる総額2000万円2000万円2000万円2000万円

1年当たりの金額は「2000万円÷年数」になるので,準備開始年齢が低いほど1年当たりの負担が小さくなります。

さらに,資産運用を行って年率2%の利回りを得られる場合で比較してみます。

準備開始年齢25歳35歳45歳55歳
準備期間40年30年20年10年
1年当たりの金額33万円49万円82万円183万円
積み立てる総額1320万円1470万円1640万円1830万円

運用益にさらに運用益がついていく「複利効果」も相まって,運用期間が長く取れる場合ほど積み立てる総額が少なくなりました。つまり,早く準備を始めると2つのメリットがあります。

  • 負担を分散させることで,1年当たりの負担が軽くなる
  • 運用を組み合わせることで,必要な総額が少なくなる

株式などで運用する場合は,安定して毎年2%ずつ増えていくような結果にはなりません。あくまで簡易なイメージです。なお,過去を振り返ると,幾何平均でも2%というのは保守的なほうです。

一般的には,数十年間といった長期にわたって投資し続けた場合は元本を割り込む危険性は減っていきます。たとえば米国の指数S&P500では,1950年代から現在に至るまで,運用期間が15年を超える場合では,どの年に始めても最終成果はプラスになっています(『ウォール街のランダム・ウォーカー』原書第11版p433より)。

20代であればつみたてNISAとiDeCoで拠出できる範囲で十分

それでは,どのくらいの金額を準備していけばよいでしょうか?

まずは必要な老後資金を予測し,それをどのように準備するかを考えていきます。

老後にいくら必要か

繰り返しになりますが,さまざまな要因が絡むために正確な予測は難しいです。ですが,なにか目安がないと準備は難しいため,仮に平均値をもとに計算してみました。

 

結果として,高齢夫婦世帯で約3600万円となりました。あくまでこれは物価上昇率や運用利回りを仮定した場合です。個人の事情や社会の状況によって,これより多くなることも少なくなることもあります。

 

 

受給する年金についての仮定

以下のような情報をもとに検討しました。

高齢無職夫婦の収支状況は,2019年に「老後に2000万円不足する」と話題になった報告書から流用しました。

5万4000円の取り崩しは平均値なので,資産家が大きく取り崩しているような影響も入っているため,一般的な高齢世帯よりは大きくなっていると推測されます。ですが,老後が遠い段階で細かく検討してもあまり意味がないことと,やや安全よりに推測したいため,これをそのまま使用します。

年金の購買力については,2019年財政検証では経済成長の程度によって6段階で試算されています。今回はそのうち,下から3番めをもとに検討しました。この段階は,実質経済成長率0.2%・物価上昇率1.1%・実質賃金上昇率1.0%・積立金の実質運用利回り2.1%の場合です。こちらも楽観的とは言えない数値を使います。

 

単身の場合は用意すべき金額は少し減ると思います。ですが,いま単身でも20代であれば今後結婚する可能性もあるので,念を入れるなら高齢夫婦世帯を想定してもいいかもしれません。

 

 

必要金額の試算

現在の高齢者と同水準の生活と考えて,その場合を前提に考えていきます。

老後の生活費は,年金収入+資産の取り崩しが基本です。2019年財政検証の下から3番目のケースですと,年金の購買力は物価の上昇分とほぼ等しく,受給開始後も物価上昇率に伴って上昇していきます。したがって,年金収入の部分は購買力がほぼ維持されます

そのため,“取り崩し”によって調達する部分が準備できればよいことになります。具体的には,2020年時点における毎月5万4000円に物価上昇率を反映した金額です。

計算過程は省略しますが,物価上昇率1.1%が続いた場合は,65歳時点で年間約101万円,94歳では年間約140万円が必要です。30年間での必要金額の合計は3583万円です。総額約3600万円と考えればいいですね。

 

老後資金を考える上で,影響が大きい要素の一つがこの物価上昇率です。

 

 

裏を返せば,年金制度の優れている点も見えてきます。それは物価上昇に連動する形で給付水準が変わっていくところです。一方で,自分で用意する部分は運用などで対応しなければなりません。

