2022年6月に、FPで経済エッセイストの井戸美枝さんの新刊『一般論はもういいので、私の老後のお金 「答え」をください! 増補改訂版』(日経BP社)が発売されました。
発行に際して1冊をご贈呈いただき、詳しく読ませていただきました!
年金を中心に、老後のお金の準備の「全体像」を把握したい人にオススメです。「老後資金の準備のしかた」に関する本のなかでは一番わかりやすいと私は思っています。
前版と同じく、全体の半分はイラストでの解説です。図解がわかりやすく、そして「例えば独身・40代・年収350万円の会社員ならこうする」「年収250万円ならこうする」「専業主婦なら」「共働きなら」……などという具体的な例がたくさん入っていて、すらすら読むことができました。
20~40代くらいの働く女性向け(とくに独身女性向け)に書かれていますが、老後資金の準備の必要性は何も女性に限ったことではありません。制度は基本的には同じなので、男性や既婚の方にももちろん役立ちます。
読みやすく、かつメッセージが明確なのも良いです! 彼女や奥さんに投資に興味を持ってもらうためにもいいかも。
増補改訂版が出るということは売れ筋なのでしょう。読んでみると、売れるのも納得の内容です。
増補改訂版で何が変わったのか?
「増補改訂版」の本書はほぼ前版を踏襲した構成です。ここでは変わった点を紹介しておきます。
- 年金額の見込みが最新の情報に更新
- 「公的年金シミュレーター」の紹介
- 老後資金の運用を実践している人のリアルな成績の掲載
- 年金を考えたうえでの「FIRE」の戦略について
- 2022年から変わった制度について
日本年金機構の「ねんきんネット」でも受給できる年金額のシミュレーションができますが、面倒なログインがあったり、入力画面が少し複雑だったりします。それよりも簡単に将来の年金額を試算できるツールとして厚生労働省の「公的年金シミュレーター」が2022年に登場しました。
執筆時点ではまだ試験運用中ですが、使い方がYouTubeで解説されているなど普及に力が入っています。簡単に年金の見込み金額を想定することに使えるツールになりそうです。
この「増補改訂版」で大きくパワーアップしたのは、老後資金を運用している25~47歳の女性の実践例が紹介されているところです。iDeCoやつみたてNISAといった制度を利用して、みんなはどんな商品をどれくらい積み立てているか。
増補改訂版はここが加わってとてもわかりやすくなりました。
「FIRE」については最適解はそれぞれだと思います。本書では、FIREが同じく注目されている米国に比べて、日本の年金制度は手厚いことに注目し、それを活かすような形のセミリタイアを勧めています。どれくらい年金が変わってくるか簡潔に記載されているので、よければ本書を手にとってみてください。
ゆるく働きながらのセミリタイア生活をしている人も結構いるみたいなので、厚生年金に加入できる程度に働くという戦略は大いにありですよね。
ほかにも、2022年からは年金の受給開始年齢の選択幅が60~75歳へ拡大されたり、厚生年金の適用される条件がより広がっていったりと大きな制度改正が進んできています。
とくに受給開始年齢の拡大は全員にかかわることです。受給を1か月遅らせると毎月に受け取れる金額は+0.7%となることは知っておきましょう。つまり、最大である75歳まで受給を遅らせると、65歳で受け取る場合に比べて年金額は+84%になります。
75歳までを自分の資産でしのいで、その後は公的年金に生活費を任せるような作戦もいいですね。
年金にかかる税金もあるため、ここまで遅らせるかどうかは検討が必要ですが、選択肢としては知っておくとよいと思います。
◆他にも本書は魅力的な解説が多いです。全体については前版のレビューも合わせてご覧ください!
年金をどう活用するか、その1冊目に!
老後の資金の準備というと何を始めたらいいのか……と思ったことはありませんか? 私はその準備の一歩めは、将来に受給する年金の目安を知ることだと考えています。
本書には、「いくらの年収で何年働くと、年金額はこれくらい」という早見表が載っています。自分の未来を想像しながら読み進められるので、とても納得して解説を読んでいくことができました。
それを把握したら、次は「年金を多くもらうにはどうするか」「年金以外の私的な準備をどうするか」の2つを考えていくのがよいと思います。年金を基盤に、私的な準備とのあわせ技でより豊かで安心な生活をめざしていく。そういった方針で考えていくことができるオススメの1冊です。
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