25歳から老後資金対策を考えるならば,つみたてNISAから

では,どのように準備すれば3600万円をカバーできるでしょうか? 非常にざっくりとした内容ですが,以下の前提で検討しました。

  • 25歳から64歳まで毎年一定金額を拠出していく
  • 資金は年率2%で運用される(物価を勘案した実質運用利回りではなく,名目値)
  • 65歳以降は年率2%で運用しながら必要金額を取り崩していく
  • 退職金は不明なので,0円と仮定

前の項目では老後資金の総額として約3600万円が必要としましたが,65歳以降も運用しながら取り崩す場合では,その間も運用益を稼げるので,以下のように65歳時点で必要な金額は約2700万円となります

さて,25歳からの40年間で,年率2%で運用できた場合,年間いくら拠出すれば十分な金額になるでしょうか?

年間拠出金額40年間での元本40年後の資産総額
40万円1600万円2464万円
45万円1800万円2772万円
50万円2000万円3080万円
55万円2200万円3696万円

年間45万円を拠出すれば65歳時点で2700万円を上回りました。

 

これまでの計算は利益にかかる税金を考慮していません。それを加味すると,年間50万円くらいの積立が目安になるでしょう。毎月およそ4.2万円です。

 

 

個人事情や経済事情を大胆に仮定して,2020年時点の平均的な高齢者と同程度の収入・支出をそのまま将来に当てはめた計算をもとに考えれば,老後資金の準備については夫婦でつみたてNISAを満額使う必要もないということです。現時点では次のような戦略を軸に,状況に合わせて積立金額を調整すればよいと私は考えています。

  • 年間50万円を目標につみたてNISAの非課税期間を有効活用し,経過後はそのまま特定口座(課税口座)で運用し続ける
  • つみたてNISAにて新規拠出ができなくなる2043年以降は,iDeCoと特定口座にて新規投資する

なお,これまでのまとめてきたとおり,計算根拠には保守よりの資料を多く,必要以上に高くなっている可能性もあります。

 

「50万円は無理!」と投げ出さず,たとえば半分の25万円でも資金を作っていくのがよいでしょう。いずれにせよ,将来は自分の準備してきた資金で生きていくしかありません。現在と将来にどれくらい配分するかは,最終的には自分で決める必要があります。

 

 

そのうえで,以下のようなことを組み込める範囲で予測に反映して見直していくのがよいと思います。これらは時が迫るにつれてわかるようになってきます。

  • 退職金の有無
  • 労働期間の長さ
  • 受け取る年金額の見込み
  • 生活水準の高さ
  • 運用利回りの高さ
  • 物価上昇率の高さ
  • 運用益に対する税率

 

たとえば,退職金として1000万円を見込めれば,準備する金額はその分減らせます。労働期間を短くしたいのであれば準備する金額を増やす必要もあります。生活水準についても考慮する余地があるかもしれません。

 

 

運用利回りや物価上昇率といった社会的な要因は制御しにくいところもありますが,個人に関する要素はひとそれぞれです。

余力があるなら前倒しで積み上げておくことも

予測しきれない将来への対策は雲をつかむようなところもありますが,それでも老後は確実にやってきますし,豊かな老後を過ごすには準備が必要です。

20代から老後資金対策をすることは素晴らしいことであり,その手段として有力なつみたてNISAやiDeCoといった制度を使えるようになったことは本当にありがたいことですね。

この記事では現在から退職まで,一定金額を積み立てることを前提に試算しました。しかし,現時点で余裕があるなら前倒しで積み立てておくのも有効な対策です。というのも,人生においては支出がかさむ時期とそうでない時期の波があることと,長く運用できれば運用益が大きくなると考えられるため,必要な元本が小さくなるからです。

 

私も現時点で余裕があるので,iDeCoや特定口座も活用して年間50万円を大きく超える金額を積み立て,余力を作っています。出せるときに出しておけば後が楽です。

 

 

私の考え方を参考にする場合もアレンジの仕方はその人の数だけあります。よりよい方法があればコメントやTwitterで教えてください!

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